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20041104 悪口数え唄

 悪口の数え唄があった。子供の頃、父や叔母などから教わった。名古屋弁の唄である。

 (一)言ったろか (二)憎たらしい (三)さんびんた (四)知りもせんのに (五)ごてごてと (六)ろくでもにゃあ (七)ひっちくでぇ (八)はったろか (九)くそだぁけ (十)飛んでけぇ

 子供の頃の知りうる語彙で勝手に修正しながら覚え込んだので、意味のよく判らない単語がある。童歌はこういうことがよく起こる$${^{*1}}$$。「(三)さんびんた」は何のことなのか。これに関しては父親に聞いたことがあった。確か、往復びんた$${^{*2}}$$のことだ、と説明された。その時は納得したが、往復びんた$${^{*3}}$$なのに「三びんた」一体どういうことか。手の甲で左頬を打った後、仕上げに手の平でもう一度右頬を打つのが正式な往復びんただったのだろうか。悪口の唄なのに、この「さんびんた」だけが異質である。さんびんたを喰らわせるぞ、という意味なのか。

 悪態として「さんぴん」というのがある。三一侍(さんぴんざむらい)の略で、年収が三両一人扶持$${^{*4}}$$(さんりょういちにんぶち)であったところから身分の低い若党$${^{*5}}$$や侍を軽蔑して呼んだ言葉である。

 三両一人扶持を「三一」と略し、「一」を「ぴん」と読んで「さんぴん」である。「ぴん」は「ピン$${^{*6}}$$からキリ$${^{*7}}$$」の「ぴん」で、その語源はポルトガル語の「pinta」らしい。そうなると「さんぴん」は「さんぴんた」と言うこともできる。

 「さんぴん」を稼ぎの低い者、貧乏人などに対する悪口とすると「さんぴんた」というのも悪口になる。するとこの数え唄の(三)は「さんびんた」ではなく「さんぴんた」だったのかも知れない。

 「(七)ひっちくでぇ$${^{*8}}$$」は名古屋弁で「くどい」という意味、「(八)はったろか」は張り倒してやろうか 「(九)くそだぁけ」は糞たわけである。

*1 20040505 めじろ、ロシヤ、野蛮国(2)
*2 国語辞典 英和辞典 和英辞典 - goo 辞書: びんた
*3 愛と青春の往復びんた
*4 国語辞典 英和辞典 和英辞典 - goo 辞書: ふち
*5 国語辞典 英和辞典 和英辞典 - goo 辞書: 若党
*6 国語辞典 英和辞典 和英辞典 - goo 辞書: ピン
*7 国語辞典 英和辞典 和英辞典 - goo 辞書: キリ
*8 なごや弁 は行

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