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型月円卓好きに贈る『アーサー王物語』のススメ(234):円卓の崩壊~アーサー王VSラーンスロット卿~

前回までのあらすじ:みんな悲しい時に気絶しがち。

アーサー王VSラーンスロット卿(第11~12章)

15週間と言ったが、1ヶ月=4週間と考えると、だいたい4ヶ月ほどである。
事が起こったのが5月だったので、もう9月だ。季節は秋、収穫の時期となっている。
そんな時期、ラーンスロット卿は城壁から顔を出してアーサー王とガーウェイン卿に呼びかけた。


ラーンスロット卿「よくお聞きください、お二人とも。このように包囲していても、まったく無駄です。こんなことをしていても、侮蔑と不名誉を得るだけで、どんな名誉も受けられません。もしわたしが味方の立派な騎士たちと出撃する気になりさえすれば、瞬く間にこの戦いは終わるでしょうな」
アーサー王「出て来い。そうする勇気があるのなら、この野原の真ん中で、そなたと対決すると約束しよう」
ラーンスロット卿「とんでもありません。わたしを騎士にしてくださった、もっとも気高い王と剣を合わせるなんて」
アーサー王「もう今は、口だけの追従は結構だ。いいかな、嘘はつかぬ。死ぬまでずっと、私はそなたの運命的な敵になったのだ。
というのも、そなたは私のわが一族の気高い者たちを殺してしまった。彼らはもう二度と、私のもとに帰っては来ない。
それにそなたがわが王妃と共寝をしたり、何年ものあいだ自分のもののように扱った上、まるで私を裏切るかのようにカずくで、わが王妃を私から奪ってしまった」
ラーンスロット卿「もっとも気高き王よ、どのようにでもお好きに言われれば良いでしょう。わたしが王と戦うつもりがないことはおわかりでしょうから。
王の立派な騎士をわたしが殺したと言われましたが、それはそのとおりで、まことに残念です。しかしそれは自分の命を守るために、戦わざるをえなかったからで、そうせねば黙ってわたしが殺されるところだったのです。
それからわがグィネヴィア王妃についてですが、おそれながら申しあげますが、ご自身とガーウェイン卿を除いて、わたしが王を裏切ったと証明するために、わたしと決闘する騎士などこの世には一人もいないでしょう。
またわたしが王妃を何年もわがもの顔に扱っていたと言われたいのなら、それに対してはお答えいたしましょう。
グィネヴィア王妃はこの世のどんな女性より、その夫に対し誠実であり、王に対して誠実であることを、この世に生あるどんな騎士とも体を張って立証いたしましょう。
わがグィネヴィア王妃は、この世のいかなる女性がその夫に対して誠実であるよりも、王に対して誠実であることをこの手で実証するつもりです。
たしかに王はどの騎士よりも、喜んでわたしを引き立て大事にしてくださいました。それなのでわたしも力のかぎり、王妃の愛を受けられるに値するように努めてきました。
王はたびたび、ご自分の怒りにまかせて、王妃の火あぶりの刑に同意し、殺そうとされました。そうした時には、わたしが王妃のために戦うこととなり、王妃の敵は別れる前に自分の非を告白し、それで王妃はいつも潔白になられたのです。
そのような時には、アーサー王よ。わたしが王妃を火あぶりの刑から救うと、いつでも王はわたしに好意を示され謝意を言われ、わたしの立派な主であろうと、いつも約束されました。
でも今回は、どうも王はわたしの正しいご奉仕に対して、不当な報いをなさっておられるようです。
そして王よ、王妃が火あぶりの刑になるのがわたしのせいだと言われるのに、もしわたしが黙っていたとしたなら、わたしの騎士道にとって面目がなくなるではありませんか。
これまではわたし自身のためではなく、他の人のことで王妃のために戦ってきたのですが、今回は王妃の正義の戦いのために、王妃に代わって戦ったということが、今まで以上に必然だと思うのです。
だから立派で慈悲深い王よ。王妃をどうぞお引き取りになってください。王妃は誠実で、高潔であられます」
ガーウェイン卿「何たることか、おまえという奴は! この偽りの臆病騎士めが。わたしはおまえに教えてやる。よいか、わが主人でありわが叔父であるアーサー王は、王妃とおまえとを捕らえ、二人ともに殺すなり助けるなり、意のままになろう」
ラーンスロット卿「そういうこともあるでしょうね。だけどいいですか。わがガーウェイン卿よ。もしわたしがこの城から出撃する気になるなら、わたしと王妃とを捕とらえるのは、今までの激戦に勝利した時より難しいことになるでしょうね」
ガーウェイン卿「大袈裟なことを言うな。わが王妃については、あのお方の恥をさらすようなことは言わぬ。だが、この偽りの臆病騎士めが。
いったいなぜ一族の誰よりもそなたを敬愛していた立派な弟のガレス卿を、なぜ殺したのだ? ああ、悲しい、弟はそなたの手で騎士になったのではないか。それなのに、なぜあんなにもそなたを敬愛していた弟を殺したのだ?」
ラーンスロット卿「言いわけをしたところで役に立たないでしょうが、しかし、神と高貴な騎士団にかけ、あの時はわきめもふらずにいたので、もし甥のボース・ド・ゲイネス卿であったとしても、殺していたかもしれないのです。
それにしても、なんと不運だったことでしょう。ガレス卿とガヘリス卿がいたのがわからなかったなんて!」
ガーウェイン卿「嘘だ。この臆病騎士めが! わたしへの恨みから、二人を殺したのだろう。だが、よいかラーンスロット卿よ、わたしはそなたと戦うぞ。この世に生きているかぎり敵なのだからな」
ラーンスロット卿「それは残念です。あなたがそのように手を差し出すことなく和解するつもりもないなら、ガーウェイン卿よ、これはどうにもならないということが、よくわかります。
もしもあなたがそのように言い張らなければ、わが主であるアーサー王のご慈悲は、すぐにでもいただけたろうことは疑いないのですが」
ガーウェイン卿「そうかもしれない。だがこの偽臆病騎士め、そなたは長いことわたしや多くの者たちに猛威を振るい、わたしの立派な騎士たちを大勢滅ぼしたではないか」
ラーンスロット卿「お好きなように言われるがよい。だがガーウェイン卿よ、あなたが言うように、わたしが自分から陰謀で、そなたの立派な騎士を大勢殺害したと言われたり、公然と証明されたりすることなど、あろうはずがありません。
わたしは自分の身を守るためだけで、つまり身を守る以外に、そんなことをしたことなどないのですから」
ガーウェイン卿「ああ、この偽りの騎士め。そなたはラモラック卿のことが言いたいのだな。いかにも確かにラモラック卿は、わたしが殺した」
ラーンスロット卿「いや、あなたが一人で殺したのではありません。そうすること は、あなた一人の手にはあまったはずです。ラモラック卿はあの若さで、キリスト教徒のなかでも最高の騎士であり、彼の死は本当に残念なことです」
ガーウェイン卿「まあまあ、ランスロット卿よ。ラモラック卿のことでそなたが責めるのなら、そなたをこの手から逃亡できぬように追い込むからな」
ラーンスロット卿「そのようにあなたはなさるでしょうね。わたしをつかまえたら、きっとあなたは容赦しないでしょう」


