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ミュージカル『刀剣乱舞』 千子村正 蜻蛉切 双騎出陣 よろずの華うつす鏡 感想

2023年12月にIHIステージアラウンド東京にて開催された「ミュージカル『刀剣乱舞』 千子村正 蜻蛉切 双騎出陣 よろずの華うつす鏡」を観劇しました。
一オタクの視点からみた感想をまとめさせていただきます。

!公演内容のネタバレ含む感想ですのでご注意ください




2023年観劇総合演出エンタメ力1位のクオリティ

万華鏡のように複雑怪奇な妖刀村正の深淵を覗かせてもらえました。
そして対となる蜻蛉切の肉体美や武の精悍さが、かっこいいを超えて最早美しい。

『千子村正 蜻蛉切 双騎出陣』は千子村正と蜻蛉切という同じ村正刀派の二振りの刀剣による単独公演です。
漫画やゲームの世界観を3次元という舞台の上で再現する2.5次元舞台にとって、またその愛好家にとって、「これが2.5次元の究極系だ」と感じられる納得と喜びほど至高の体験はないように思えます。

世界観を作り出すための舞台セット、照明や振り付けの演出、なによりも出演俳優お2人の歌唱と身のこなしの精度・レベルが高すぎるという感想が真っ先に浮かびました。
すべてが圧巻の総合芸術で、ミットのど真ん中にズドンと刺さるキャラクターや世界観の解釈が素晴らしかったです。会場から出るまでの道すがら、後ろを歩いていたお姉さんが「よすぎた。よすぎた。よすぎた」とブツブツ言うだけのよすぎた人形と化していました……(理解-ワカ-る)
推しキャラでこの完成度のエンタメを見せてもらえるなんて、この二振りのオタクの方々が心から羨ましいです。

千子村正役の太田基裕さんは『マイ・フェア・レディ』等のグランドミュージカルで役を任される実力者で、太田さん出演の公演を現地観劇したことがありますが周りの演劇エリートの方々に押し負けていない存在感や、芝居の実力が印象的だった役者さんです。
また蜻蛉切役のspiさんは天才的な歌の才能を感じる上に、鍛えられた肉体美を持つご自身に向いている路線から外さない役の選び方がこれまた奇跡の融合を引き起こす、センスの高いアーティストさんという印象です。

キャラクターに扮する俳優さんご本人のポテンシャルが高いお2人です。2.5次元というフィールドのパフォーマンスであろうが歌唱のレベル、役の作り込みなどの技術が高い、まさに2.5次元のエリート俳優陣。
さらにクリエイティブディレクションに『ヒプステ』の植木豪さんが加入。ミュージカルパートの演出を太田基裕さん、ライブパート演出をspiさんご自身が担当されているので、刀ミュとして新しい挑戦をしている。キャラクター推しどうこうを抜きにして、純粋な演目として期待値が高かったです。

私の最推し・乱藤四郎 単騎出陣の夢が叶う日を首長く心待ちにしております。まずは顕現からですが……………

友人撮影の匂わせ写真です

言葉で表現できるような地獄は本当の地獄じゃない

『刀剣乱舞』という女性向けコンテンツを独走する人気原作の特徴のひとつには"無個性”があり、各々の本丸という多軸的で余白の多い世界観が、想像力に富んだ女性の感性に直撃して流行している印象です。それぞれの本丸ごとに色が違うよね、という前提があり多様性に富んでいます。

ミュージカル『刀剣乱舞』の外殻は衣装や演出の関係からエンタメ的に派手で華美な印象を抱かせますが、芯に深まっていくほど静かで大人向けの価値観をしており、刀剣男士はあくまで人間ではなく、刀剣としての付喪神なのだという一貫性を感じます。

千子村正の猟奇性や蜻蛉切の優しさとて、ひとことの言葉で表現できるようなものではないのだと感じます。
真の地獄や癒しが何なのか?という禅問答のような価値観を、ミュージカル『刀剣乱舞』に対して私は一方的に感じていて、だからこそ言葉にならない部分を歌にのせ、表情で魅せ伝えるのだと思う。そうした煌びやかなライブやコスチュームの奥に潜む、目には見えない部分を読み取ることができれば奥深い楽しみ方ができる二重構造のコンテンツで、他のメディアミックスと差別化ができている。

