恐ろしいアプリの誕生

恐ろしいアプリがリリースされる。

「あの子可愛い!」なんて思った時、彼女が誰か知りたくなるのが、人間の性だ。
名前や住んでいる場所、何をしている人なのか。なんとなく想像してみるものの、殆どは知るにまで至らない。

ナンパでも成功しない限り、そんな情報を得ることはできないのだ。

軽い一目惚れに近い感覚は、帰りの電車に乗る頃にはすっかり忘れて、結局彼女と「出会う」ことはない。すれ違う不特定多数の1人として、日常に埋もれていく。

そう、そんな時代もあった。しかしそれは、過去の話だ。

今は少しずつ「出会いの可能性」を広げる技術が進歩し、近所にいる「あの子」を掲示板から探せてしまう出会い系や、すれ違いざまに気に入ったもの同士がマッチングするアプリ(マドジャスさんの記事へ)なんてものも開発された。

もっと言ってしまえば、出会った場所から、彼女を特定しようとすれば、できてしまう可能性だってある。

私の友人は、医療施設に勤めている。
本名のフルネームを胸元にぶらさげて勤務先で働いているというだけで、SNSで発見される確率は、うんとあがる。

彼は本名ではSNSをやっていなかったが、患者さんに度々特定されると嘆き、SNSを辞めた。

聞けば、同じ病院に勤めている、本名でSNSを使っている友人の「友達リスト」から、自分の元にアクセスされてしまうらしい。

バレた原因は、いつも患者さんに話していた「ウサギ」をアイコンにしていたこと、勤務先の勉強会の様子をシェアしていたことだった。

「プライベートまで知られたくなかったのに」
彼はそう言って、困った顔で笑った。

「SNS」は最早、私達の生活の一部になりつつある。昔は芸能人でもない限り、各自がホームページやブログを公開するなんてことは無かったが、今は誰もが自分の「ページ」を持ち、共有している。

全国ネットに晒されているとはいえ、それはあくまでも「プライベート空間」であり、意図しない人に知られたくはないというのが、本音だ。

だからその対策として、「本名」では登録しない人がいたり、「勤務先」や「学歴」を示さない人がいる。

顔写真は登録しているものの、彼らに直接聞かない限り、その「ページ」に、辿り着かれることはない。それが、彼らの「プライベート空間」の、守り方だった。

しかしついに、その「守備」を突破しようとするアプリが、近々リリースされる。

facejam
3/21にリリースされるこのアプリは、街で撮った写真から、「撮られた人」のFacebookを探し当ててしまうというものだ。関連ページ 英文

facejamホームページより

その精度はなんと70%
実験では、10秒で特定に成功するというデータが出ているらしい。

恐らく「お互いが同意の上」を前提しての機能とはいえ、この機能を使えば、Facebookのトップ画像に顔写真を登録している限り、本名や勤務先を教えなくても、アクセスに繋がる「ワード」を伝えていなくても、顔だけで「プライベート空間」に辿り着かれてしまうということになる。

どうやら私達の時代は「出会うかどうかを選べない、匿名が存在しない世界」に突入しつつあるらしい。

アドレスを聞かれても、断ればよかった。Facebookを聞かれても、紐付けさえしていなければ「やっていないです」で通用した。

でも、日常生活を送るうえで、顔だけは隠せない。

このような機能が一般化されていき、精度が上がっていったとしたら……私たちは常に顔面に「SNSのURL」を貼り付けて歩くことになる。

「SNSで顔を出さなければ良いじゃない」
確かにご最もな意見だが、クリエイターや起業家、その他著名人たちには、そうもいかない事情を抱えたケースが、多々ある。「SNSで顔を出さなければいけない」という人は、この時代、確かに存在するのだ。

それだけではない。この機能の精度があがっていき、擬似的なアプリの開発競争が始まったら……。

「顔」と「Facebook」を結びつけることができるのだ。誰かがタグ付けした写真や、違う誰かの投稿に映り込んでいる貴方の写真。

そういった、ネット上のありとあらゆる「貴方」が、見つけ出されてしまうことになりかねない。この機能は、「普段と別の顔」を持つ人には、死活問題だ。

例えば、家族に内緒で行っている水商売。
誰にもひた隠しにしてきた「AV出演歴」

写真に写った顔で、それらのページにヒットするような時代が来てしまったら……。彼女達の匿名性は、どう守られるのだろう。

もしもストーカー気質を持つ誰かや、泥棒を目論む悪人がこのアプリをダウンロードしたら……。

名前や住んでいる場所、勤務先の特定は容易いだろうし、「金を持っているか」の判断だってできてしまうかもしれない。

…様々な想像を膨らませ、恐ろしく思うのは、私だけではないはずだ。


ふと、昔作った「前略プロフィール」を見つけ出され、小っ恥ずかしい思いをしたことを思い出す。

貴方はネット上にある「全ての貴方」を、完璧に把握し、管理できているだろうか?

「あの子のことが知りたい」という思いだけで、探し当ててしまうことができる社会。

現実からネットのプライベート空間へ容易くアクセスでき「匿名性」が失われていく社会の中で、自分自身をどう守るのか、考えなければいけない時が来たようだ。


yuzuka

#コラム #ネット #匿名 #SNS #社会 #facejam

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yuzuka

书签

コメント4件

こわいです(・。・;
きしみさん☆hoax😜
最後の画像を載せているのは意図的です。読んだ上でなにを感じるか、最後の英語まで読んでいただけると嬉しいです
最後の画像で、少しほっとしましたが、
そんな未来がやって来ない保証はないですよね。
こわー。
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