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カセットテープの思い出

友人がレコードにはまっている。
メルカリで漁るように昭和歌謡曲や童謡、昔の記憶に残っている懐かしい曲を集めはじめた。
友人曰く、音の柔らかさや意図してないノイズが入るのがアナログならではの良さで昔の曲を聴いたりすると、懐かしい記憶がより深みを増して思い出されていくらしい。
そんな話をしていたから、自分が初めて音楽を意識し始めの記憶はいつだったのだろうかと思い返してみた。
それは、たぶん小学生の時に買ってもらったカセットだったんじゃないかと思う。
私の父は、田舎の商店街で時計屋を営んでいる。
時計を修理する店の片隅にある作業机の上には、昔からダブルでカセットの入るタイプのラジカセがあって、父は時計を修理しながらよくカセットで落語を聴いていた。
音楽に疎い父は、そのカセットをなにかのついでに近所のホームセンターで買っていたと思う。電気屋やレコードショップではなく、ホームセンターというところがポイントである。
父は自分のカセットを買うときにいつも私のカセットも選んで買ってきてくれていた。
父から渡されるカセットには、美少女戦士セーラームーンやパプワくん、少年アシベとかその当時テレビで夢中になって観ていた主題歌がぎっしりと入っていて、まさに捨て曲なし状態の豪華なものだった。
私はもらうたびに自分専用の小さいラジカセに入れてA面B面どちらも満遍なく流して楽しんでいた。
一人で全面歌ったり、家族で出かける車のなかでもかけていた。
ただ、そのカセットの曲に没頭しつつも妙な違和感を感じていた記憶も微かにある。
そのうちカセットを聴かなくなって、妙な違和感は封印された。
大人になって、実家の棚の奥から偶然まだ残っていた当時のカセットを見つけた。
そのカセットのタイトルをみた瞬間に、幼い私の記憶へフラッシュバックした。
“まんがドッキリカーニバル“
大人になった今、そのタイトルだけで全てを悟った。
私が当時夢中になっていたそのカセットはいわゆるニセモノだったのだ。
ボーカルも演奏もかなり本物に寄せてきてはいるが、終始B級感が漂っているのである。
妙な違和感を感じつつ、このカセットに傾倒していた幼い私を思うとけなげだと思った。
しかしながら、大人になってから聴く“まんがどっきりカーニバル“は、最近心が疲弊していた私には丁度いいものだった。
隙だらけでギスギスしていない、おおらかな時代の代物に触れて、なんだか心が救われたような気がした。
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