実績に頼りすぎない楽譜の売り方

それが完全にわかってたらこんなに苦労はしてませんが。

それはさておき相変わらず吹奏楽業界とかいうただのクラシック音楽の中の一つの編成でしかないのにジャンルのごとく扱われる謎の音楽というニッチェストな業界における話です。

楽譜を売る、というのは、作家さんから大事な大事なお子様をお預かりしている以上、出版社が最優先で行わなければいけないことですし、それが利益になって会社が回るのですから、何はさておき楽譜を売ることは超スーパー必殺必要なわけです。

だがしかし駄菓子菓子、売り方にも色々ありまして、特に日本のこの業界では「実績」によって左右されるところが大きいように思います。作品の優劣はどうでもよくて、アマチュアの全日本吹奏楽コンクール(これを中心にこの業界は回っています)でより上位の大会で演奏されたかどうか、のような実績や、作家さんの人気という意味では吹奏楽コンクールの課題曲に選ばれたことのある作家さんがどうか、とか、そういうことの方が評価され、より演奏されやすい傾向にあるように見えます。(売れる傾向にある、と言えないのは違法コピーなどの問題を抱えているからです)

そうなると出版社の正攻法としては実績を前面に押し出すのが手っ取り早いわけです。まず間違いないやり方で、なおかつ音楽に詳しくなくても、ほかの吹奏楽作品を知らなくても、アホでも出来るプロモーション方法なので使い勝手も良いですね。

これはこれで作家さんも潤うので手法として否定はしないのですが、そういった実績の部分だけにスポットを当てて、作品としての本質的な部分を見ない見せない理解してない理解させないというのは、文化的な側面から見るとなかなか不健康なように見えます。

もちろん誰でも初めから出来るわけではないですが、プロモーションの方法として、実績とは別に作品の本質をもっと紹介していく方法があっても良いかと思いますし、そういった発信が出版社側から増えていくと良いなと思います。

今売れるものを今売るのも大事ですが、育てるのも大事です。商品も、スタッフも。

レビュー書けない、文章書けない。そういって逃げる人もいるでしょうが、書きもしないで書けないというのは、泳ぎ方を知らないからプールに入らない、と同じくらいもったいない考え方です。誰だって最初は泳ぎ方を知りません。生まれた時から正しい泳ぎ方を知ってた人いませんよね。バタフライしながら産まれてきたわけじゃない。やってるうちに、先生とかに「こうしてごらん」とか言われて、気づいたらオリンピックで金メダルを取ってたりするわけです。

作品の紹介も同じです。最近は自社の作品を実績以外の言葉で紹介できる人が減っているような印象を受けます。これはとても悲しいことです。実績に頼りすぎる、実績だけで売る、というのは、実績がなければ売れない、と同じです。実際に「実績がなければ売れないから実績のある作品だけを取り込もう」というスタンスの出版社もあるかもしれませんが、まあ音楽文化的に考えてその活動に何の意味があるのか僕にはとんと理解できないですね。

いま調子が良い会社でも、次の世代のスタッフの中に作品について実績以外で語れるスタッフが育っていかないと、「良い作品なのに売れないねえ」という状況は変わらないでしょう。

実績で語らない語り方、というのを、最初はわからないかもしれないけど、まずもっと沢山の会社で実践してみてほしいなと思います。

物事は森羅万象、限りなく球体に近い多面体です。見る角度を変えれば全く違う魅力に気がつくでしょう。これは「切り口を変える」という言い回しと似ていますね。そういうことよ。

実績に頼らない楽譜の売り方としてはまずシンプルにいくつかあります。
・その作品がぴったりハマりそうなシチュエーションでレコメンドする(演奏会のオープニングにピッタリとか)
・作品そのものの魅力を語る(旋律が美しいとか構成がユニークだとか)
・編成上の特異性で語る(オプショナルの楽器が多いので人数が少ないバンドでも多いバンドでも演奏できるとか、ほかの作品ではあまり使われない楽器が使われているとか)

このように実績とは関係ないところでその作品について語るための切り口、立ち位置というのはいくつもあります。単純に演奏側のことは無視して自分が感じたことをダイレクトに書いてもいいわけです。「これは書いてはいけない」なんて法律はないので自由な発想で自由に書けばいいし、経営者は社員にそれを信頼して任せられる雰囲気、社員がそれを率先して行いたくなる雰囲気を作らないといけません。

実績に頼らずに売る方法、というのは、実績以外の作品の魅力を理解して、多面的に何度も切り口を変えながら伝え続けるということです。実績に頼る場合に比べて時間はかかりますが、これが出来るようにならないと、作家のクリエイティビティを最大限に発揮したような作品は産まれにくくなります。書いても売れないから。

コンクール中心の業界で大いに結構ですが、出版社がそれに流されて楽な方へ楽な方へと舵を切っていると、いずれは渦の中に引き込まれて沈没、ともなりかねません。

実績に頼らない売り方、一緒に考えていきましょう。

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梅本周平

ONSAの屋号で個人事業主として吹奏楽や管楽器打楽器を中心に、情報サイト「Wind Band Press」、楽譜出版の「Golden Hearts Publications」、セレクトショップ「WBP Plus」などクラシック音楽関連の事業を行なっています。
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