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20030319 治具

 ジグという言葉がある。ジグは「jig」と綴る。ジグとは機械工作において、加工物を刃物や工具に対して正しい位置へ導くために用いる補助的な工具のことである。外来語で元々は英語らしい。何となくボール盤$${^{*1}}$$のようにオランダ語$${^{*2}}$$が語源だと思っていた。boor-bankの「bank」は「台」と言う意味だから旋盤やフライス盤$${^{*3}}$$の「盤」もボール盤の「bank」が変化したものだろう。たまたま漢字の「盤」も「物を載せたりする台」という意味があるので、ぴったりな音訳$${^{*4}}$$である。

 漢字で「治具」と書くこともある。工具の一種だから「治工具」とも書く。「治める工具」だから上手い漢字の当て方である。

 ところが「治具」を「具」と書く場合がある。これは間違いだ。「冶」は「や」であって「じ」ではない。「冶」は金属を溶かすと言う意味で、音読みしかない。「冶」は見慣れない字なので「治」と間違える場合が多いのかも知れない。「冶金$${^{*5}}$$」を「治金$${^{*6}}$$」と書いて「やきん」と読むと勘違いしている場合もある。

 では何故、逆に「冶」といったわざわざ見慣れない字を使ってしまうのだろう。漢字の間違いというのは「見慣れない漢字」を「見慣れた漢字」に置き換えてしまうというのが普通である。例えば「完」を「完」、「場(どくせんじょう)$${^{*7}}$$」を「独場」といった具合だ。独擅場の場合は、誤った表記の「独壇場$${^{*8}}$$」の方が一般的なってしまっている。

 恐らく「次」と「治」とからの類推で「冶」も「じ」と読むと思ってしまうのか。更に「鍛冶」は「かじ」と読むので「鍛」が「か」で「冶」が「じ」と読むと勘違いしたのかもしれない。「かじ」は「金打(かねうち)$${^{*9}}$$」が変化してできた言葉で、「鍛冶」を「かじ」と読むのは熟字訓$${^{*10}}$$なのである。大和や武蔵$${^{*11}}$$と同じで、熟語全体で訓読みをしているのでそれぞれの漢字をどう読むというのはない。

 「治める工具」が「冶かす(溶かす)工具」では全く意味をなしていない。

*1 株式会社ナカトミ産業
*2 国語辞典 英和辞典 和英辞典 - goo 辞書: ボール盤
*3 一般用の工作機械
*4 20000327 音訳
*5 日本冶金工業ホームページ
*6 治金工学はどこで学べますか? - 金属材料学。専門的知識を十分に... - Yahoo!知恵袋
*7 国語辞典 英和辞典 和英辞典 - goo 辞書: 独擅場
*8 国語辞典 英和辞典 和英辞典 - goo 辞書: 独壇場
*9 国語辞典 英和辞典 和英辞典 - goo 辞書: 鍛冶
*10 20000413 四字熟語
*11 20010126 武蔵国のビターバレー

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