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20031117 カルマン渦(2)

 少し強い風が吹くと木の枝や電線がビュービューと音を立てる。これは木の枝や電線の周りに風によってカルマン渦列という規則正しく並んだ渦が発生することによって音が出ている$${^{*1}}$$、ということを以前書いた。

 これを書いた時、カルマン渦自体が音の原因になっていると考えた。そもそも音というものは何か。「音」というのは人間が聴覚として感じる感覚$${^{*2}}$$である。その感覚を引き起こす物の一つに空気の振動がある。大抵の音は空気の振動が原因になっている。

 空気の振動とは何か。空気の大部分は窒素ガスと酸素ガスとで構成されている。そのガスは気体分子で構成される。空気の振動とはこの気体分子の密度の薄いところと濃いところとが交互に発生してそれが移動している状態を言う。これは疎密波$${^{*3}}$$と呼ばれる。密度の濃い薄いは圧力が高い低いと同じことである。その圧力の高低が耳の鼓膜に到達して鼓膜を振動させて「音」となる。

 連続的なカルマン渦$${^{*4}}$$の発生により渦周辺の空気の密度に濃淡が発生して「空気の振動」になると思っていた。

 あるページによると、そうではないというのだ。カルマン渦によって電線が振動して、その電線の振動でビュービュー音が鳴る$${^{*5}}$$と書いてあった。

 本当にそうだろうか。電線の振動によるものであれば、電線の長さによってかなり音色が変わってもよさそうなそうな感じがする。それに木の枝の音も電線の音もそれ程音色としては変わらないので、木の枝や電線の振動による「音」の発生とは言えないのではないだろうか。

 このページでは、まず「エオルスの琴$${^{*6}}$$」を紹介している。エオルスの琴$${^{*7}}$$というのは風によって独りでに奏でる琴のことらしい。

 弦の部分に風が上手く当たるように板を弦の上に取り付けた琴$${^{*8}}$$で、風が吹くと弦の部分でカルマン渦が発生して、それによって弦が振動して音が鳴るらしい$${^{*9}}$$。この場合は弦その物が振動して、その振動が琴の共鳴箱で共鳴して大きな音になる。

 これは電線のビュービューという音とは全く違う。件のページ$${^{*5}}$$はエオルスの琴が鳴るのと電線が鳴るのとを混同しているのではないだろうか。電線のビュービュー音は「エオルス音」とも呼ばれるので、更に勘違いを引き起こしているのだろう。

 因みに日本語では「虎落笛(もがりぶえ)$${^{*10}}$$」というらしい。

*1 20020101 カルマン渦
*2 20030410 音の定義
*3 中川のビジュアル物理教室 横波と縦波
*4 こんにちは,坪井です. カルマン渦列
*5 札幌市青少年科学館(科学の質問箱)■渦ってどうして起きるの?
*6 ハープとチターとオートハープ エオリアンハープ Aeolian Harp
*7 Music Magic Aeolian Harps by Tim Manning
*8 The Little Aeolian Harp Page
*9 Von Karman vortex street
*10 国語辞典 英和辞典 和英辞典 - goo 辞書

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