どのメディアミックスが刺さるかは各々のファンの好みに過ぎないのだけれど、私たちにぶっ刺さるキャラクターや世界観の解釈をくれる刀ミュが大好きなのだなと、本公演で改めて感じることができました。

総合演出とバランス力の素晴らしさが天晴れで、1部のミュージカル部分のみでも大満足なのに、2部のライブパートでスカッと爽やかに帰れる。副交感神経と交感神経を交互に刺激してくれる構成がやはり素晴らしい。サウナで整う感覚をエンタメで浴びれる機会ってあるんですね。誘ってくれた蜻蛉切推しの友人に大感謝です。

万華鏡のような、別の惑星のような、狭間のお話

ストーリーは情緒的で抽象的なお話という印象を受けました。ゴッホの『星月夜』の絵画のようであり、ホラーゲーム『Neverending Nightmares』の精神の病的な世界観を混ぜたような、繊細な情景の中で二振りが描かれています。

開演前の客入れから舞台セットに源光庵の「悟りの窓」「迷いの窓」を模した丸と四角の窓枠が四季の音色を奏でながら佇んでいました。今作は基盤がそういうお話なんだろうな、という印象を開幕前に抱きましたし、まるで禅を組んでいるような静かな心で観劇の世界に入り込むことができました。

悟りと迷いの窓越しに登壇する蜻蛉切・千子村正の二振り。その居方、歌声、隙のないほどの作り込みと練習の跡が伺えるレベルの高いパフォーマンスのおかげで、開幕直後から没入感どころではない没入体験ができました。
迷いの窓に立っている村正が窓の外から見たら、内から見たら、的な哲学的なことを言いつつ、丸と四角が重なります。万華鏡のような迷宮の不思議な世界に入り込んでいく、という導入。禅問答的であり、人が病む時の思考回路のようですね。

月夜と倒れた塔のセットは『星月夜』のような不安定な精神世界を感じました。
客席が360度回転するステージアラウンドという会場を活かした場面転換も相まって、二振りが本当に異世界に立っているように感じます。セットを組む人のセンスがいいことが伝わってきました。舞台芸術や撮影セットが好きで構造を見るのが好きなのですが、塔は布か透けた不織布的なものを被せて作っており、照明の当てたときの透け方込みで設計されている。不可思議な質感を表現しつつも経費削減・軽量化していて仕事できすぎでお見事でした。

繭のような籠に線が繋がっているセットは神経なのか腫瘍なのか、意味を考えさせられる不思議なモチーフ、造形ですが、二振りが本当に浮いているように錯覚して美しかったです。
私は観劇中は物語の世界にトリップしたいのですが、舞台美術を見た瞬間に構造が紐解けると現実に引き戻されてしまい、没入が解けてしまうきっかけになりかねません。素人の私よりアイディアを発揮していただけるとうれしい。
本公演は舞台装着に趣向が凝らされており、どうやって傾けたり繋げているんだろう?素材は?などとわくわくしてしまう、技術スタッフの方々の優秀さが伺えました。

難しい抽象的なテーマを演劇として昇華しており、精神世界とそれが織りなす色彩と、葛藤の先にたどり着く六道輪廻的な仏教観がエンタメとして落とし込まれている印象を受けました。
こんなにも美しく非現実な世界観を描けるということは、作り手に精神的葛藤がないわけないと感じます。役者さんという生き物は精神の迷いに葛藤しやすい立場ではあると思うので、太田さんはメンタルの揺らぎまでも昇華して芸術にしているのかもしれません。エンタメとしてこれほど素晴らしい姿勢はないのかもしれないです。

外国の卒アルみたい


あくまでも刀剣で付喪神である

回転した先の場面転換で花が咲いて極楽のようになった世界で蜻蛉切が彼岸花を見つけ、「私のようですか」と千子村正が言ったとき、この二振りのオタクさんはうれしいだろうなぁとオタク心が唸りました。
また村正の猟奇的な殺陣シーンとアンサンブルを活かした演出はとても演劇的ですが美しく、千手観音のような村正の刀紋の決めポーズに繋がったときは声が出そうになりました。
赤く照らされた人垣は彼岸花のようであり、美しくもどこか禍々しい妖刀村正にぴったりの表現で、慈悲の千手観音であり、表裏一体の阿修羅のようでもありました。人体を使った迫力と不気味さのある演出で、アンサンブルさんってこうやって活かすんだ……としみじみ感じてしまいました。

