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20020213 最後の授業

 ヴィシー・フランス$${^{*1}}$$というと小学生の頃の国語の教科書に載っていた「最後の授業」を思い出す。ところがこれは全くの勘違いで、最後の授業とナチスドイツのフランス北部占領は全く関係のない話であった。

 最後の授業の時代は普仏戦争の1870年で、第一次世界大戦よりも古い話であった。普仏戦争でプロシアによって割譲させられたフランスのアルザス地方$${^{*2}}$$が舞台になっている。明日からドイツ領になるため、フランス語が使えなくなるから今日が最後のフランス語の授業だと、そこの町のある小学校の先生は言う。先生はフランス語のすばらしさを児童に訴え、最後に黒板に「フランス万歳」と書いて物語は終わる。

 この物語は昭和2年から国語の教科書に登場し、昭和61年まで掲載$${^{*3}}$$され続けたらしい。このページ$${^{*4}}$$を見ると小学校6年生国語の下巻の最後に掲載されていたようだ。文字通り小学生最後の授業に習う題材だった様だ。

 ところがアルザス地方はもともとドイツ語$${^{*5}}$$を使っていたらしい。正確にはアルザス語$${^{*6}}$$というドイツ語の方言の様なもののようだ。従ってフランス語の先生はアルザス地方の人々にとって外国語の先生であり、児童達の前での「最後の授業」の演説は完全に空回り$${^{*7}}$$していたことになる。

*1 20020212 尾州フランス
*2 Alsace、アルザス : アルザス地方位置図
*3 あんな本こんな本―25―
*4 教科書タイムトラベル
*5 03-04/2001
*6 アルザス案内
*7 ドーデ作「最後の授業」をめぐって

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