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広告代理店がCRMの提案や要件定義をできるようにしたい


CRM提案を丸投げする広告代理店

「Web広告においてはCPAだけでなくLTVが重要」「CRMも絡めた提案が必要」というのは多くの広告代理店が理解しているでしょう。古い記事を漁ると、売れるネット広告社の代表・加藤公一レオさんが「代理店はCRM領域で踏み込めるか」と2016年で指摘されていたので、実際にはもっと前から問題になっていたはずです。

しかし、実際にはクライアントからCRMを相談された場合、自社で提案を作っている代理店はほとんど無いと思います。CRMに詳しい支援会社をクライアントに紹介し、提案を任せることが多いはずです。

支援会社は「餅は餅屋」の志向が強まり、広告代理店、CRM支援会社、Web制作会社など専門化・細分化が進んでいます。私もそれ自体は否定しませんが、私が問題視しているのは クライアント→広告代理店→CRM支援会社 のように、代理店が商流に入っているにも関わらず、代理店がパートナーに提案を丸投げしている点です。以前に指摘した「介在価値の無い多重下請け」ですね。

マーケティング支援をしていると、クライアントのニーズに支援会社では100%応えられないことがあります。例えば、広告代理店が広告運用を行う過程で、LTVを伸ばすためにCRMやMAのニーズが発生したが、社内に詳しい人材がいないなどです。
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この場合、代理店としてはその仕事をお断りし、CRMやMAに詳しいパートナーを紹介するという手もありますが、これだと代理店の売上にならないので旨みがありません。そこで、フロント対応は元請けが行い、実際の設計や運用は別パートナーに委託するという商流をとります。
(略)
しかし、このケースにおいて元請けの介在価値はほとんどありません。そもそも知見が少ないのですから、パートナーをディレクションしたり、エンドクライアントにきちんとヒアリングができるはずもありません。パートナーとエンドクライアントのやりとりを転送したり、会議を設定する「伝書鳩」としての役割だけです。

マーケティング業界の多重下請け構造

代理店の役割が「伝書鳩」以外に無いのであれば、代理店が商流に入らず、クライアントとCRM支援会社で直契約すべきだと思います。それであれば私は何の文句もありません。

しかし、中には直契約が無理というケースもあるでしょう。私が過去に取引した大手企業だと、商流は必ずハウスエージェンシーを挟む必要がある(大手企業と支援会社の直契約が不可能)という謎ルールがありました。そういう場合、代理店はパートナーに提案を丸投げせずにディレクションの役割を果たすべきでしょう。

例えば、クライアントからCRMの相談があった際、ヒアリングや要件定義をパートナーに丸投げしていないでしょうか? まずは一次対応として代理店がヒアリングを行い、代理店では分からない部分をパートナーに細かくヒアリングしてもらえば、パートナーのヒアリングの負担が減りますし、クライアントも同じ情報を代理店やCRM支援会社に何度も説明するロスが省けます。

何をヒアリングすれば良いか分からないなら、パートナーに頼んでヒアリングシートを作ってもらったり、勉強会を開催してもらえば良いでしょう。代理店がCRM支援会社と同じレベルまでCRMに詳しくなるのは無理ですが、最低限のディレクションができる程度には知識を身につけるべきです。

広告代理店向けのCRM研修

実は以前、同じような相談を某代理店から受けて、CRMの研修を行ったことがあります。その会社もCRM経験者が社内におらずパートナーに丸投げしていたのですが、その状態に危機感を覚え、社内にCRMノウハウを蓄積したいという要望でした。

まずは座学パートで、CRMによく使われるチャネルやツール、機能、価格、技術的な仕組みなどを解説しました。座学だけでは理解が浅いので、自社で無料のメルマガ配信ツールやLINEのアカウントなどを開設し、テスト文面を作成して社内に配信などしていました。メルマガ配信ツールの管理画面を見たことがない、文面を作ったこともないという人が多かったので、こういう基本的な内容でも新鮮な体験のようでした。

その後は実践パートで、私がCRMのヒアリングシートや提案書フォーマットを用意しました。実際にクライアントから相談があれば、社員にヒアリングシートや提案書を作ってもらい、私がレビューを入れていました。最初は社員の提案クオリティが低かったので赤入れだらけになったのですが、回数を重ねると徐々に赤入れが減り、最終的には私がフォローしながらクライアントから要件をヒアリングし、パートナーをディレクションできるレベルにはなりました。

こうした代理店がもっと増えれば、前述の「介在価値の無い多重下請け」が業界から減るでしょう。そのため、今後は代理店向けにCRMを教える仕事を増やそうかと思います。

※前に信頼構築できていない支援会社のクライアントワークは受けないと書きましたが、受けないのはあくまでクライアントワークであって、人材研修などの支援会社内で完結する業務は受けても構いません。


私のマーケティングの仕事については下記の記事をご覧ください。

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