蜻蛉切は戦国きってのもののふ・本多忠勝の愛槍で、肉体的精神的に強い。見せ場の殺陣シーンも痺れるほどかっこよかったです。
二振りは村正という刀派の流れは同じなれど千子村正とは対極の存在に思えます。気が合ったり交わることはないのだろうけれど、武芸での強さを極めた蜻蛉切は、複雑な葛藤の渦中にある千子村正に対して『微笑む』のだというひとつの解に心を打たれました。繭の中で微笑み優しい声色で村正に語りかける蜻蛉切は、公演初期から演出が変わっていたらしいです(友人談)。
強さとは、鍛錬を極めれば"優しさ"なのだという、あまりにも強すぎる公式解釈に泣けてきます。気まぐれな猫と忠犬のような相反する関係性がいい味出してます。オタク特有の動物例えをしてしまいました。

蜻蛉切も千子村正もあくまで刀で、生命体ではない。言うなれば黄泉の世界の修羅であり、花が咲き誇る天界の神でもある。神は鬼にも観音様にもなれる。刀剣男士は付喪神で、あくまでも人間ではないという刀ミュのマインドがよく落とし込まれている印象を受けました。

宇宙の端のことを考えて恐ろしくなったときのような、精神的な場面を詩的に切り取った演劇の世界観でした。そういった芸術性を求めて演劇を作る団体は多いのかもしれませんが、灰汁の強いひとりよがりな印象は受けませんでした。アート的に振った演劇にありがちな、派手でチープなだけの死生観が出てこないのが良かったのかもしれません。生きてたら嬉しい、死んだら悲しいよりももっと向こう側の、癒しや地獄は存在するのだと感じます。

ステアラは豊洲から歩けます!


浅井さやかさんの叙情的な歌詞

劇中歌の歌詞が素敵でした。それっぽいキーワードを散らしておけばそれっぽくなる、という軽い味付けになりかねないのに気持ちが冷めなかったから、浅井さやかさんの脚本と歌詞が私は大好きです。
一見白けてしまいそうな厨二ワードを使った歌詞に思えるけれど、浅井さんの詩は頭に入ってくるので不思議です。

仏教で説かれている世の摂理や善や悟りとは?を自分なりに紐解いている人の紡ぐ歌詞だと感じます。それっぽいハリボテの弱さや迷いがない、女性らしい品性はありつつも芯が強い人なのかもしれませんね。私は学者や専門的ではないのですが、浅井さやかさんはいろいろな物事をわかって作詞をされているような気がするのです。

「血の跡に似ている」
多くの命を斬り殺してきた千子村正が歌うこの歌詞がいいなぁと思いました。こちらも窓と同様に、源光庵に残っている伏見城の血天井からインスピレーションを得たものかなと感じました。
私が源光庵に初めて訪れた子供の頃の考えでは、すべてを理解するには至らなかったけれど、人の生死・迷いや悟りが近くにある日本の歴史的スポットがとても不思議でした。当時の人は生きようとしているのか、死のうとしているのかわからないなあと思った気がします。

千子村正と蜻蛉切は戦いの時代を生き抜いた刀剣ですが、死生を司る"妖刀"の異名を持つ村正と、日本指折りのもののふ・本多忠勝が愛用していた蜻蛉切は、まるで源光庵の窓と血天井のように、相反する存在だと感じます。

血天井はグロテスクですが嫌な感じがしないのは不思議だったけれど、当時の武士は「申し訳ない」と覚悟して相手を斬っていたのではないかなと思います。そして寺院に祀られる血天井に見られるように、敵味方関係なく死者を供養する、敬う文化が日本には根づいている。
血天井は徳川家康に仕えた三河武士・鳥居元忠が全滅を覚悟して、伏見城にて少ない手勢で自刃したときの血をそのまま残しているそうです。この展示とて物語とて、人々によって語られ目に触れるたびに供養になるのかもしれません。
徳川忠臣である本多忠勝に仕えた蜻蛉切、妖刀としてたくさんの命を斬ってきた千子村正、そんな相反する二振りを表現するモチーフとして源光寺はぴったりですね。

