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ブロックチェーンで世界を簡単に。

本日付で、新規ビジネス・ブロックチェーン事業に集中するためbitFlyer Holdingsの取締役を退任し、新設子会社株式会社bitFlyer Blockchainの代表取締役に就任いたしました。Satoshiが発明したビットコインに魅了され、日本の仮想通貨(暗号資産)業界の黎明期から規制の議論や業界の発展について皆様と共に歩んで来られたことを本当に嬉しく思います。そして、今後はブロックチェーン技術を応用した新たな市場を創出できるよう、関係各所の皆さまのご指導を頂きながら努力していきたいと考えております。

退任に際し先ずは、bitFlyerをご利用頂いている全てのお客様に心より感謝を申し上げます。レバレッジ取引を含めた世界シェアNo.1の仮想通貨取引所になれたのも一重にお客様のお陰です。bitFlyerは日本、アメリカ、ヨーロッパでのライセンスを取得している世界で唯一の取引所です。今後はアメリカとヨーロッパのお客様にもbitFlyerを利用してもらえるように期待しています。

そして、この場を借りて全ての従業員に感謝を申し上げたいと思います。お客様より預かった仮想通貨を保護する堅牢なセキュリティーを維持することは、コールドウォレットを導入するだけで達成できるものではありません。また今まで実現できなかった24時間365日クラウド上で動き続ける取引所を運営することは、並々ならぬ従業員の努力の積み重ねで達成されています。突如宣言されるハードフォーク対応、絶対にミスの許されない本人確認、深夜早朝での緊急サポート、ガバナンス態勢、AML/CFTの高度化に伴う膨大な量のドキュメント。会計基準が無い中で監査法人と一緒に四苦八苦してきた経理・財務。数々の日本初のサービス展開をしてきた営業、マーケティング。守りの要であるリスク・コンプライアンス、内部監査、内部統制、IT統制の二線・三線部門。そして数々の新規ビジネスを実装してきた優秀なエンジニア達の絶え間ない好奇心と閃き。当初は日本の小さな一企業に過ぎなかった、当社に就職し、世界に羽ばたけるようライセンスを取得してくれた海外拠点長と社員。創業間もなく、何もない会社に華やかなキャリアを捨てて参画してくれた小亀さんと金光さんの並外れた情熱なく今のbitFlyerは存在していません。ゴールドマン・サックスで類稀なる才能を持ったエンジニアである小宮山さんに出会えたことが運命の始まりです。そしてbitFlyerの従業員の日々の努力は、仮想通貨を必要とする多くのお客様の支持という結果を伴って評価されていると信じています。

私は2010年にビットコインとブロックチェーンに出会って以来、この技術で世界を大きく革新させることができるという信念は今でも変わっておりません。新しい通貨と新しいデータベースが同時に生まれたのは偶然ではありません。90年代のインターネットの普及により、あらゆる情報が超低コストで複製そして発信・取得できるようになりました。私は初期のブラウザであるNCSA Mosaicを通じて、それまでほぼ不可能だった個人が容易に世界に情報発信できる世界を垣間見た時の感動を今でも忘れません。

一方で通貨は決して複製できてはならない。デジタルデータ化するにはインターネットと相性が非常に悪いオブジェクトです。そんな中、Immutabilityと呼ばれる特徴でデータの複製が不可能なデータベースであるブロックチェーンにより、データが単一であることが絶対に保障されます。それは特定の企業が作った閉鎖的なシステムでなく、パブリックで不特定多数が参加するシステム上で複製不可能な通貨が2009年に実際に運用開始されたのです。Decentralized (非中央集権的)なシステムとも呼ばれます。

複製できることに価値があると考えられていたインターネット上に、絶対にオブジェクトが複製できない技術が登場しました。この概念を用いて社会に革新的な変革をもたらします。ブロックチェーン技術を応用したサービスは、今後インターネットに出会った時と同じ感動を金融のみならず多くの分野で人々に与えるでしょう。

さて、CTOの小宮山さんと二人で2014年1月に創業したbitFlyerは、お陰様で従業員数約260名と5年で大きく成長しました。創業当時はMt. Gox社が世界シェアの約80%独占しており、まずはMt. Gox社を超える安全で便利な仮想通貨取引所を作りたいと、小宮山さんと私は四ッ谷のパン屋でプログラムを書く毎日でした。ところが当時は国内に流通しているビットコインが非常に少なく、顧客同士の注文をマッチングするだけの「取引所」では流動性を担保できないと考え、それまでのプログラムを破棄し自社がリスクを取りながら顧客の相方となるサービスに変更し、「販売所」と名付けました。その後はとにかく外国からビットコインを仕入れて国内に流入させることをしました。

