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派遣残酷物語#3 パクリゲーム!?の巻

多重やら胡散臭い会社やら蹴っ飛ばし、なんとか直請けの派遣会社を見つけました。
そこはIT系に特化した派遣会社で、小さいながらも多重派遣をせず、SIer以外の下請けはやっていないところでした。

今思うと、早い段階でまともな派遣会社に当たったのは幸運でした。
私は求人サイトに掲載されている案件からあえて小さな派遣会社を選んでいたため、カスを引く確率が高かったと思います。
わざわざ自分から泥沼に足を踏み入れていたようなもんです。
アホですね。

さて、の派遣会社から紹介された案件は、ソーシャルゲームの開発でした。
当時のソーシャルゲーム業界は爆発的な成長期で、当たればほんの2、3ヶ月の間に100万人単位でユーザが増加していました。
新興の開発会社が履いて捨てるほど設立され、履いて捨てるほど新しいゲームが作られていたのでした。
常にプログラマが足りない状態だったのです。
どこの開発会社も社員だけではまかなえず、派遣を雇い入れていました。
そんな中に私も飛び込んでいったのでした。

その開発会社は社員数20名ほどの小さなところでした。
他に私のような派遣とアルバイトが十名ほどいるとのこと。
つまり半数が非正規雇用者というわけです。

出勤初日に社長と副社長から案件の説明がありました。
社員のディレクターやプログラマの私、グラフィッカー、バイトの学生が会議室に集められます。
社長が直々に説明します。

「この案件はX社から請けたもので、画像等はX社から後ほど送られていきます。うちはサーバ側のシステムとFLASHの作成が主になります」

デザインをこっちでやらなくていいなら簡単そうです。

「すでにX社の別のゲームのソースコードをサンプルとしてもらっています。後でZ80さんは確認して下さい」

サンプルまであるなら楽勝でしょう。

「ゲームの中身は今流行りのソーシャルゲームです。何か質問ありますか?」

え?もう終わり?
なんにもゲームの説明してないじゃん。
てか、紙1枚の資料もない。
私は社長に聞きました。

「ゲームの詳しい要件とか設計って、後でもらえるんですよね?」
「あれ?ソーシャルゲームやったことない?」
「少しだけ『怪盗ロワイヤル』やったことはあります」
「あーそうなんだ。中身は『ロワイヤル』と一緒でいいです
「え?一緒でいいんですか?」
「そう、まったく同じでいいよ」
「そう言われるならそれで作りますけど」

中身が同じゲームを作れと言われたことに驚きながらも、それで何の資料もないのかと妙に納得したものです。
そうはいっても、何かしらの仕様は必要です。

「それでは、実質『怪盗ロワイヤル』が仕様ってことですね?」
「まあそれでもいいけど、攻略サイトに全部(仕様が)載ってますよ」
「はあ、攻略サイトですか」

社長は、攻略サイトを見てパクリゲームを作れとおっしゃる。
このとき「俺はどういう世界に来ちゃったんだろう」と思いました。
意味が分からない。

それまでゲームの面白さは個性だと考えていました。
いかに他と違ったことをするかで売れる売れないが決まると思っていたんです。
しかし今回は売れてるゲームとまったく同じものを作れと言う。
だったらどこに面白さがあり売れる要素があるのでしょうか?

「同じゲームを作って売れるんですか?」
「売れるんです」
「それにこれって昔からよくあるパラメタゲームですよね。アイテム買う人がそんなにいるとは思えないんですけど」
「『ロワイヤル』は売上ものすごいよ~」
「う~ん、正直ちょっと考えにくいなあ」

私は首をひねりました。
同じようなゲームなら、ユーザはパクリ元のゲームをやるんじゃないか。
こんなジャンケンみたいな単純なゲームにお金を使う人はいないんじゃないか。
私にはまったく課金者の顔が見えませんでした。
そのとき、それまで黙っていた副社長が口を挟みました。

「こういうゲームに課金する奴はバカだからね」

その歯に衣着せぬ物言いについ爆笑してしまいました。
会議室にいた誰もが笑っていました。一番若いアルバイト君以外は。

私は少しだけソーシャルゲームの構造が理解できたような気がしました。
と同時に、ものすごくどす黒い気分にもなったのです。

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Vielen Dank

Z80A

見た目は大人、中身はZ80Aくらい。 職業:インチキプログラマ

派遣残酷物語

これらはすべてフィクション、妄想です。 現実にあったことのような気もしますが、気のせいです、たぶん。
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