見出し画像

DX先進国アメリカの小売&在庫の最新トレンドを鈴木敏仁氏がレポート

アメリカでは、1990年代から製販が一体となって小売業における余剰在庫の解決に取り組み、ITも活用しながら問題をほぼ解決しています。それに対して日本は独特な流通慣習やKPIの欠陥から、自ずと在庫が積み上がってしまう構造に陥っています。アマゾンドットコムやウォルマートという流通の巨人が育ったアメリカ。片や「DX」という言葉だけが一人歩きし、本質的なデータ活用がなかなか進まない日本。彼我にとてつもない差が付いてしまった要因は何だったのでしょうか。本稿では、日経MJやWWD Japan、ダイヤモンド・チェーンストアなどに6本の連載を持つ在米ジャーナリスト鈴木敏仁氏が、日米の「在庫問題」に切り込みました。

コンテンツ
 1. 実店舗でのEC対応でコロナ明暗
 2. 製販一体で効率化を追求
 3. キャッシュフロー重視が小売業の本質
 4. IoTで武装した実店舗だけが生き残れる

実店舗でのEC対応でコロナ明暗

米国の小売業界で昨年来、何が起きたのか。概観からお話ししたい。
2020年、米大手チェーンストアは史上空前の活況だった。ものすごい増収増益。なおかつエッセンシャル、非エッセンシャルの違い、必要火急と不要不急で差が出た。EC対応等で対応できなかった中小零細店が倒れ、チェーンストアにシフトした結果といえる。

小売市場は2020年、6.9%拡大したが、ECだけでみると前年比32.4%伸びている。EC比率は15.8%から19.6%へ上昇した。
では、ECの需要急増に小売は店舗レベルでどう対応したのかというと、店舗をフルフィルメントセンター化したということだ。具体的にはこの5つに大別できる(下図)。

画像1

まず店舗を改装してEC用の作業場を設置した。それからBOPIS、つまり店舗で商品をピックアップするのと、駐車場で待っているお客さんに店員が商品を持っていく方式(カーブサイドピックアップ)を採った。

オンデマンド型短時間宅配とは、日本では市場が大きくないのでイメージしづらいが、ウーバーイーツやアマゾンのプライムナウのようなサービスだ。食品が中心だが、米国ではこれがものすごい大きな市場になっている。

マイクロ・フルフィルメントセンター(MFC)というのは、例えば既存店を3分の2にしてしまい、3分の1をフルフィルメントセンターにしてしまうイメージ。ウォルマートは大きなフルフィルメントセンターと補完し合うような体制にしようとしている。

ダークストアは店舗をフルフィルメントセンターとして、お客さんが買い物できない店舗のことを指す。

これからは店舗の図面を引く段階から、EC用の作業場をどこに設けるかを考える時代になると思う。日本にいる人たちは、小売と外食が中心にあって、周りにオンデマンド宅配があるイメージを抱いてしまうのではないか。しかし米国は全く逆。オンデマンド宅配の巨大な市場(ギグエコノミー)が中心にあって、周りに小売と外食がくっ付いている(下図)。だからギグエコノミーが外食や小売をどう使おうかと考える市場になっている。

画像2

製販一体で効率化を追求

ウォルマートはDXが最も進んでいる小売企業だ。そのDXの歴史を振り返ってみる。
1996年にECをオープンしたが、上手くいかなくて閉鎖し、2000年に再オープンさせた。ただ、当時はスーパーセンターが強かったので、リアル店舗にどんどん投資していた。ところが、アマゾンが伸びてきたので、ECに本腰を入れ始めたのが2011年だった。コスミックスという会社を買収し、「パンゲアプロジェクト」を開始した。これが現在のウォルマートの土台を作ることになった。

※続きは下記リンクからご覧になれます(無料)。