見出し画像

20000127 ネオジム

 磁石の話題のついで。最近はかなり強い磁力をもった磁石が出回っている。 稀土類磁石$${^{*1}}$$と呼ばれる磁石は誠に強力である。
 稀土類$${^{*2}}$$とはScスカンジウム、Yイットリウム、Laランタン、Ceセリウム、Prプラセオジム、Ndネオジム、Pmプロメチウム、Smサマリウム、Euユウロピウム、Gdガドリニウム、Tbテルビウム、Dyジスプロシウム、Hoホルミウム、Erエルビウム、Tmツリウム、Ybイッテルビウム、Luルテチウムの17元素の総称である。
 大昔、日立$${^{*3}}$$のテレビは「キドカラー$${^{*4}}$$」と呼ばれていた。三原色を発するためのブラウン管の中に塗られている蛍光材料にこの稀土類元素が入っていることから名付けられた。  

 稀土類磁石でよく知られているものは「サマリウム・コバルト磁石」と「ネオジム・鉄・ほう素磁石」である。それぞれ名前にあげられている元素をある一定の割合で混ぜ合わせて作った磁石である。特に「ネオジム・鉄・ほう素磁石」は近年に発明された無茶苦茶強い磁力を持つことが出来る。  

 サマリウムとかネオジムという元素名はコバルトや鉄やほう素に比べると馴染みのほとんどない元素名である。大抵の外来語の元素は「~ウム」なのに、「ネオジム」の場合は「ム」の前に「ウ」が無くて「ジ」の次が直ぐ「ム」となって、非常に落ちつかない。ヘリウムを「へリム」にしたみたいで気持ち悪い。  

 この感覚は多くの人が持っているようである。「ネオジム」に勝手に「ウ」を入れて「ネオジウム」という新語を使っている人が非常に多い。ネオジムの英語表記はNeodymium$${^{*5}}$$だから「ネオジミウム」ならまだいいが、「ネオジウム」では完全な間違いである。
 検索エンジン$${^{*6}}$$で「ネオジウム$${^{*7}}$$」をキーワードに検索すると磁石関連のサイト$${^{*8}}$$が沢山出てくる。  

 このように他の言葉や単語の類推で、ある単語の綴りが変化してしまうというのは英語にもある。

 「island」や「isle」(どちらも島の意)の発音されない「s」は長い年月の間に発音が省略されたわけではなく、最初から発音されていなかったようだ。ではなぜ「s」があるかというと島を意味するラテン語の「insula」に「s」が入っているので勝手に綴り字に入れてしまったらしい。
 まだある。canの過去形「could」は原形canの綴りには「L」が無いのに過去形になると突然出てくる。これはwillやshallの過去形が「would」「should」になるから、canもそれに倣って、過去形がもともと「cude」だったのを「could」にしてしまったらしい。  

 それにしても学術用語でこのような言葉の変化は珍しいのではないだろうか。厳格に定義されるべき科学の世界において間違った言葉を使い続けることは少しカッコウが悪いことである。

*1 ♪希土類磁石のすすめ。(株)二六製作所♪
*2 ♪希土類磁石のすすめ。(株)二六製作所♪
*3 HITACHI
*4 遷移金属元素
*5 Jean-Ell Enterprise Co., Ltd.
*6 インフォシーク
*7 金属鉱業事業団
*8 モ-タ用異方性ネオジウム系フレキシブル磁石を開発

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?