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広島ウインドオーケストラ 30周年記念 第60回定期演奏会に行ってきました

一夜明けて。
昨日、広島ウインドオーケストラの演奏会に行ってきました。
今年は30周年記念イヤーらしく、その後半の演奏会。
会場は広島市中区のアステールプラザです。僕の家からまあ頑張れば歩いていける。
プログラムは、
森田一浩 十月のマナ(HWO結成10周年記念委嘱作品)
西村 朗 秘儀Ⅴ《エクリプス》
岩井直溥 あの水平線の彼方に(岩井直溥誕生100年記念)
D.マスランカ 交響曲第8番
です。
プログラムを見ただけだと、「知らん曲ばかりや」とか「どれもYouTubeとかで聴いたからもういいか」とかなりそうな気がしますが、演奏会のプログラミングはどの曲をどの順で出すかも含めて非常に重要です。
この並びでこの曲たちを聴いたことのある人はそんなにいないか全くいないかその辺じゃないでしょうか。僕も曲名はわかるのですが普段仕事以外で吹奏楽を聴かないものですから、どんな曲か記憶がなくて新鮮味がありました。

広島ウインドの演奏会を聴きに行くのは久しぶりで、コロナの間まったく行けてなかったので3年ぶりとかです。

「十月のマナ」の頭から、今回の節目の演奏会にかける気合というか、集中力が高いのを感じましたし、何より数年ぶりに聴いたらめちゃめちゃ良いバンドになっていた。
もともと好きなバンドではあったのですが、演奏面での伸び代がかなりあって、毎回そこが物足りなさにもつながっていました。
今回もまだ伸び代はありますが、気になるような物足りなさはなかったですね。

プログラムもとても良くて、前半3曲は邦人作品ですが、どれも表情が違う作品で、なおかつ緻密なので、これは若い作家さんに聴いて欲しかったなと思うところです。
なお十月のマナは広島ウインドの10周年のときの委嘱作品で、再演となります。色々なところで言ってきましたが「初演も大事だけど再演も大事」ということで、やっぱり供給過多な業界の中で「あまり再演機会のない作品を再演する」ということにもう少しリソースを割いてもいいのかなという気がします。
エクリプスは、西村朗さんへの追悼演奏にもなってしまいましたね。西村さんが亡くなられなかったら、広島ウインドの委嘱の「秘儀」の10作目が作られるはずでした。今回のエクリプスはアマチュアからの委嘱作品ですが、割と容赦ない作品で、プロユースな感じがあるので、昨夜の見事な演奏はきっと西村さんにも届いていると思いたいです。
岩井さんの曲は50年くらい前の曲ですが、「ポップス」ではなくて、万華鏡のような実験的な作品で、これもかなり集中しないと展開が展開したこと(!?)を提示できないと思うので、そういう意味で凄まじい演奏でした。

そして後半はマスランカのみ。46分くらいの曲ですが、さすがにみなさん「さらに」気合いが入っておられて、この曲をこのレベルの演奏で聴けたことはとても嬉しいことでした。
マスランカは曲を通じてイエス・キリストに触れようとしたのではないかと僕は考えているのですが、昨日の8番の演奏にはそうしたある種ふっと上に持ち上げられるような美しい響きが随所にあり、「ああ、来てよかったな」と思った次第です。特にサクソフォンセクションは最高でしたね。あっという間の46分でした。

奇しくもというかなんというか、全作品オリジナルなんだけど作曲家が全員もう亡くなっていて、不思議な感じがしましたね。みなさん割と最近(ここ10年くらいかな)に亡くなっているので、惜しいなあという感じがあります。西村朗さんにも森田一浩さんにも聴いて欲しかったな。

これまでに僕が聴いた広島ウインドの演奏ってそんなに多くないのですが、その中でもベストの演奏で、本当に素晴らしかった。

コロナ前は業界関係者とかオタクの人とかそういう人がよく会場にいる感じでしたが今回はそういう方は見かけず、徐々に地域の方や地域の後援者の方に受け入れられてきたのかな、期待されるようになったのかな、という客層の変化というのも感じた気がして、「知る人ぞ知るマニアックバンド」ではない地域のプロ吹奏楽団としてこれからはますます活躍されていくのではないかなあと思いました。

プログラミングがマニアックだろうがなんだろうが、ひとつコンセプトを持ってそれを続けることの重要性もあると思います。
広島ウインド(と下野さん)の場合は「邦人作品」と「交響曲」ですね。
これを続けてきた効果は出ているんじゃないかなと思います。
広響の「ディスカバリーシリーズ」みたいなもんですね。

マスランカが終わった後には泣いている団員もちらほらいて、もしかしたら創設期からのメンバーかもしれませんが、30周年ということで万感の思いがあったんだと思います。
この辺りの「少しアマチュアっぽい」ウェットな感性というのも、広島ウインドの特徴なのかもしれませんね。「アマチュアの好奇心や探究心とプロの矜持」この組み合わせはこれからも大事にしてほしいなと思います。

とにもかくにも素敵な夜でした。

なお、ホールを一歩でたらそこはいつもの広島で、バイクが爆音ブンブブンしていて、無灯火の自転車がたくさん走っていました。

そう、ここはデンジャラスシティヒロシマ…

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