僕の音楽のルーツの話

Written by 山下裕矢

音楽と積極的に関わるようになったのは、小学6年の頃に父親が若いころにやっていたというフォークギター(あえてそう呼ぶ)を引っ張り出してきて弾き語りを始めたのが最初で、その後も20年以上も、それがルーツと思いこんでいた。

が、35を過ぎて、もっと幼い頃に出会っていたことをふと思い出した。それは、小さい頃に地元の秋祭りで奉納踊りに合わせて曽祖父が唄っていたものだった。

祭りには物心つくかつかないかの頃から高校生くらいまで参加していたので、今考えると約10年という意外に短い間だったし、その間でも曽祖父が亡くなってからの方が長いくらいだが、それでも僕の心に強烈に残っている。

それを思い出させてくれたのは、数年前に父親から依頼されたカセットテープ音源のデータ化の作業だった。渡されたのは120分テープで、秋祭りの唄以外にも色々入っているとのこと。

持ち帰って聞いてみると、ガチャっとボタンを押す音に挟まれて、聞いたことのあるような無いような民謡がいくつも入っていた。合い間にはガヤガヤと話し声や拍手もきこえる。どうやら、宴席にレコーダーを持ち込んだか、曽祖父の唄を録るために宴会を開いたようだ。きっと後者だと思う。

カセットデッキをPCにつないで、再生しながら録音していく間、涙が止まらなかった。周りのにぎやかさから、慕われていたのが分かる。録音時で80歳前後だったはずだが、低くてスッと通る声が心地よくて懐かしい。薪割りしながら唄っていたことなど、一緒に過ごした日々の事まで思い出される。

この調子で120分も堪えれるかな?と思ったら、しばらくして話し声と皿やコップがぶつかる音しかしなくなった。唄は片面30分ずつくらいしか入ってなかった。

もったいない!もっと録れるなら録っておいて欲しかったのに!と思ったが、宴会が盛り上がって、録音そっちのけになったに違いない。

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