夏休みの宿題紛失事件

気付けば8月も31日で、学生さんは夏休みが終わるのでしょう。
もう大人になった私に1ヶ月ものまとまった夏休みなんてものがあることもないけれど、今頃徹夜でやり残した宿題に励む学生諸君のことを思うと、私の夏休みのことも思い出してしまう。

それは私が純真無垢な小学3年生の頃、1年、2年と小学校へ入学してから毎年宿題にぎりぎりまで手をつけないせいで夏休み最終週に泣きをみていた私は、夏休みの宿題を夏休みの最初に終わらせてしまうことを目論んだ。
夏休み開始が7月21日。終業式から帰った私はもらったばかりの宿題を広げ、すごい勢いで取り組んだ。
全ては宿題に囚われない素晴らしいサマーバケーションのため!登校日に「宿題どれくらいやった?」と聞かれたって「私?もう終わったけど?」と鼻高々なのは間違いない。宿題のことなんて考えずにプールも行き放題!おばあちゃん家で遊び放題!考えれば考えるほど笑いが止まらない!私は狂ったように宿題に勤しみ、父母にも「ゆりが宿題してる!偉い!」と褒められた。

余談だが、私はもう既にこの頃から宿題を家ではやらないスタイルを確立していたため、家で宿題を、しかも夏休みの宿題を夏休み初日から始めるなんて天変地異も同然だったのだ。
基本的に宿題は朝登校してから先生が教室にやってくるまでの間に自力でやるか、やれない場合は友人の答案をアレンジして書き写していた。アレンジして書き写すのがミソである。丸写しするとバレる、という可能性を考慮する小賢しい子供であった。

おかげで翌22日には宿題を終わらせた。
大掛かりな自由研究や、天気等も記述せねばならない一言日記はさすがに終わらせられないながらも、算数の計算問題が永遠のように続くプリント綴りや、配布の際に必ず「お前なんか友達じゃねえ!」とクラス内で唱えられる『夏休みの友』という冊子形式の宿題を全て終わらせた。
自由研究はまあお盆開けにでも適当なことをやれば良いし、一言日記はおばあちゃん家や旅行などに行ったことなどの大イベント部分だけ先に書き出し、後は適当にプールに行ったやら、いつもより暑かったなど、当たり障りのないことで埋めればなんとかなる。
笑いが止まらない。ざまあみろ夏休みめ!私は夏休みに勝った。そして夏休みを謳歌するのだ。

そして私はその通り夏休みを謳歌した。
この夏休み期間、お中元のそうめんをあまりにも食べさせられるために私は未だにそうめんがあまり好きでは無い。同様の理由で冷やし中華もあまり好きでは無い。
さすがにそうめんばかりでは申し訳無いと思った母が、そうめんと冷やし中華の頻出度を半々にしたため、結果どちらにも飽きるという現象である。

そして夏休みも終わりかけの8月25日を過ぎた頃、事件は起きた。
宿題がない。忌々しい夏休みの友はあるが、プリント綴りが無い。
どこを探しても無い。あんなに一生懸命やったプリント綴りが無い。

私は絶望した。

まだ11歳の純真無垢な私はショッキングすぎたその出来事に泣くことすらできず、弱々しく母に相談した。
「お友達にプリント綴り借りてコピーさせてもらおう!まだ一週間あるから大丈夫!」
さすが20歳で短大の卒業式の翌日に結婚式を挙げ、20代のうちに4人も子供を産んだ我が母である。そして40を越えてすらも、父が単身赴任中にはラブレターをしたためる我が母である。そのラブレターを発見してしまった当時20歳の私はなんとも言え無い、みなければ良かった…という気持ちになったものである。

話を戻そう。
友人からプリント綴りを借り、コピーしたものを手に入れた私は、「宿題をきちんと管理し無いお前が悪い」と父から至極真っ当なお叱りを受けながら修正液を借りた。コピーしたプリント綴りのうち、友人の書き込み部分だけを修正液で消し、修正液が乾いたところから問題を解き始めるという、今考えても地獄の作業であった。
もちろん全ては一度解いた問題であるが、そんなことは1ヶ月も前の話である。ましてやこれを最初解いた時の私は夏休みを謳歌するためのモチベーションマックス状態だったのだ。全力でやり切った問題をもう一度解かなければなら無い今の抜け殻の私には鉛筆を持つ事がやっとである。
しかしそれでもやるしかないのだ。
夏休みの終わりは刻一刻と迫る。
そこで私は胸に刻んだのだ。

夏休みの宿題を最初のうちに終わらせるなんてもうやめよう。

それ以来私は夏休みの宿題は最後の1週間にまとめてする。そうやって学生時代を生き抜いた。
するとどうだろう、社会人になった今、仕事も納期がぎりぎりにならなければ始められ無い、どちらかといえばクズ体質の人間が出来上がった。
しかしこの夏休みの宿題紛失事件は、幼い私の心に大きなトラウマとして、そして生き方に大きな爪痕として残っている。

おかげで今週もまた納期が迫っているにも関わらず、少しも仕事に手をつけていない。
余裕ある納品を目標にはしているが、いつかそれが叶うことはあるのだろうか。
今のところその予定は無さそうである。

#妄想 #日記 #夏休み

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坂本ゆり

面白おかしく生きていきたいので、真剣に考えます。
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