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型月円卓好きに贈る『アーサー王物語』のススメ(243):アーサー王の死後~グィネヴィア王妃とラーンスロット卿のその後~

これは『アーサー王物語』第5巻(22巻第7~13章)に収録された話である(タイトルは私命名)。
アーサー王の死後、その後日談である。

グィネヴィア王妃とラーンスロット卿のその後(第7~8章)

ロンドン塔に閉じこもったグィネヴィア王妃のところにもアーサー王、モードレッド卿の死の知らせが届いた。
すると侍女5人と一緒にアームズペリーに向かい、そこで修道院に入った。厳しい苦行を自らに課したのだ。
そのうち女子大修道院の長にまで出世したという。

<ツッコミ>
もっと早くやっておけばこんな事にならなかったのでは……とは言ってはいけない。

フランスにいるラーンスロット卿にも、遅れて知らせが届いた。だが、距離があるのでその知らせは些か古い。
具体的には「アーサー王とモードレッド卿が一度戦った」までの情報だ。この情報を聞いたラーンスロット卿はキレた。


ラーンスロット卿「ああ、なんと悲しいことだろうか。二重の裏切り者モードレッド卿を、この手から逃してしまったとは! 今となっては残念でならない。
われらがアーサー王にひじょうな恥を与えたのだからな。ガーウェイン卿のこの痛ましい手紙を見るかぎり、神よ、彼の魂に慈悲を与えたまえ!
われらがアーサー王は、ひじょうな窮地に陥っておられたようだ。ああ、わたしを騎士にしてくださった高貴な王が、自分の国にいるのに家臣に痛めつけられることを、生きているうちにこうして聞こうとは。
また皆もわかるだろうが、ガーウェイン卿が自分の墓を訪れてくれ、死ぬ直前に書いてよこした悲しい書簡。ここにある痛ましい数々の言葉は、わたしの心から決して消えることはないだろう。本当にこの世に生を享けて見たなかで、じつに誠の騎士だった。
それなのに、わたしはこのガーウェイン卿をはじめ、立派な騎士であるガヘリス卿や、また真に高貴な騎士ガレス卿を殺すなどの不運を背負ったとは、ああ悲しい、なんという不幸なめぐりあわせと言おうか。
そしてああ、なんと不運なことか、わたしがあの裏切り者モードレッド卿をやっつける機会に恵まれなかったとは!」
ボース卿「もう愚痴を言うのは、おやめくだされ。まずガーウェイン卿を討った敵に復讐して、それから彼の墓を訪れてください。次にわがアーサー王と王妃グィネヴィアの敵を討つのが良いでしょうね」
ラーンスロット卿「おまえに礼を言うぞ。いつもおまえはわたしのことを尊敬してくれているのだからな」


<喜びの声>
ようやくわかってくれたかラーンスロット卿!!!
そう、ボース卿はとっても頼りになるんだ!!!!

そんなわけでラーンスロット卿は早速イングランドに向かった。
だがドーヴァーの人々にアーサー王の行方を確認すると、既に戦いが終わっている事を聞かされたのだ。


ラーンスロット卿「ああ、なんと悲しいことだろう。わたしの心にこれまでこんな悲しい知らせがあったことがない。ではどうか、まずガーウェイン卿の墓に案内されたい」


墓に案内されたラーンスロット卿は、墓の前に跪いて泣いた。そして喪服姿でガーウェイン卿のために祈ってくれとお金を渡しながら頼んだり、献金をしたりしながら三日三晩泣いて祈りを捧げた。
三日目、ラーンスロット卿は王や領主、騎士などを呼び集めて言った。


ラーンスロット卿「諸公たちよ、この国までご同行くださり感謝いたします。だがどうもわれわれは来るのが遅すぎたようです。このことはわたしの生涯において、悔いとして残ることでしょう。だが誰も死には逆らえません。
ですからこうなったからには、わたしはわれらがグィネヴィア王妃を探しにまいりましょう。聞くところによれば、王妃は大きな苦痛と大きな不安にあわれたらしいが、それでも西の方角に逃れたとのこと。
ですので、皆さんはここで待っていてほしいのです。もしわたしが十五日以内に戻って来なかったなら、自分の部下たちを連れて船に乗り、自分の領土にお帰りください。わたしはいま申しあげたとおりにいたしますので」
ボース卿「われらのラーンスロット卿よ、どうなさろうというお考えなのですか? このような時に、この国をたった一人で馬を進められるとは。いいですか、味方など一人だっていないのですよ?」
ラーンスロット卿「そうかもしれないな。そなたはここにいて、好きなようにしていてくれ。わたしは旅に出かける。若者であっても誰一人、わたしについて来てはならない」


こうしてラーンスロット卿は出発した。

<ツッコミ>
ガーウェイン卿、生きている頃よりチヤホヤされてるかもしれん(小声)。
ボース卿は正論を言っているが、きっとラーンスロット卿は一人になりたいんだろうな。

では、また次回。

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