たなゆう

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【書評】「信長の原理」

この小説は、織田信長の生涯を「パレートの法則」を導入してシンプルに分析する。一つの切り口で歴史を抉っているから、散漫な事実の羅列にはなっていない。 パレートの法則とは2:6:2に集団の構成を分類する法則。2割は常に懸命に働く精鋭、6割はその時その時の情勢に流される日和見。残りの2割はいつでも怠けるダメな奴ら。これは働きアリの法則とも呼ばれるが、まさにこの物語の信長はアリの行列の中にこの法則を見出す。 観察を通して、法則を見出す。こうした行動を繰り返し実践する中で、信長は神

    • M-1漫才論争に想う

      M-1グランプリ2020でのマヂカルラブリーのネタに批判が出ているらしい。いわく、アレは漫才ではないと。。 決勝最終の場で、ボケの野田クリスタルは大振りの動きで舞台上を暴れまくり、ほぼ、言葉を発さないまま、約3分のネタは終了。たしかに、自分もおもわず、おいおい、マジかよ!と爆笑しながら、ツッコんでいた。しかし、まさか、大会終了後のTwitterやヤフコメで冒頭の批判が百出するとは思いもしなかった。 野暮を承知で笑いを語らせてもらうと、自分は笑いとは常識からズレた狂気が生み

      • 花火

        「加藤、さっきお願いしたコピーどうなった?」  部長の春日の声に史帆は我に返った。 「え?何部でしたっけ?」 「2部だよ!」 「すぐに用意します!」  小走りでコピー機の前に行くと、係長の若林から声をかけられた。 「これ、刷っといたから。部長のとこ持ってけ。」  差し出した手には綺麗に折られたコピーが2部重ねられていた。 「すみません…」 「あんまり、ぼっとすんなよ。疲れてるなら、明日、年休取れ、会議は俺が代わりに出といてやるから。」そういって、自席に戻る若林の背中に史帆は呟

        • 誹謗中傷する人の胸の内

          私はSNSに書き込むことは殆どない。だが、SNSはほぼ、毎日チェックしている。何がトレンドになっていて、それに対して「世間」がどう、反応しているのかを知りたくて…。 自分の期待通りのコメントを見ると安心し、心外なコメントを見ると腹を立てたりする。客観的に見て、こんな自分は滑稽で愚かだと思う。でも、やめられない。 自分の考えてることが世間一般の意見と一致していることを確認して安心したいのだろう。SNSという「窓」を通して「世界」を確認して自分がそこに所属していることを確認し

        【書評】「信長の原理」

          リアルパイレーツオブカリビアン〜スペイン帝国の落日〜

          1. はじめに 「海賊」という言葉を聞いたことがない人はいないだろう。海賊はこれまで映画、漫画、小説などで繰り返し描かれてきた。そうした典型的な海賊のイメージはある時代、ある海域で活躍した海賊たちをベースにしている。そう、カリブの海賊である。船で海を駆け回り、金銀財宝を奪い取る彼らの姿は数々の物語から容易に想起できる。しかし、以下の質問に答えることが出来る人は少ないのではないのだろうか。彼らはどこから来て、誰から、何を奪ったのか? 私は個別の海賊たちの個別のエピソードに興味

          リアルパイレーツオブカリビアン〜スペイン帝国の落日〜