血友病vs川崎病vsダークライ 7日目

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去年のわたこの誕生日に、数字の「5」の形のドデカイバルーンを用意したら、まめこが泣くほど羨ましがっていたので、今年はまめこの「4」を準備するつもりでいた。ところが、入院騒ぎですっかり忘れてしまっていた私は、朝起きて急にそのことを思い出し、しまった!と頭を抱えた。
それに代わるような飾りつけが、家にあるものでなんとかできるだろうか…と考えながらリビングへ行くと、旦那さんがAmazonから届いた荷物を広げているところだった。

荷物の中身

あなたが神か!
タンドリーチキンに引き続き、素晴らしいファインプレーである。出発まであまり時間がなかったので、2人で風船を膨らませたりガーランドを紐に通したりしていると、わたこが起きてきた。いい所にきた!着替えて手伝って!と言ったら、「わたちゃんはこれからプレゼント作るからできない!」とはっきり断られた。そして、自分で紙と色鉛筆を用意すると、意気揚々とチョコレートケーキの絵を描き始めた。うーん、これもまた自主性。

結局飾りつけにギリギリまでかかってしまい、朝食を取らずに家を出た。
この日は、日中家族が車を使えるように、電車で面会に向かうことにした。こんな日に限ってオムツの補充が急務であっために大荷物での移動になってしまい、計画性のなさを呪った。
日曜日ということもあり、駅にはオール明けといった風な酔っぱらいがあちこちにふらついていて懐かしい気分になった。最近では電車に乗る機会も半年に1回あるかどうかというところで、駅ビルの中は行くたびにどこかしらの店舗が入れ替わっている。残金の全く分からないPASMOでどきどきしながら改札をくぐると、なんとか行って帰ってこられそうではあった。

頭の中でチョコレート・トレインを歌いながら、病院の最寄り駅に着いた。改札の外にストリートピアノが設置されており、こんな用事で来たんじゃなければ弾いていきたかったなと思った。

乗り換えがスムーズだったのか、意外にも余裕があったので、イートインスペースのあるパン屋さんでモーニングをいただくことにした。店内には美味しそうなパンがたくさんあり、いい香りでいっぱいだった。
今日はこの後ケーキも食べる予定なのに、カロリーが、エンゲル係数が、などとゴチャゴチャ考えたものの、結局一番心惹かれた塩パンのあんバターサンドと、クロワッサンを選んだ。どちらも非常に幸せな味だった。


病棟について、冷凍母乳を忘れたことに気づいた。今日はいつもより早く帰ることを踏まえ、多めに準備してあったのに、だ。一瞬凹んだが、先程のパン屋さんで昼ご飯の分も美味しいパンを仕入れていたので、「ま、このパンでより美味しい母乳を作ればいいいいか。ガハハ」と前向きに考えた。いい食事は世界を救う。

この日のたんたは、私が到着してから1時間近く眠っており、寝顔に向かって今日は早く帰るぞーいいのかーと語りかけたりしていた。
夜勤の看護師さんからの引き継ぎで、哺乳瓶の口をMサイズにしたらよく飲むようになったようです!との報告を受けた。昨日の話し合いの意味とは…という感じではあるが、これぞ育児、である。
体感として、子どもに関する心配の90%は杞憂であるし、失敗やトラブルも、その解決策も、得てして予想の斜め上からやってくる。たくさん回り道をしてもようやく辿り着くのは「最適解」であり、「正解」というものはハナからないようなのである。そのとき、自分の他にも一緒に最適解を探し、回り道してくれる人の存在はとても貴重で、大切にしなければならないと思う。

休日なので、状態の安定しているたんたは回診も大きな治療のイベントもなく、オムツ、授乳、お風呂とこなして、まめこの誕生会の準備のため15時頃退散することにした。上着を着ながら、起きている状態のたんたを置いていくのはやっぱりちょっと心苦しいな、と感傷に浸っていたが、交代の看護師さんがきたらもうそちらへ愛想を振りまいていたので、こいつは強く生きていけると思った。


ショッピングモールから帰ってくる旦那さんとわたまめの乗った車に拾ってもらうため、乗換駅で少し待っていると、「プリキュアに捕まったので20分ほど遅れます」との連絡があった。プリキュア「に」捕まったってシチュエーション、本編ではありえなさそうでおもろいな、と思いつつ、駅ビルに立ち寄ることにした。
駅ビルの催事場では本屋のアウトレットイベントが催されており、絵本も文房具もかなり安くなっていた。しかも、運のいいことに(悪いことに?)私の好きなキャラクターのツートップであるスヌーピーとムーミンのグッズが大漁に並べられていた。やばい、またお金を使ってしまう。
ひとまず、本のコーナーを 物色すると、定価より700円も安くなった折り紙の図鑑を見つけてしまった。私も折り紙は好きだが、最近、わたこがよく折り紙でなにか作りたいということが多いので、いいかもしれないと手に取った。よし、これを買って帰ろう、と強い意志でレジに向かったつもりだったが、レジ横のトートバッグのコーナーに意識を持っていかれてしまった。あっ、そういえばエコバッグもってない。これは買うしかないですねぇ〜。そんな流れでスヌーピーのバッグも一緒に購入してしまった。経済を回していけ。

