美食エッセー少2

第2回 黄昏のパリ。

食というのは、美味しさではなく、「経験」である、と思う。

なのに皆、舌の上の「美味しさ」を求めすぎではないだろうか?

舌の上の美味しさは、記憶として残りにくく、再現しにくい。毎日食べていたものでさえ、例えば母親が作る味噌汁であったり、学生食堂のカレーであっても、味としてその記憶は漠然としていて、脳裏の中で明確には描くことはできず、再び口にすれば、

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