人斬りの道具であった刀剣という立場、しかし持ち主の想いを吸って付喪神として顕現し肉体を与えられた刀剣男士は複雑な存在です。
彼らの相反する存在に寄り添い、刀剣男士たる葛藤に想いを馳せてしまいます。

宗教的な要素をエンタメ・サブカルチャーに盛り込むという選択は諸刃の剣のように感じます。用法容量を適度に判断する能力が育っていない子に安易に与えるとよろしくない方向に転がる危険も孕んでいるので、慎重にならざるを得ないと思います。
しかし蜻蛉切&村正のファンの皆様は大人の方が多い印象があるので、この二振りの双騎だからこそ盛り込めた大人向けのエッセンスという印象があります。


安全なコンテンポラリー

コンテンポラリーダンスが出てきた瞬間、「コンテンポラリー!」と脳内でツッコミを入れてしまい、太田さん&植木さんやっちまった……!と焦りました。私はコンテンポラリーダンスが大の苦手なのです。
しかしコンテンポラリーが苦手な人にこそ伝えたいと思うほど、冷めないコンテンポラリーだったのがびっくりうれしく、大感激でした!2.5次元でコンテンポラリー演出に心が冷めなかった体験は初めてです。

過去にプロバレエ団のコンテンポラリーダンス(バレエ団の演目はおしゃべりがないのでほぼボディランゲージのコンテンポラリー)をみたときの納得感に近かったです。
技術が高く、主演本体がオーラ的なエネルギーで負けていない場合のみ、コンテンポラリーを許容できて有効的な演出にできるのかと感涙でした。

振付を担当された福澤侑さんの技術がかなり効いているように思えました。バレエの時も、ミュージカルの時も、一流のプロのお仕事をみて初めて「みんなこれ目指して事故ってたのか、私がみていたのは一流ではなかったのかもしれない」と感じる体験は多々ありました。
総じて「みんなこういうの目指した結果事故ってるだけ」ということでもあり、逆にこの双騎で仕上がった演目が自分的な理想形である証明だと感じました。

今後も基本スタンスとして2.5はノーコンテンポラリーで頼みますですが、演出の選択肢という可能性を潰すことなく、技術向上と飽くなき挑戦を続けていくべきなのかもしれないと感じることができました。

時間遡行軍にキャッてなることあるんだ

今回は時間遡行軍が大変すばらしかったです。
客降りで時間遡行軍が客席を脅してくれるのですが、ユニバーサルスタジオジャパンのホラーナイトを連想させる愉快さで、客席の各所で悲鳴と黄色い声が上がっていて不思議な空間でおもしろかったです。近くに降りてきてくれたあとに登壇して時間遡行軍の曲でパフォーマンスがあるので、客席の盛り上がりもひとしおでした。

詳細を調べていないため確証がないのですが、時間遡行軍の中身はもしかして植木さんのところのダンサーさんでしたか?ガワが布になっていたのは、動きやすく衣装を作り替えていたからでしょうか。
見事な体術と照明のセンスのおかげで、時間遡行軍が敵らしく恐ろしく見えました。ガワに造形としての精巧さがなくとも、演じる人の表現力と証明演出の技術でこんなに恐ろしさを作り出せるんですね。

肉体的な動きの巧みさで、恐ろしさや禍々しさがよく表現されていました。私は殺陣に知見がないのでおかしいことを言っていたら申し訳ないのですが、正確に斬ることを再現するというよりも魅せる演舞的な殺陣になっていて、殺陣の素人からするとかなり迫力を感じました。

これまでの刀ミュでは衣装替え・時間繋ぎのようなポジションになっていた時間遡行軍の登場時間が、メインの一つになるって全員幸せになれるし素晴らしいことですよね。
時間遡行軍の使い方が素晴らしかったですし、時間遡行軍の恐ろしさを感じたおかげで、"刀剣男士がなぜ戦うか”の説得力を感じました。

