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形見のグランドセイコー

修理に出していたGrand Seikoの時計が1ヶ月ぶりに戻ってきた。父が亡くなったことがきっかけでその時計を着けた。

父の時計

父が病気になり、まだ元気で会話ができるときから「あのGrand Seikoはあげるから着けろよ」と言われていた。興味がなかったので「うん」と空返事をしていたが言われていたことだけは覚えていた。

何がきっかけで購入した時計なのかはわからないが、父の思い入れのある時計であったのは間違いない。他にも時計はあったがGrand Seikoのことを何度も言われた。

そして父が亡くなり、時計のことを思い出した。私に譲りたいという父の気持ちを考えて通夜で着けることを決め、母に時計を出してきてもらった。

通夜前日のことであったが針が止まっていた… 時計に詳しくない私にとって電池交換が簡単にできるのかさえわからなかった。

通夜当日、電池交換へ走る

そもそも電池交換が出来たとしても、当日に返却されるのかさえもわからない。そして通夜に間に合わなければ意味がない。などの不安な気持ちを抱えながら近所の時計屋へオープンと同時に入った。

その時計屋の店長がまさかの中学高校の同級生であった。10年ぶりぐらいに会うので話したいこともあったが、その気持ちを抑えて電池交換のことを聞くと「20分でいけるよ」とまさかの回答であった。それに加えて「メーカー保証の気圧には耐えれないけど」と言われたがそんなことはどうでも良かったのですぐに交換をしてもらった。

20分後に戻ると時計の蓋が閉められておらず、友人は私に内部を見せてくれた。「浸水していて内部の錆とスクリューが折れている」と説明をしてくれた。最後に「とりあえずは動くけど、大切にするならメーカー修理に出した方がいい」と言われた。

そして通夜、葬式ではしっかり針が動いてくれて、最後に身につけている姿を見せることができた。

ボロボロになりつつも動いてくれた時計に感謝し、葬式翌日に早速修理の手配をした。

修理完了

時計が送り先に到着してからちょうど1ヶ月で戻ってきた。

修理に出している間にはWBCがあり、大谷選手がヌートバー選手にGrand Seikoをプレゼントした、というニュースがあった。ただでさえ時計が戻ってくることをワクワクしていたのに、このニュースがさらにその気持ちを高揚させた。

開封すると時計の外観がピカピカに磨き上げられていた。出す前の時計は恥ずかしいほどに汚れていた…。あまりの差に送る前の写真もよく撮っておけばよかったと感じた。

同封されていたメンテナンスブックには時計の知らない知識がいっぱい詰まっていた。構造まで書かれていてメンテナンスブックにも関わらず、ワクワクしてしまう。

20年前の時計

修理から戻ってきてこの時計について調べてみた。SBGX033という2003年10月に製造されたものであった。Grand Seikoの40周年時に発売されたモデルとのこと。

派手さはなく、とてもシンプルなデザインがとても良い。父とは服など身につけるモノの趣味は全く合わなかったが、これに関しては珍しく私の好きなデザインである。

しっかりメンテナンスをしてくれているので内部はリフレッシュされ、外観は父が使い込んできた傷が思い出のようにしっかり残っている。父が大事にしていたこの時計を次は私が大事にしていきたい。

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