その後、人々にブロックチェーンを理解してもらうために、内部の構造を可視化する必要があると考え chainFlyerを作りました。それまで真っ黒なコンソールに表示されていた無味乾燥な数字が、より肌感覚をもってこれが仮想通貨なんだと体感して頂けたかと思います。そして決済やプロ向け取引所のbitFlyer Lightningをリリースしました。創業当初お客様が5人しかいらっしゃらなかった勉強会の時には、日本初となる仮想通貨のテレビCMを行うことが出来るとは想像できませんでした。

私はこれまで、bitFlyerのほぼ全てのサービスとマーケティングのプロデュースに関って来ました。そして、多くの従業員の力によってそれが具現化されるのを見守ってきました。バックエンドのシステムも一から作り、今では巨大な管理システムとなっています。経営者なら脳みそから血が出るくらい考えろと言われ、何かを生み出さないといけないプレッシャーの中、朝起きてから夜寝るまで、時には夢の中でもずっと考え続けてきました。結果はネットやユーザーサポートですぐに評価されます。厳しい批判を受け続けても、常にお客様のために何ができるのかを考えなければならず、意思決定の恐怖から逃げる事はできません。

bitFlyer以外でも業界での活動を行ってきました。

ブートストラップとしての仕組みが完成したら、次に業界としての自主規制を作るべきだと考え、日本価値記録事業者団体(現日本ブロックチェーン協会)を有志と設立し、代表理事として活動しました。悪貨は良貨を駆逐するとならないように、また共有地の悲劇とならないように、当時はまだ一部のアーリーアダプターと呼ばれるお客様や業界関係者にも規制の必要性を理解してもらえるように説得を続けました。

2017年6月までは仮想通貨の購入に消費税が課税されており、多くの関係者の方に非課税であることの重要性をご説明しました。消費税法施行令の改正により、国際的な利便性と競争優位性を確保することができました。

その後は、認定自主規制団体である日本仮想通貨交換業協会(JVCEA)の理事として、多くの方と相当な時間を議論し自主規制制定に尽力いたしました。本年度は改めて資金決済法も改正される予定で、さらなる顧客保護とICOやSTOといった新しい資金調達手段が社会実装されることが期待されています。キャピタルゲインに関する税法改正も多くのお客様が望んでいるかと思います。日本が世界に先駆けてルール整備を行った結果、仮想通貨業界は世界でリーダーシップを発揮できる分野だと信じています。

昨年、業務改善命令を受け、非常に大きな責任を感じております。多くの関係者の皆さまにご迷惑をおかけしたことを、改めて深くお詫び致します。bitFlyerは社会の公器である金融機関として生まれ変わる必要があります。今後取引所は顧客資産保護を最重要視したガバナンスの高度化、AML/CFT及びFATF対応などの課題について平子さんや三根さんのリーダーシップの元、従業員一丸となり努力し、またお客様に信頼され喜んで頂けるサポート体制、さらなるセキュリティー強化、安全で安定した取引所運用を行っていくことを大いに期待しています。

最後にbitFlyerグループとして、創業から5期で売上140億円、営業利益53億円及び利益剰余金118億円という成果を残せたことは、私のビジョンを信じて出資してくれた株主の皆さまにも一定程度の評価を頂け大変嬉しく思います。今後は信頼される金融機関としてのガバナンスを実現しなければなりません。一方でベンチャースピリッツをなくしたら次世代の金融機関を目指すビットフライヤーは終わってしまいます。キャリアを捨てて、安定を捨ててきてくれた社員と共に、bitFlyerのミッションを実現すべく邁進いたします。
私自身は、イノベーションで明るい日本の未来を作りたいという思いに変わりはありません。ブロックチェーンは社会の何を変化させ、どの課題を解決するのか。きっと答えはサービスを世の中に出すことで証明するしか方法はないでしょう。新体制の下、グループ経営陣・従業員一丸となり、ミッションである「ブロックチェーンで世界を簡単に。」を実現するたにbitFlyerはピッチを上げて行きます。重ね重ね、皆さまの日々のご支援に心から感謝を申し上げます。

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