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スペシャリスト、ゼネラリスト、I型・T型・Π型人材をドラクエで説明する

色んな人とチーム論を話すと「スペシャリスト」「ゼネラリスト」「I型・T型・Π型」という言葉が出てくることがよくあります。

解釈が揺れがちな言葉ですが、先日ドラクエで例えて説明してみたらまぁまぁしっくりきたので、書き残しておきたいと思います。


スペシャリストは「キャラクター」で"実行"に強い

スペシャリストは、ドラクエで言うところのキャラクターです。

戦士は物理攻撃のスペシャリストで、通常攻撃はもちろん、「まじんぎり」や「はやぶさぎり」などのとくぎを使って先頭に立って敵を攻めます。身を削りながら安定的なダメージを叩き出すのが戦士のスペシャリティです。

僧侶は回復や防御的サポートを受け持ちます。序盤は「スクルト」で防御を固め、味方が傷つけば「ホイミ」で回復したり、毒を受ければ「キアリー」で解毒したりします。守りの部分がスペシャリティと言っていいでしょう。

キャラクターは、それぞれのスペシャリティを実行することが得意です。実行とは、「まじんぎり」を放ったり、「ホイミ」を唱えたりという、実際の行動のことです。

一方で、スペシャリストであるキャラクターは、スペシャリティをどう発揮すべきかを判断するのが苦手です。

例えば、呪文の効かないボスキャラに延々とザラキを唱えてしまったりします。

クリフトは、ザラキを唱えるスペシャリストですが、いつザラキを唱えるべきかはうまく判断できないのです。


ゼネラリストは「プレイヤー」で"意思決定"に強い

ドラクエの世界で最もゼネラリスト的なのはプレイヤーです。

魔物、ダンジョン、味方のステータス・とくぎ、などの豊富な情報を持っているので、いつ・だれが・なにをやるべきかうまく判断することができます。

戦闘においては「めいれいさせろ」を常に選んでいるという方も多いのではないでしょうか。

プレイヤーは、ザラキという呪文がなんであるか、相手のモンスターがなにものであるかを知っていて、さらに、ザラキはボスモンスターには効かないという知識も持っています。

だから、「ザラキをするな。ホイミをかけろ」と的確な指示をすることができます。クリフトに自分で判断させるより、効果的な戦闘ができそうですね。


キャラクターが自分で判断する「T型」

ところが、「めいれいさせろ」も完璧とは言えません。

こんなシーンに心当たりがないでしょうか。

戦士が瀕死だ! 回復したいけど、僧侶と勇者のどっちが先に行動できるかな…とりあえず両方とも戦士にベホマをかけるように指示しておくか…。

この選択をすると、例えば"僧侶が先にベホマをかけて戦士のHPを全回復した直後に勇者もベホマをかけたが(既に戦士は全回復してるので)なにも起きなかった"というストーリーがあり得ます。

勇者の行動が1ターンぶん無駄になってしまいましたね。

このように、スペシャリストとゼネラリストの完全分業は細かい状況変化への対応がイマイチになりがちです。


ところで、最近のRPGゲームはAIが進化して、キャラクターがある程度自分で正しい判断ができるようになってきています。

ファミコン版のクリフトはボスにザラキを唱えまくりますが、PS版のクリフトはそんなことはありません。

なぜそんなことが可能になったのか。それは、クリフトが神官という自分のスペシャリティのみでなく、「魔物の知識」という周辺領域の知見を深めたからです。

こういった、スペシャリティの周辺領域の知識も持ち合わせることで、ある程度適切な意思決定が可能になったのがT型人材です。(ファミコン版クリフトのようなスペシャリティ特化型はI型人材です)

T型人材で構成されたパーティーは、キャラクターに判断を任せることで、ターン中の状況変化まで柔軟に対応できます。

どうでしょう。「めいれいさせろ」を使うよりも効果的な戦闘ができる気がしませんか?

キャラクターがT型人材と化した現代RPGにおいては、行くダンジョンを決めたり装備や道具を揃えたり宿屋で回復しておいたりパーティー構成を考えたりといった大戦略部分をプレイヤー(ゼネラリスト)が担って、戦闘のような戦術レベルの行動はキャラクター(T型人材となったスペシャリスト)が担うのが最もうまくいく形なのかもしれません。

なんかアジャイルなチームっぽい感じですね。


転職とΠ型

Π型人材については、転職システムで説明することができます。

ドラクエ6の転職システムを使って説明します。

キャラクターは「戦士」「武道家」「魔法使い」「僧侶」のような職業に就くことができます。そして、「戦士」から「魔法使い」のように、別の職業に転職することもできます。

魔法使いに転職したとしても、戦士時代に身に付けた「まじんぎり」を忘れてしまうようなことはなく、引き続き使うことができます。もちろん、魔法使いになってから身につけた「メラ」なども使えます。「まじんぎり」や「メラ」をいつ使うべきか自分で判断することもできます。

さらに、「戦士」と「魔法使い」を究めた人は、「魔法戦士」に転職することができます。

魔法戦士は、それまでに身に着けた呪文やとくぎをそれぞれ使えるだけでなく、組み合わせて「マヒャドぎり」のような全く新しい概念さえ生み出してしまいます。

このように、Π型人材は自分の中に2つ以上のスペシャリティを持っていて、それらを組みわせてイノベーションを起こすこともできます。


H型人材は?

H型人材というのも最近よく言われていて、要は1つ以上の専門性を持ちながら自分とは異なる分野のスペシャリストと協働することができる人材のことなのですが、ドラクエでうまいこと説明する方法が考えつきませんでした。

もしうまいこと説明できる人がいたら、ぜひ教えてください。


ゲームと現実世界の横断

書きながら思ったのですが、ゲームでうまくいったことを現実世界で適用してみたらうまくいったり、その逆だったりということはよくあるんじゃないかなと。

例えばストリートファイターのような体力ゲージ性の格闘ゲームのシステムは、SRE文脈におけるエラーバジェットの考え方と似てます。体力ゲージの残量 = あとどのぐらいリスクをとって攻めれるか、なので。

他には、スクラムのプラクティスを牧場物語に導入してみるとか、どうでしょう!

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