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『グレート・ギャツビー』の一件

『グレート・ギャツビー』を10年くらい前に読んだ。
大したことは覚えていない。
主人公がギャツビーと出会う所とか、主人公が父親から薫陶を受ける所(誰かを批判したくなった時は云々てやつ)とかそんな程度。
終わり方でさえ不明瞭だ。
それでもひとつ印象的で覚えているのは、無惨に死んだギャツビーの葬式にいたふくろう眼鏡の男だ。
この男はギャツビーの絢爛豪華に彩られた剥き出しの虚飾性に気付きつつも最後を見届けていた。
最初に登場したのは、ギャツビーの開いた騒がしいパーティの中で図書室を吟味している所だったと思う。
ギャツビーへの印象はあまり良くなく、どこか小馬鹿にしていたが、底の方は知れぬって感じだった。
このふくろう眼鏡の男はギャツビーの罪悪感の象徴なのか、ただの達観した一人の人間なのかもよくわからないけど魅力的ではあった。
ギャツビー、ギャツビーが恋する相手、主人公よりも気になるやつだった。
すぐそばで、もしくは少し離れたところで誰かの人生をじっと見ている奴を俺は好きだ。
『ワイルド・バンチ』のダッチとか『墓石と決闘』のドク・ホリデーとか『バーディ』のアルとか。
『グレート・ギャツビー』では主人公がそうなんだけど、ふくろう眼鏡の男もあてはまる。
距離感も、常にではなく時々なのがいい。
とはいえ、『グレート・ギャツビー』を覚えていない。
いつか読み直したいけど、思っていた内容じゃ無いかもしれないのが怖い。
ふくろう眼鏡の男のことを、随分いい思い出にしちゃったから。

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