#229 酒税 - 今日のざっくりReturns

おはようございます!久しぶりの今日のざっくりです。
10月から酒税が改正になり、ビールにかかる税金が下がり喜んでいる方もいるのではないでしょうか。ということで、今日のざっくりは酒税についてです。

2019年の酒税による税収は1兆2710億円で税収全体に占める割合はおよそ2%となっています。

●2019年酒税の税収 ざっくり1.3兆円(全税収の2%)

10年前の2010年が1兆3893億で全体の3.2%を締めていたので、8%ほど減少しています。ピークは1988年(昭和63年)の2.2兆円で一旦減少し1994年に再度2兆円を超えて2.12兆円に達しますが、以後年々減少していて現在に至っています。ピークから比べると1兆円近く減少しています。

●10年で8%減少、ピーク(1988年)からおよそ1兆円減少

酒税の内訳を見てみるとビールが最も多く全体の42.7%、次に多いのがリキュールで15.5%、単式蒸留焼酎(8.2%)、連続式蒸留焼酎(6.9%)、発泡酒(6.8%)、スピリッツ(5.2%)、ウィスキー(4.7%)、清酒(4.4%)と続いています。
ビールと発泡酒を合わせるとほぼ半分に達するんですね。最近人気のある日本酒やウィスキーは5%未満なんですね。

ちなみに焼酎は製造方法によって分類されていて、単式蒸留焼酎はいわゆる本格焼酎や泡盛など、連続式蒸留焼酎は甲類焼酎(大五郎、トライアングル、純などが有名ですね)と表記されています。

●ビールが全体の43%、ビールと発泡酒でほぼ半分

税収に与えるインパクトがどのくらいになるかというと、東京大学公共政策大学院の試算によると、税収の変化は 1 ヶ月 1 世帯あたり 74 円~282 円の減少ということなので、500億から1700億円程度の減収になりそうです。

●酒税改正の影響 ざっくり500億〜1700億円の減収

今回の酒税の改正によってビールの税率が下がり、発泡酒は変わらず、新ジャンルの税率が上がっていますが、ちょっとだけトリックがあって実はビール定義が変わり、範囲が広くなっています。これまでは原材料が主原料:麦芽、ホップ、水、副原料:麦、米、とうもろこし等で麦芽比率が2/3(67%)以上と定義されていましたが、副原料に果実及び一定の香味料が認められ、麦芽比率も50%以上のものがビールと定義されています。

●ビールの定義の変更:ビールの範囲が広がる
 麦芽比率67%以上 → 麦芽比率50%以上
 副原料に果実及び一定の香味料も可

これによって発泡酒としては麦芽比率が高かった発泡酒や果実を原料に含むリキュールの一部がビールとなり税率が上がる銘柄も出ているのではないかと思います。

とはいえ、今回の改正で最終的(令和8年)にはホップ及び一定の苦味料を含む発泡性種類(ビール、発泡酒、新ジャンルなど)の税率は統一されるので税率の違いで云々言えるのもあと6年ほどのことになります。

ちょっとだけ酒税の歴史をみてみると明治8年に酒類税則が制定され、免許税的な性格の酒造営業税、売上税的な性格の醸造税、酒類請売(うけうり)営業税が課されています。(現在とは課税方法が異なります)税の中ではかなり古い方に入ります。(所得税や法人税より古いです)

明治時代には酒税の増税も重なり税収に占める割合も大きく、明治32年には酒税の国税に占める割合が35.5%となり、それまで国税の税収のトップであった地租を抜いて国税の税収第1位となりました。税収の1/3以上を締めていたんですね。明治37年に地租税に逆転されますが、明治42年に再びトップになり大正7年に所得税に抜かれるまでトップだったそうです。いやー驚きですね。

●明治32年に酒税が税収の35%となり税収のトップになり、以後明治〜大正にかけて16年間トップ。

酒税が主要な税収だったんですね。今は2%程度なので歴史の流れを感じます。

季節も秋から冬へと移りゆく中で美味しいものが増えてきましたね。連休明けですが、今夜は一杯行っちゃいますか。

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●2019年酒税の税収 ざっくり1.3兆円(全税収の2%)
●10年で8%減少、ピーク(1988年)からおよそ1兆円減少
●ビールが全体の43%、ビールと発泡酒でほぼ半分
●酒税改正の影響 ざっくり500億〜1700億円の減収
●ビールの定義の変更:ビールの範囲が広がる
 麦芽比率67%以上 → 麦芽比率50%以上
 副原料に果実及び一定の香味料も可
●明治32年に酒税が税収の35%となり税収のトップになり、以後明治〜大正にかけて16年間トップ。

note:
https://note.com/zakkuri/n/nd27906c6cec1

Source:

国税庁 酒のしおり(令和2年3月)
https://www.nta.go.jp/taxes/sake/shiori-gaikyo/shiori/2020/pdf/200.pdf

国税庁 明治前期の酒税
https://www.nta.go.jp/about/organization/ntc/sozei/tokubetsu/h21shiryoukan/02.htm

国税庁 酒税法等 の改正のあらまし
https://www.nta.go.jp/taxes/sake/kaisei/aramashi2017/index.pdf

東京大学公共政策大学院 船井俊宏 田中淳士「平成 29 年度酒税法改正によるビール類 の消費量と税収の変化の分析」
https://web.iss.u-tokyo.ac.jp/~matsumur/CS2017alcosf.pdf

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