見出し画像

ディッキーズの売上を6年で10倍にした平山真也氏の組織戦略

「アパレルは成長産業。みんな諦めているだけ」。アメリカンカジュアルブランド、ディッキーズ(Dickies)北アジアの元社長、平山真也氏のメッセージです。平山氏は2011年に日本法人を立ち上げ、中国を含む北アジア事業の売上高を6年で10倍に増やした立役者。「消費者を感動させられるのは、思いのこもった商品だけ」と断言する平山氏は「ディッキーズらしさ」を消費者に届けるために奇策は一切行いませんでした。徹底して考え抜き、執念を持って売り切るというサイクルを、全社一体となって愚直に実行してきたのです。本稿は、平山氏がアパレルビジネスの最前線で愚直に実践した事と変化に強い組織づくりについてまとめています。

コンテンツ
 1. 入念に準備し、執念をもって実行
 2.KPIとコンピテンシーの両軸で
 3.面倒くさいことへの動機づけ
 4.在庫はFCを含めてマネジメント

入念に準備し、執念をもって実行

※以下、平山氏の講演の要約です。
私はディッキーズジャパンの社長になってから、年率平均45%くらいの成長率を誇り、6年間で売上高が大体10倍になった。2017年には日本と中国合わせて小売ベースで275億円のビジネスになった。在任期間の最後の方は営業利益率は10%弱に達していた。
ディッキーズがグローバルで売却された際、事業価値は約1000億円と評価されたが、そのうち300億円は北アジアで創出した。

ここで重要だったのは、利益はもちろんフリーキャッシュフローをどれだけ改善できるかという点。そこに注力して経営してきた。

私は土光敏夫(どこう・としお)氏が執念に言及した言葉から、「徹底した分析は優れた戦略をもたらし、優れた戦略は未来への確信を生み、実行を徹底する執念をもたらす。そして執念は着実に成果をもたらす」という事を経営思想の根幹にしている。
どうすれば本当に執念が生まれるかという点についてはいくつかポイントがあるが、徹底的な分析を行い、現実を見詰めて未来がどうなるかを考える。そのうえで作った戦略を気合と執念をもってガンガン実行することが重要だ。そうすれば自ずと経営成績は付いてくる。

やはり、価値が生まれる場や時間を最大化すべきだし、特にアパレルでは人にしかできないことを大切にしなくては業績は上がらない。逆にいえばシステムやツールでもできることは、全て機械に任せるべきだと思う。

ブランドは会社や生態系、雰囲気や文化によって形成され、五感によって感じるものだ。なので文化をどう作るかに注力すべきだ。その文化の創造というのは、意識的に努力しないとなかなかできるものではないので、仕掛けを入念に準備することが必要だろう。

そのために、私はIDO(イノベーティブ・デジタル・オーガニゼーション)という戦略概念を最近提唱している(下図)。DXだけでは、アパレル産業は良くならない。あくまで創造性つまりイノベーションが必須だ。
簡単に言うと、シンプルな組織にして業務プロセスもシンプルにし、固定費を大幅に削減しつつイノベーションを生み出すための余裕をつくるということだ。

画像1

イノベーションを生み出すにはいくつか要件があるが、これらの条件が揃っていても創造性を発揮する余裕時間や創造性を刺激する環境(職場、イベント)がないと、いくらDXを推進してもイノベーションは生まれづらい。
なので、効率性の向上と固定費の削減は当然やらないといけないが、そのうえで事業を成長させるには、余剰となったリソースをイノベーション創造に振り分けていくことが重要だ。

KPIとコンピテンシーの両軸で

ディッキーズでは世界標準である「ジョブ型」の人事制度を導入していた。要は各従業員に求める役割と成果を明確にして、それに応じた処遇を行う制度だ。同一労働同一賃金はジョブ型をきちんと入れれば完全に対応できる。

※続きは下記リンクからご覧になれます(無料)。