美食エッセー少2

第17回 蛇の生き血を飲んだ北京の夜

結婚をしたくてたまらない人がいる。結婚ができなくて焦っている人がいる。結婚相手がいないから紹介サイトに高い金を払って登録している人がいる。結婚に夢を抱いている人がいる。結婚することに価値を置いている人がいる。

「結婚とはそういうものなのだろうか?」

と、わたしが思うのだけれど、それはしてみなければわからないものだから、結婚していない人たちには通じない思いなのかもしれない。

しかし、結婚しても結婚というものがどういうことか、どうあるべきかなどやっぱりわからなくて、おそらくそれは正解も不正解もないものに違いなく、意味を求めるものでもなく、ただ様々な出来事が日々、去来する中でゴールもなくひたすら泳ぎ続けるようなものでないか。

わたしたちは蛇の生き血を飲んだ。それは初めて出会って1時間も経っていなかった。お互い名前も知らない。それなのに蛇の生き血を飲んだ。中国で深い関係、絆以上の人間関係を交わすときにするやり方で、腕と腕を知恵の輪のように固く組み、その盃を同時に飲み干すのである。

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