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20060310 音楽鑑賞の一時

 久しぶりにクラシック音楽を聴きにいった。一人で行った。管弦楽はロンドン交響楽団$${^{*1}}$$で、指揮はチョン・ミョンフン$${^{*2}}$$。演目は「魔弾の射手」序曲、ベートーベン/バイオリン協奏曲ニ長調、組曲「展覧会の絵$${^{*3}}$$」(ラベル編曲)だった。

 会場は愛知県芸術劇場コンサートホール$${^{*4}}$$で、席はオルガン席$${^{*5}}$$と呼ばれるホールに設置されているパイプオルガンの周辺の席だった。この席は演奏者の背面になっている。演奏者と同じ方向を向くので、指揮者と通常の観客席とが向かい合うことになる。演奏に全く関係ない一階最前列の観客の様子が目に入る。

 自分が席に座った時には、まだ一階最前列の席は埋まっていなかった。しばらくすると男女の二人連れが座った。女性は和装である。年齢は二十五、六、七ぐらい。長身ですらっとしていた。なんと顔は山田優$${^{*6}}$$そっくりである。舞台を挟んで向かい合っているので、気になって仕方がない。演奏が始まるまで、会場入り口で配られたチラシを見ては「山田優」を眺めながら時間をつぶしていた。

 演奏が始まって、度肝を抜かれたのはチョン・ミョンフンの指揮ぶりであった。ロボットみたいな動きである。笑えて吹き出しそうになったが、少し我慢していたら慣れてきた。気になって仕方がなかった「山田優」にも慣れてきた。

 「展覧会の絵」は大変よかった。やはり生の演奏はいい。結構長い間拍手をした。拍手を終えて一段落したときに、隣に座っていた女性に話しかけられた。「堪能できましたね」の一言だったが、この一言が演奏の良さを倍増させた。彼女は五十歳ぐらいで、既に子育てが終わって自分の時間が十分あるという感じである。友人と二人で聞きに来ていたようだった。

 こういった自分より少し年配の見知らぬ女性から突然話しかけられることが多くなった。十年ぐらい前に店で一心不乱にCDを物色していたら、背中から「あのう、すいません。『G線上のアリア$${^{*7}}$$』はどの辺りにあるんでしょうか」と尋ねられたことがあった。この頃からそう思うようになった。その時、臙脂色$${^{*8}}$$の分厚いジャンパーを着ていたので店員と間違えた訳ではなかろう。

 しかしあの「山田優」ぐらいの妙齢の女性からは、これまで一切ない。

*1 London Symphony Orchestra
*2 Myung-Whun Chung (Conductor, Piano) - Short Biography
*3 展覧会の絵より「プロムナード」
*4 愛知県芸術劇場/コンサートホール
*5 オルガン席P1列からP3列1から39
*6 山田優 | NHK人物録 | NHKアーカイブス
*7 G線上のアリア
*8 臙脂 えんじ #b94047

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