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なにかのプレ版らしき何か

大昔に書いていたなにかです。恐らくジョーンズの理解に役立つでしょう。

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 隊列は徐々に短くなりつつあった。昨日はマドリックが倒れた。一週間前にはケイスが。出発直後に狂乱しながらどこかへ走り去っていったシンロのことを思い返すものはもはやどこにもいなかった。
 今やわずか六人となった彼らを率いるつば広帽をかぶった精悍な男は、それでもその目に異様な力強さを湛えていたし、その背中を見つめるペデホの若い瞳も未だ憧れに輝いていた。
 つば広帽の男の名はジョーンズと言った。そのすぐ後ろにはペデホが、それに続いて双子女のドミとデミ、ローブを頭から被った皺だらけで長身のショゴタ老、そして最後に暗い瞳のシンイチロー青年。彼らはみな罪人であった。彼らの罪はそれぞれであったが、課せられた刑は等しく追放刑であった。
 ペデホは夜の闇の中を振り返る。閉じられた<第三市>の門はもはや遙か遠くで、砂丘に隠れており見ることはできない。だがそれでも彼は心の中であの高い扉を描き、そして街を、彼を<市>の外へ誘うきっかけになった、あの<パレード>の日のことを思った。
 彼らの統率者である<不死身のジョーンズ>が<市>を出るのはこれが初めてではなかった。彼はかつて幾度もの単独超長距離資源探索行を成功させていた名士であった。彼の尽力により、遠く離れた未知のシェルター街が発見され、新たな交易路が生まれたことも一度や二度ではない。彼が<第三市>に残した功績は比類なきものであることは疑いようがなかった。
 だがその彼に対する世間の評価が一転したのはある日の探索行のことであった。珍しく複数の従者を引き連れ<市>を経ったジョーンズだったが、いつまで待てども帰ってくることはない。そして結局予定日を大幅に過ぎて帰還してきたのは、満身創痍のジョーンズ一人だけであった。
 人々は聞いた。
 従者はどうしたのか。ジョーンズははぐれてしまったと言った。
 それではお前の便から検出されたこの人毛のついた肉片は何なのか。ジョーンズは下を向くと、ああ、おれのクソまでほじくり返したのか、と呟き、黙って笑った。
 人々は戦慄した。これまでの孤独な探索行を彼が生き延びられた理由を、彼が<市>外の人々に行ってきたであろう蛮行を想像し、そして恐怖に打ち震えた。
 そして最後に人々は聞いた。
 そんなことをして、お前は旅の果てに何を得たのか。ジョーンズは、<死なぬ竜>を見た、と言った。
 こうして彼は、<気狂いジョーンズ>へと呼び名を改められ、<市>に建てられた彼の胸像は即座に打ち壊された。追放刑に反対するものは誰一人としていなかった。
 若きペデホにとって、憧れであったジョーンズの失墜は極めて衝撃的な出来事だった。茫然自失のまま引き回される追放者の<パレード>を最前列で眺めるペデホの膝元へ、拘束具をつけられたジョーンズが奇声を上げながら転がりこみ、そしてペデホの手を握った。
 すぐさま刑務官に引き離されたジョーンズを見ることなく、ペデホは急ぎ足で自宅へ戻る。そして握られた手を開いた。その中には、表面を虹色の油膜で輝かせながら、一人でに蠢き続ける肉片と、一枚の紙片があった。
 紙片にはこう書いてあった。この肉は<死せる竜>のものであること。これを信じるならば、仲間に加わって欲しいとのこと。
  

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アアアーッ!!
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ズールー

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