ロータリーで迎えに来た車に乗り込むと、プリキュアに捕まったどころかプリキュアになって写真撮影してきたらしい娘2人は爆睡していた。たんたのチャイルドシートがすっかり荷物置きになっていて胸がぎゅっとなった。あと一週間したら乗せて帰ってやるからな。
食べ残しの可哀想なミスタードーナツを齧りつつ、たんたの様子を旦那さんに話しながら帰った。



まめこのために料理の腕をふるうつもりでいたのだが、今回は買い出しにも満足に関われなかったため、旦那さんがあれこれ考えてくれており、作る所まで任せることになった。
私は昼寝から目覚めたわたこと早速折り紙図鑑を広げながら遊び始めた。保育園でも取り組んでいるのか、角を合わせたり筋をつけたりといった一つ一つの動作が上手になっており、複雑なものでなければスイスイと折っていた。
一緒に「家」を作って、窓やドアや、庭を描き加えていると、まめこが起きた。同じものを作りたがったので、折るところまでやってあげるから、描くところやれば?と提案すると、「さいしょからやる!」と言うので付き合った。やらせてみると、なんと1歳半離れているわたこに追いつくレベルで器用なまめこ。下の子の向上心や行動力は目を見張るものがある。少々手伝いはしたが、ほとんど自力で折りあげてしまった。できあがったときの笑顔が眩しかった。

「家」が終わると、その他にもそれぞれ作りたいものを見つけて挑戦していた。難しい手順があると、わたこは諦めが早く、すぐに「手伝って〜」と泣きついてくるが、まめこは意地でも自分でやろうとしてくしゃくしゃになり自滅する。姉妹も似ていたりいなかったりだ。
しばらくわたまめと遊んでいなかった分、折り紙をたっぷり楽しむことができてよかった。




「もうすぐできるよ〜」と旦那さんの声がした。わたこが、「ピアノのれんしゅうわすれてた!」と後片付けを放棄しピアノを弾きにいったが、「ハッピーバースデー」のことだと分かっていたので、今回は見逃すことにした。
まめこは、机に並んだ大好物のたらこパスタに小躍りしていた。他にも、パパ特製ポテトグラタンとコーンスープ、冷やしトマト。ありがとうといただきますを言ってみんなで食べた。どれも美味しかったが、まめこはたらこパスタをひたすらおかわりしていた。あまりにもよく食べるので、ケーキ食べられるお腹にしておきなよ、と忠告をした。

お楽しみのケーキは、薄切り苺の貼り付けされたフルーツ盛りだくさんのショートケーキ。ろうそくを4本立て、部屋を暗くして運ぼうとすると、スタンバイしていたわたこが「ピアノがみえない!!!」と言った。確かに。仕方が無いので、キッチンの電気を残した。
私とわたこで「ハッピーバースデー」を連弾し、まめこがろうそくの火を吹き消した。完璧ではなかったけれど、温かい演奏だった。この春からは、まめこもピアノを習う予定で、今日の買い物の際にレッスンバッグ用の好きな布と持ち手テープを買ってきてもらった。たんたの入院が終われば、久々にミシンの出番がやってくる。

まめこは、今が旬の完熟イチゴよりも、綺麗に飾り切りされたリンゴよりも、「まめこちゃん お誕生日おめでとう」のチョコレートプレートをめちゃくちゃ楽しみにしていた。チョコレートが大好きなまめこ。少し前に旦那さんの誕生日もあったのだが、我が家ではプレートはお誕生日の本人が食べるというルールがあり、文字通り指をくわえて見ているしかなかった。ただ、彼女が偉いのは、泣いたり騒いだりせずしっかり我慢するところだ(まあ騒いだところでもらえないのが我が家、というのもある)。あと○○日で自分の誕生日がくる、と、カレンダーを睨みながら、じっと待ったのである。

そんなわけで、一番最初にプレートをまめこの皿に乗せてあげると、満面の笑みで食べた。こればっかりは、わたこも羨ましがったりせず、「よかったねぇ〜!」と一緒に喜んでいた。
そのあと家族でわけたケーキの美味しかったこと。まめこは案の定、「おなかいっぱい」といってチョコレート以外ほとんど残したが、食べられる人が勝手に食べた。


プレゼント開封の時間になった。
パパからは絵本とコップ、ママからは目覚まし時計。そしてばあばから念願のコスメセット。ひいばあばからはわたことお揃いのワンピースだった。
まめこは、ワンピースに着替えて時計のライトをつけ、絵本を開きながらメイクをする、全部のせバースデースペシャルといった風にひとしきり楽しんでいた。あっという間に誕生日の夜は更けていった。


来年はたんたも一緒にお祝いできることを祈った。



8日目へ続く

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