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20030510 庚申講

 道端で庚申(こうしん)塔$${^{*1}}$$をたまに見かける。庚申の日に行う庚申講$${^{*2}}$$の象徴として建てられた石像である。

 庚申とは「かのえさる」の日のことで、旧暦で一年間を六十干支で割り振った時$${^{*3}}$$、「かのえさる」に当たる日である。六十干支は六十通りある$${^{*4}}$$ので庚申の日は年に六回ある。

 $${^{*5}}$$とは結社のようなもので、経済的なものと宗教的なものの二種類がある。前者には頼母子(たのもし)講、無尽講$${^{*6}}$$など、後者には富士講$${^{*7}}$$、伊勢講$${^{*8}}$$などがある。

 庚申講は宗教的な講$${^{*9}}$$である。人体には三匹の「尸」という虫がいて、庚申の日の夜に寝ている隙にからだから抜け出して、天に昇ってその人の犯した悪事を天帝に告げると考えられていた。この考えは中国の道教から$${^{*10}}$$来ているらしい。天帝はその悪事に応じて寿命を縮めるというので、三匹の尸が報告に行かないように庚申の日には皆で集まって徹夜をする、というのが庚申講である。

 悪事をしないように努めるのが普通の宗教観のような気がするが、この庚申講では、してしまった悪事は仕方がないので、それを天の神様にばれない様にする発想が面白い。

 更に面白いのは体の中に棲んでいる三匹の虫「三尸(さんし)$${^{*11}}$$」である。それぞれ「上尸」「中尸」「下尸」$${^{*10}}$$と呼ばれる。こんな虫が体の中に棲んでいるとはとても思えない。昔の人は一体どうやってこの姿を創造したのだろうか。

 体の中にいる虫と言えば寄生虫$${^{*12}}$$である。人の尻から出てきた寄生虫を見て「三尸」を思いついたのだろうか。寄生虫で「顔」があると言えばサナダ虫$${^{*13}}$$である。理科や保健体育の教科書には河童の顔のようなサナダ虫の頭部$${^{*14}}$$が載っていた。

 サナダ虫を見て「三尸」を考えたのだろうか。頭部の大きさは1mmぐらいらしい$${^{*15}}$$ので、顔のようなものは辛うじて見えたのかも知れない。教科書の絵$${^{*16}}$$ではなく実際にはどんな感じの「顔」なのだろう。この写真$${^{*17}}$$は電子顕微鏡$${^{*18}}$$で撮影されたサナダ虫の頭である。大体絵の通りである。この写真$${^{*19}}$$は髪の毛のないサナダ虫である。写真に写っている縮尺からするとこの頭はかなり小さい。こんな怖い顔$${^{*20}}$$をしたのもいるらしい。

 想像をたくましくすれば、サナダ虫は「三尸」のような姿になるのだろうか。頭が牛でその直ぐ下に人間の足が一本だけ付いている「下尸$${^{*1}}$$」は何となくサナダ虫に似ている。

*1 庚申塔を探しに行こう
*2 ■話は庚申の晩…庚申請 - 狛江市役所
*3 国立国会図書館 「日本の暦」―暦の中のことば 干支
*4 国立国会図書館 「日本の暦」―暦の中のことば 六十干支
*5 富士講や庚申講
*6 検査関連活動 -研究誌「会計検査研究」の発行- 庶民金融と会計検査 小澤 潔
*7 ■富士に登る…富士講 - 狛江市役所
*8 帽 しめ に 矢島町教育委員会 教育長 三 浦敏男 四百年近くの仏統を持つ矢島の祭りは 第二節 神明社の歴史
*9 これなあに? 庚申信仰(こうしんしんこう)
*10 東京庚申堂/庚申講とは
*11 東京庚申堂 sanshi.gif
*12 20010922 壁土を喰う
*13 はなむしのページ  ~寄生虫の世界へ~ <サナダムシ編 1>
*14 Lecture 5 Platyhelminthes (Flatworms) lithotape2.jpg
*15 条虫症(Cestodiasis)
*16 How to Get Rid of Tapeworm in Humans : Top Health Fix
*17 Dr. Gonzo's Art and Wine Web-site tapeworm.jpg
*18 20030105 EBIC
*19 American Heritage Dictionary Entry: scolex
*20 Ancylostoma duodenale

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