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20010401 再販制度

 日本で出版される書籍は特別な場合$${^{*1}}$$を除いて、どこでも同じ値段で売られている。これは市場原理に従ってこのような状態が作り出されているわけではなく、ある制度によって消費者がどこで買っても同じ値段になるようになっている。その制度は著作物再販売価格維持制度$${^{*2}}$$と呼ばれる制度で、略して「再販制度」といわれている。

 この再販制度というのは独禁法又は独占禁止法と一般に呼ばれている「私的独占の禁止及び公正取引の確保に関する法律$${^{*3}}$$」で規定される制度である。

 事業者は、健全な市場原理によらない不正な取引$${^{*4}}$$をして、消費者が不利益を被るような行為をしてはいけない、とこの法律にある。例えば、非常に人気のある商品を安売りされると製造業者の利益が減るからと言って、卸や小売りに販売価格を指定して安売りできないように製造業者が何らかの圧力をかけると、その製造業者は法律によって罰せられるのである。

 再販制度は、このように販売価格を指定するために製造事業者が小売り事業者に圧力をかける行為をしても独禁法で罰しないという、法律の適用除外$${^{*5}}$$をするための制度である。

 ある事業者Aがある事業者Bに対して物を販売し、更に事業者Bが値段を付けて販売する時の値段を「再販売価格$${^{*6}}$$」という。再販売価格の「再」というのは事業者Aから見て事業者Bが「再び」設定する販売価格、と言う意味である。

 本でいえば出版社が取次店に対して書籍を売るときに書店に卸す時の値段を設定することであり、取次店が書店に対して書籍を売るときに消費者に販売する値段を守らせるのである。その価格を守らせるために再販売価格維持契約を結ぶのだが、一般の商品の場合、この契約自体が独禁法で禁止される行為である。ところが本やCDなどを販売する場合は、適用除外によってこのような契約は違法ではないことになっている。

 従って書店は本の安売りが法律で禁止されているわけではなく、安く売ると契約違反となり本を仕入れられなくなったり、制裁金を払わなくてはならなくなったりするので安売りをやらないのである。

*1 どう変わる? 出版流通システム
*2 「なぜ著作物再販制度を問題にするのか」
*3 私的独占の禁止及び公正取引の確保に関する法律
*4 II 独占禁止法はどのようなことを規制しているのでしょう
*5 私的独占の禁止及び公正取引の確保に関する法律 第6章 適用除外
*6 私的独占の禁止及び公正取引の確保に関する法律 第6章 適用除外

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