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VRChatでクラブワールドを運営してみた話

これは何ですか?

 2021年1月からVRChatを始めた人間が同年10月から2022年1月まで運営したDJがリアルタイムで音楽を流せるクラブワールド「カルチャーセンター」及び同ワールドで行われていたテクノ・ハウスイベント「体感深度」についての振り返り記事です。

やってみてどうでした?

 良かった。自分の狙った動線通りに人が固まっているのを見るシミュレーターゲーム的楽しさもありましたが、よくクラブに行ってた人達から「こういう小箱ある!この雰囲気!」っていう感想いただくのがとても嬉しかったです。
 たくさんのDJさんたちがプレイしてくれましたが、皆さんワールドの雰囲気をとらえつつそれぞれ違ったスタイルを見せてくれたのも運営してて飽きなかったですね。本当に楽しかったです。
 なんか最大で同時に100人ぐらい来たこともあったみたいです。すごいね。

外観。ポスターはニューロマンサー日本語版の旧版表紙のパロディだ
会場内部。暗いぜ!

ワールドのコンセプトは?

 まず第一に「他の人がまだやってないことをやる」が念頭にありました。ここはこれまでのインターネット生活から培ったものです。違うことをやるとウケる。そこからワールドのコンセプトを……
 ①Quest環境対応
 ②最小限の演出の狭い箱
 ③テクノ・ハウスを集中して聴けるような雰囲気

の3つに絞りました。

 ①Quest環境対応。そもそも自分がQuest環境からVRChatを始めたからです。始めた当初Quest環境コミュニティにはとてもよくしてもらったので少しでもそちらへ還元できるようにと思い、これだけは外せないポイントでした。

 ②最小限の演出の狭い箱。クラブワールドへ行くとだいたいどの会場でもageHaのような広い会場に派手なレーザーがバンバン飛んでスモークもガンガン炊かれるような大箱仕様で明るいライティングがほとんどでした。
 自分が実際にクラブへ行って遊ぶ時はほとんど目を瞑って音楽を聴きながらスピーカーの前で踊っておりほぼほぼそういった演出に注目していなかったこともあり、また「他の人がまだやってないことをやる」という大前提と①Quest環境対応との技術的制限からこれは決定されました。

 ③テクノ・ハウスを集中して聴けるような雰囲気。自分がPCVRへ移行した当初驚いたのはDJイベントでも日本ではハードスタイル・ハードコア中心のイベントがほとんどだったということです! 経緯はよくわかりませんがとにかくそういう状況でした。恒常的にテクノやハウスのイベントをやっているのはSoundBar Méllonぐらいではなかったでしょうか。
 そもそも自分が正統派よりもはみ出し気味なテクノが好きなこともあり、そういったエクスペリメンタルなテクノから真っ当なハウスまでの広い受け皿になるようなワールドを目指しました。

そうして出来たのがこちらの設計図です

 このことから、実際にもよく遊びに行っていた渋谷に実在するKoaraをひな形にしてワールドの制作を始めたわけです。
 結果うまく行きました! 特に何も言わなくてもみなさん上記の設計図通りに配置されていた……。

あのネーミングは?

 もともとSF、特にニューウェーブSFとサイバーパンクが好きな人間だったので、せっかくワールドを作ってイベントをやるならそういう雰囲気もちょっと匂わせられればいいなとは思っていました。
 それらに独特な特徴といえば「多国籍/無国籍感」「奇妙な雰囲気の日本語」などがあります。
 何かぴったり来るものがないか考えていたところ、ある雑談イベントで出た「カルチャーセンター」という言葉(主に書道や手芸などの習い事の教室に使われる会場のための名称)、そして当時ちょっと地震が多かったこと、またディープなテクノやハウスが好きだったため、そこからもじって「体感深度」が思いついたため、それぞれワールド名とイベント名にしたわけです。
 その辺りSF好きな人達が感じ取ってくれたのも嬉しかったですね。

イベントのコンセプトは?

 テクノやハウスのみのイベントにする予定だったというのは前述のとおりなんですが、とにかく楽をしたかったのとうまく行くのでは?という予感がしていたので、体感深度はオーガナイザー不在・やりたいDJ自身が自分でプレイしたい日付とその日の共演者を決定するというスタンスでやってみました。
 これがどうだったかというとうまく行きました。クラブ系のイベントといえばそのイベントを運営する人が「この日にイベントをやりたいんですがご都合いかがですか」なんて各DJに声を掛けて回ったりはたまた公募をかけてDJを選んだりするわけなんですが、正直あんまりそういった事務的な手続きを趣味でまでやりたくなかったですし、そもそもバーチャル空間で場所的な制約がないんだからオーガナイザーいらないのでは? という予感はしていました。
 自分でも予想していなかったメンバーでのイベントが勝手にどんどん決まっていくのはワールド持っている側としても驚きと楽しみがあってとてもよかったです!
 適当にだべってるときに「そういえば今度体感深度で……」「何それ! おれ知らないんだけど!? すげーな!」「ワールド主なのに!?」という会話が発生するのがクソ面白かったです。

今後は?

 オーガナイザーではないとはいえワールド主となるとどうしてもイベント中は気になってしまうもので、カルチャーセンター運営中はどうしても他の制作が出来ずそこだけが難点でした。ということでセンターは1月末でいったん閉めてしばらく他のことをやるつもりです。
 またDJ欲など出てきたら期間限定で同じスタンスで再開する予定ですが、その際には色々とまた変わっていることでしょう……。「他の人がやっていないことをやる」「他の人」には過去の自分も入っているので。
 以上! また新たなカルチャーセンターでお会いしましょう。

そもそもVRDJってどうなの?

 現実のクラブに比べて爆音が出るサウンドシステムがない点では間違いなく劣りますが、移動コストがかからないのがとても大きいです。いつでも行けていつでも帰れる。素晴らしいですね。終電が存在しない。

 実際にDJをするにはどうかといえば、確かにHMDは邪魔で邪魔でしょうがないんですが、現実の自分の上に一枚アバターを着込んでいる感覚がDJをするうえでとても楽でした。
 アバターを含めて自分のDJ上の演出の一部にするような感覚
もありましたね。そうすることで自分自身を覆い隠して、観客には自分の提供する作品全てだけを見せられるわけです。
 現実にDJをする際には実生活上の自分と地続きの存在なのでどうしても切り替えが大変だったりしたんですが、VRChat上でDJする際にはそのスイッチの切り替えがとてもしやすかったのもよかったです。

ヘッダー画像は?

 カルチャーセンターの一時閉鎖に向けていただいたファンアートです!ありがたいね……。

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