ダンサーさんのみで構成された合間の時間も、ダンスのタイプや衣装が綺麗目に統一されている印象でした。素人は難しいダンスをされても自我が作品の世界観にそぐわず気持ちが冷めてしまうリスクがあるのですが、本公演はアンサンブルの方々までもがコンテンツの一部というまとまりを感じて、素直に盛り上がることができました。

2部ライブパート感想(盛ってる)

2部パートが始まったときのぶち上がりが凄まじかったです。ディレクションを担当された植木豪さんはライブでの切り替わりや流れを持っていくのがお上手な演出家さんという印象が強いので、刀ミュのお客様もここまでブチ沸いてしまうのか……!と、ヒプステが大好きだった私は感涙でした。
植木豪さんのお力がとても大きいですね。刀ミュチームのヘアメイク技術、衣装、音楽と歌詞がライブの演出と掛け合わさり、演者さんも歌うまの方々で、とても素敵なライブパートで楽しかったです!

蜻蛉切さんが太鼓のソロで筋肉を見せるだけでものすごい歓声が上がっていて最高ディナーショーパーティーでした。漢!という感じでかっこよかったです。友人が興奮しているのかうれしすぎるのか、ずっと男梅みたいな顔になっていました。

男梅みたいな顔になっていた蜻蛉切推しの友人と夜景


蜻蛉切太鼓タイムが終わって差した方角から客降りで千子村正が出てくる演出の流れ、神がかりすぎて客席が爆上がりして、ステアラがぐるぐる回って割れてしまいました。
「国民的大スター?!」「松平健様?!」レベルの客席の大熱狂でかなりブチ上がり、私とてニワトリの鳴き声のような声を上げるだけになってしまいました。

TPOと偶然の奇跡により、千子村正と衣装被り(サテンのピンクフリルシャツ)していた私が大リアクションしたため、ルート外だったろうに後方通路まで寄ってくれて胸突き出してサンバみたいな動きしてくれたのが、千子村正っぽくてさすがのプロ仕事ぶりに感動でした。通路席にこだわりはなかったけれど本公演は通路席でお得でした。我ながら客降り運がかなりある方なので今回も大満足です、感謝………

お2人とも歌唱力が素敵で、上手い方同士のハモリは痺れますね。最高!友人は良すぎて4枚追いチケしたようでした。納得のエンタメ体験でしたが、16,000円×4公演を瞬時に出させるエンタメの底力と魔性を感じました。

千子村正と衣装被りした服

感想まとめ

正直なところ、具体的な知識を集めれば理解できる的なストーリーではないため、内容を咀嚼するのは簡単ではないと感じます。人生かけて蓄積してきた価値観、死生観を観客側が用いて紐解いてやっと楽しいと昇華される物語は、数学の赤チャート応用を目の前にいきなりバンって置かれるみたいな難解さは感じたけれど、私はこのような演劇や芸術に向き合って自己研磨・挑戦していきたいなと思いました。いろいろな指標が世の中にはあるけれど、チームで座組でみんなで良質なエンターテイメント、良質な価値観を作り上げている鮮やかさが美しい。
そして私が演者さんや演劇に関わる人材だったら、こういう演劇に出たい。出れる人材とレベルでありたいと思うだろうなと強く感じました。

公演に男性客が多く、千子村正の妖艶さと蜻蛉切の漢っぷりは男性にもハマる魅力的な要素だなと納得がありました。
また旦那さんとご一緒にいらしているご夫婦も多く、言い方が悪いですが、これならみせれるもんなぁと思いました。旦那さんを「うちの奥さんこんなチープなもの安くないお金出してみてるの?」と引かせない、一般的なグランドミュージカルのようなノリで観劇に来れるような高いクオリティだからこそ実現する行動だなと感じました。

噛めば噛むほど味わい深い、千子村正 蜻蛉切の二振り。双騎出陣によりその魅力を思う存分浴びて、深淵を覗き、楽しむことができる、素敵な公演でした。


蜻蛉切 千子村正 双騎出陣 公演概要

【開催日】
2023年11月26日〜12月31日
【会場】
IHI ステージアラウンド東京


若干枚数当日引換券が購入できるようです。


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