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カフェ・グレ

もう20年以上前、学生時代に町田(という東京都の一角)に住んでいた。

ヒマなときはよく町田駅まで行ってブックオフやディスクユニオン、レコファン、DCDなど中古CDが置いてある店を一通り巡って掘り出し物を探すのが定番であった。

町田駅といっても意外と栄えている範囲が広く、小田急側にあったレコファンから、町田図書館よりも先にあったDCDの間の距離を考えると相当な移動をしていた。

若いといっても歩きまわれば疲れるもので、喫茶店で休みたい。

当時も町田駅にはすでにチェーン店を含めて多くの喫茶店があったのだけど、僕がよく行っていたのは「カフェ・グレ」である。

メインストリートから1本裏の、それはそれで栄えている道にあるビルに超狭い階段があり、その階段を昇るとグレがあった。

調べてみたところ、いまでもあるそうです。

ここが雰囲気が良かった。店内にはバロック音楽が流れていて、僕が行くときは午後だったけどいつも静かで、お客さんもワイワイガヤガヤとするタイプの人にはほとんど出会ったことがなかった。

僕はカウンターに座るときもあったけど大体の場合はテーブルに一人で座って、コーヒーがメインのお店なんだろうけど「シェパード・ムーン」という名前の付いたカモミールベースの紅茶と、シフォンケーキのセットを頼んでいた。

この「シェパード・ムーン」がアイスでもホットでもどちらでもめちゃくちゃうまい。シフォンケーキもうまかったけど「シェパード・ムーン」のために通っていたといっても過言ではない。

客同士お互い邪魔しないように静かな空間を守りつつ、それぞれのしたいことに集中する。僕は松本零士さんの漫画を読み、ある人は楽譜を広げていた。

当時はそんな雰囲気の店だった。ご夫婦でやられているお店で、当時はアルバイトもいなかった。

社会人になり、僕が杉並に引っ越すことになって、町田まで来るのはしんどいなあと思ったので、カウンターに座ったときに、接客を担当していた奥様に、もうすぐ引っ越すこと、なかなか来る機会がないのでシェパード・ムーンの茶葉を売って欲しいという旨を相談したのだけれど、あいにく茶葉の販売はされていなかった。「たまに飲みに来てください」とのことだった。

結局それ以降、1回か2回くらいしか行ってないのではないかと思う。町田に行く用事がまずなかった。

レビューを見ると最近は混雑時など色々あるようだけど、わざわざレビュー書く人って感動しているか怒っているか、大きく感情が動いた人だと思うので、まあ色々あるようです。おおむねレビューは良好。

いまでもシェパード・ムーンの味は覚えている。

レビューを見る感じ、あまり変わってなさそうなので、近くの方はぜひシェパード・ムーンを飲みに行ってみてください。

ただ、レビューによると最近はぶっきらぼうな店員がいるらしく、「俺は客だぞ!」という「お客様は神様だから俺は神」というタイプの人には合わなそうです。

まあそういう人はどんな店に行っても怒ってるんだと思うけどね。

お客様が神様かどうかを決めるのは客じゃなくて売る側だからね。この辺勘違いしてる人が多い印象だけど。

ところでシェーンベルグに作品で「グレの歌」という曲がありますが、スペルを見る限りは関係なさそう。(グレの歌はGurre-Lieder、カフェ・グレはcafe gres)

一時期カフェ巡りにハマっていたので、他のカフェの話もまたいずれ。

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