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型月円卓好きに贈る『アーサー王物語』のススメ(218):死ぬほど長いトリストラム卿の冒険~ディナダン卿、トリストラム卿を罵る~

前回までのあらすじ:パロミデス卿、勘違いで絶好調。

ディナダン卿、トリストラム卿を罵る(第71~72章)

エクター・ド・マリス卿はラーンスロット卿が恥辱を受けているのを見て、パロミデス卿を突き落とした。
そのエクター・ド・マリス卿をトリストラム卿が突き落とす。


ラーンスロット卿「よく聞けよ。そなたは今日、名誉を重んずる騎士ならば、勝ち抜き戦でも馬上槍試合でもやらない恥辱をわたしに与えてくれた。だからお返しをするぞ。 さあ、覚悟しろ」
パロミデス卿「ああ、どうぞお慈悲を、気高い騎士どの。わたしの不注意な行為をなにとぞお許しください。わたしのやった騎士らしからぬ振る舞いを、どうぞお許しください。
あなたと戦っても、勝ち目はありません。わたしは今日は自分の一生のうちで、ほかにないくらいの働きをしました。
ですのでこの世でもっとも優れた騎士どの、どうか今日のところはわたくしをお見逃しください。そうすれば命ある限り、あなたに仕える騎士になるでしょう。
しかし今わたしの名誉を取り上げるなら、わたしが生涯の前にも後にも得たことのないような名誉を取り上げることになるわけです」
ラーンスロット卿「なるほど、わかりました。事実あなたは今日はまったく素晴らしい活躍をしました。それも誰への愛のためなのか、ある程度はわかっています。
愛は人に不思議な力を与えるものです。わたしの大事な貴婦人がここにはおられないが、もしおられたなら、パロミデス卿、あなたはそうやすやすと名誉を持ち去れなかったでしょう。
だけどあなたの愛は、よく気をつけて秘密にしておくのですね。トリストラム卿に知られたら、後悔しますよ。
わたしがその人のために戦う方がそこにいないのだから、今日はそなたが名誉を勝ち取ったことにしましょう。
実際あなたの今日の活躍ぶりを考えれば、あなたから名誉をとりあげたところで、わたしの名誉にはならないでしょうから」


こうしてラーンスロット卿はパロミデス卿を許したのだった。
この後も試合が続いたのだが、無事パロミデス卿は褒賞を手に入れた。

そして試合後、トリストラム卿はディナダン卿にイソード王妃を迎えに行かせる。
ここで赤の鎧兜の騎士がトリストラム卿だとわかり、パロミデス卿、ディナダン卿、ガレス卿は喜んだ。
まあ行方不明になった状態だったからな。そりゃ心配するだろう。


ラーンスロット卿「王よ。パロミデス卿が緑の騎士だったとしたら、今日受けた名誉は当然でしょうね。
一度だって休みもせず、着替えだってしませんでした。最初に戦い始め、最後までがんばりました。
だけど、もっと強い騎士がいたのです。このことはこの勝ち抜き戦が終わらぬうちに、いやというほどわかりますよ」
ディナダン卿「今日はいったいどうされたのですか? パロミデス卿の強さは今日、弱まるどころか強さが二倍になっていましたよ」
だけどトリストラム卿よ、あなたは一日じゅう眠っているようでしたよ。あなたを臆病者と言いましょうか」
トリストラム卿「ディナダン卿。わたしは生まれてからこの方、誰にも臆病者と言われたことはない。
よく聞くのだ、ディナダン卿よ、たしかにラーンスロット卿はわたしを落馬させたが、それでもわたしは自分が臆病者だとは思わない。ラーンスロット卿は例外かもしれない。
いいか、ディナダン卿、もしラーンスロット卿が自分を信じて戦えば、いま生きているそのような騎士よりもきっと強いに違いない。
その上、寛大であり人物が大きいし礼儀正しい。最上の騎士と言いたいね」


<ツッコミ>
トリストラム卿、顔真っ赤じゃん。
実際キレてたらしいが、ディナダン卿は罵ってトリストラム卿を奮い立たせようとしたらしい。


パロミデス卿「本当に、ラーンスロット卿の礼儀正しく強くて優しい高貴な騎士ぶりは、他に比べようがありません。
今日もわたしはラーンスロット卿に対して無礼な騎士らしくない振る舞いをしてしまいましたが、ラーンスロット卿はそのわたしに対して、騎士らしく礼儀正しい振る舞いをされたのです。
もしもわたしがラーンスロット卿にしたようにわたしに対して容赦なく振る舞われたなら、今日わたしは名誉を受けられなかったでしょう。
ですので、わたしの命ある限り、ラーンスロット卿に忠誠をつくします」


<ツッコミ>
なるほど、これがあったからパロミデス卿は円卓が二つに割れた時にラーンスロット卿側についたんだな。
ラーンスロット卿のとんでもない人望が今後の悲劇を起こすと思うと悲しくなるな。

では、また次回。

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