#191 アルミニウム業界(2017/11/06)


神戸製鋼のアルミ製部材のデータ改ざんが問題になっていますが、そもそもアルミニウムの業界がどうなっているのか気になったので調べてみました。今日のざっくりはアルミニウムについてです。

アルミニウムの製造は大きく3工程に分かれていて、ボーキサイトという鉱石からアルミナ(Al203)が作られ、そのアルミナからアルミニウム地金が製造され、その地金から様々な製品素材・製品が作られていきます。

アルミニウムの製造3工程
・ボーキサイト→アルミナ
・アルミナ→アルミニウム地金
・アルミニウム地金→製品素材・製品

アルミニウムの地金には新たに生産された地金(新地金)とリサイクルによって再利用される2次(再生)地金がありそれぞれを原料として製品素材が作られています。

ではどのくらいのアルミニウムの新地金が生産されているかというと、世界の地金製造の生産量はおよそ5755万トン

・2016年の新地金の生産 ざっくり5800万トン

2016年の世界の銑鉄生産量が16億トンほどなので、鉄に比べ得ると1/30ぐらいの生産量となっています。

アルミニウム新地金の生産量が多い国TOP5は
1.中国  3187万トン
2.ロシア  345万トン
3.カナダ  321万トン
4.UAE   247万トン
5.インド  191万トン
以下、オーストラリア、ノルウェー、バーレーン、アメリカ、ブラジルと続きます。
中国が断トツのトップ。世界の新地金生産の55%を占め、2位ロシアの9倍ほどの生産量となっています。いやーすごいですね。

あれ、日本は?と思われた方も多いかと思いますが、現在、日本では新地金の製造(製錬)は行われていません。(えっ?!)
新地金の製造は第2次世界対戦後需要の拡大に従い順調に増加し1977年に119万トンのピークに達した後、2度のオイルショックによる電力コストの高騰により年々減少し80年代前半にはほとんどが撤退。(そういえば、日軽金が銀座7丁目にあった本社ビルを売却したのが1983年なので、その当時のアルミ業界の状況が伺えますね。(購入したのはリクルートでこの一件でリクルートの知名度が上がったと言われています))最後に残った日軽金の蒲原工場も2014年にアルミの製造を終了、80年に及ぶ製錬の歴史に幕が降ろされました。

一方、消費量TOP5は
1.中国   3164万トン
2.アメリカ  512万トン
3.ドイツ   219万トン
4.日本    174万トン
5.韓国    145万トン
以下、インド、トルコ、イタリア、UAE、ブラジルと続いています。こちらでも世界の消費量(5808万トン)の半分以上(54%)は中国で消費されています。(消費といっても製品素材(圧延板など)などであるため必ずしも最終消費(自動車や航空機そのもの)がその国というわけではありません)

・中国が生産・消費ともざっくり55%を占める

日本国内では新地金以外にも二次(再生)地金を加工の材料としいてその消費はほぼ半々となっています。2014年には加工の原料に使われる新地金(輸入)が210万トン、二次(再生)地金(輸入含む)214万トンでした。

・(国内)原料としては新地金と再生地金がざっくり半々

国内で加工される製品部材を用途別に見てみるとTOP5は
1.輸送   164万トン  
2.建設   53万トン
3.金属製品 48万トン
4.食料品  44万トン
5.電気機械 12万トン
となっています。はやり自動車や鉄道車輌、航空機など輸送関連に使われるのが飛び抜けて多いですね。製品部材の製造は409万トンほどなので、およそ40%が輸送用途ということになります。また、食料品はアルミ缶に代表されるアルミ容器になると思われますが、結構多いんですね。

・用途は輸送関係がざっくり4割

日本国内の主なメーカーを該当事業の売上高順に並べてみると

UACJ     4513億円
日本軽金属  4484億円
神戸製鋼   3233億円(含む銅) 
昭和電工   986億円

となっています。UACJって聞き覚えないなぁというかたがほとんどだと思いますが、これは2013年に古河電工系の古河スカイと住友軽金属工業が経営統合して誕生した会社で、その名前はUnited Aluminum Company of Japanの頭文字からとったものだそうです。(志の大きさが伺えます)

今日も気持ちのいい秋晴れになりそうです。今週も張り切っていきましょう!

Source:
経済産業省 2030年を⾒据えた⾮鉄⾦属産業戦略の概要 平成28年6⽉⾮鉄⾦属課
http://www.meti.go.jp/policy/nonferrous_metal/strategy2016/summary.pdf
UACJ 2016年度決算説明会資料
http://v4.eir-parts.net/v4Contents/View.aspx?template=announcement&sid=36208&code=5741
神戸製鋼 2016年度決算 IR説明会資料
http://www.kobelco.co.jp/ir/library/investor_meeting/2016/index.html
日本軽金属 2016年度決算及び経営計画の進捗について
http://www.nikkeikinholdings.co.jp/common/file/kessan/02message_from_ceo_201705/html/06.html
日本軽金属 沿革
http://www.nikkeikin.co.jp/company/nlm-enkaku.html
日本鉄鋼連盟 世界の銑鉄生産の推移 
http://www.jisf.or.jp/data/iisi/documents/summary_2016CY_R2.pdf

#今日のざっくり
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