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20050419 電子レンジと摩擦熱

 電子レンジ$${^{*1}}$$は、電磁波によって食品に含まれる水分子が振動する現象を利用して加熱する。これを「水分子の摩擦熱$${^{*2}}$$」と説明している$${^{*3}}$$場合がある。

 分子の摩擦とはどういう意味だろう。分子同士が擦れ合って熱が発生するということだろうか。

 水の分子は電気的な偏りがある。分子全体では電気的に中性であるが、部分的に見ると正と負とが偏っている$${^{*4}}$$。近くに正の電気があれば、水の分子の負の部分がそちらに引き寄せられる。負の電気があれば逆に正の部分が引き寄せられる$${^{*5}}$$。

 電磁波は空間にできた電気$${^{*6}}$$の波である。電気が強くなったり弱くなったりする。それに伴って磁気も発生して、これも強くなったり弱くなったりする$${^{*7}}$$。電気が変化すると磁気が発生し、磁気が変化すると電気が発生するので、互いに影響しあって空間を伝わっていく$${^{*8}}$$。これが電磁波である。

 水分子の周りに強さが変化する電気があれば、分子は影響される。分子は電気の強さのの変化に伴って振動する$${^{*9}}$$。程良い電磁波を照射すれば、水分子はよく振動する。

 それでは熱とは何か$${^{*10}}$$。物質が熱を持つと言うことは、その物質を構成する原子や分子がエネルギーを持つと言うことだろう。そのエネルギーは原子や分子の運動によるエネルギー$${^{*11}}$$か、原子や分子そのものの運動なのだが不連続な値にしかならない量に基づくエネルギー$${^{*12}}$$かよく判らない。水分子が熱を持つということはとにかく運動のエネルギーを持つことである。

 摩擦$${^{*13}}$$とは何か。物理的に言うと摩擦とは、物と物とが擦れ合って物の状態が変化することである。変化しなければ「摩擦がない状態」なので摩擦とは言えない。物と物とが擦れ合うとそれらの表面では構成する分子や原子がぶつかり合う。ぶつかれば分子や原子は少しでも余分に動く。元の状態よりも余分に動けばエネルギーを持ったことになる。これが摩擦熱$${^{*14}}$$だろう。

 電子レンジで物を加熱すれば、その物に含まれる水分子が電磁波によって運動のエネルギーを与えられる。つまりその時点で熱を持った状態になっているのである。その結果、水分子同士がぶつかり合う事もあるだろうが、これによって熱が発生しているわけではない。更にエネルギーを持った水分子は他の分子や原子にぶつかってエネルギーを与える。これを「摩擦熱」と表現しているのだろうか。これは単に熱が伝わった$${^{*15}}$$だけである。

 摩擦熱と説明しているページ$${^{*16}}$$には、水分子同士の摩擦と説明している場合、何と何との摩擦か明確になっていない場合がある。何れにしても電子レンジの中の水分子のエネルギーの直接の元は電磁波なので、「電子レンジは摩擦熱」という表現は不適切と考えるべきだろう。

*1 19991204 ガラス管ヒューズ
*2 電磁界ホームページ
*3 第116回『電子レンジ』2 page
*4 水処理入門-基礎編 水-:溶媒としての性質
*5 電磁波と物質の発熱の関係
*6 電気の本質
*7 展示室バーチャルミュージアム-ゾーン2 - テクノ体験ゾーン-電波ウォール-電界-磁界-図
*8 マクスウェル方程式(電磁気学まとめ)
*9 水分子の加熱原理(図の拡大図)
*10 Heat (Japanese)
*11 Specific Heat (Japanese)
*12 Energy quantum (Japanese)
*13 20000424 摩擦
*14 20031129 空気の摩擦
*15 熱の伝達
*16 Google 検索: 電子レンジ 摩擦熱

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