<ツッコミ>
ラーンスロット卿、天然煽りニストか?????????????
当人は本気で仲直りしたくて言っているんだろうが、言っている事全てが相手をキレさせる発言になっている。
人心無(人の心無いんか?)もいいところだ。
もうどこもかしこもひどいが、特にひどいのは「でも今回は、どうも王はわたしの正しいご奉仕に対して、不当な報いをなさっておられるようです」というくだりだろう。
「死んだ人間が生き返ることはないのだ。何時までもそんなことに拘っていないで、日銭を稼いで静かに暮らせば良いだろう」という無惨様のセリフレベルにひどい。キングオブお前が言うな。
「グィネヴィア王妃がこの世のいかなる女性よりもアーサー王に誠実」という発言にもびっくりだ。20年以上夫の部下と不倫してた女のどこに誠実さがあるのだろうか。
それともこの世のいかなる女性は皆グィネヴィア王妃より長期間不倫をしていると、そう言いたいのだろうか。世紀末すぎる。
あと「ボース卿でも殺してたかも」発言は一生根に持つからな、覚えてろよ(ボース卿が甥になってるのは二回目なので見逃す)。

実際、アーサー王はグィネヴィア王妃さえ取り戻したらラーンスロット卿と仲直りしたかったらしい。
だがガーウェイン卿はそうさせうようとしなかった。
ガーウェイン卿は多くの仲間たちに「偽りの臆病騎士め」とラーンスロット卿を罵らせたのだ。

<ツッコミ>
まあそりゃあそう。
むしろ許す気があるアーサー王の心が広すぎる。

それを聞いたボース卿、エクター・ド・マリス卿、ライオネル卿はパロミデス卿やらヴェイン卿、アリー卿などを呼び寄せて皆でラーンスロット卿のところに行って言い出した。


皆「ガーウェイン卿があなたに対して、あのような軽蔑の言葉を放っているのを聞くと、かえってわれわれのほうこそ彼を非難したくなります。
ですので、われわれの奉仕をお望みならば、もうこれ以上、われわれをこの城壁の中に閉じ込めておかないでください。
簡潔に申しあげますと、われわれは城から出て、彼らと戦いたいのです。ですのに、あなたはまるでおじけづいている人のように、丁寧な物言いをしていますけれど、それは何の役にも立ちはしないのです。
よく考えてください、ガーウェイン卿はあなたがアーサー王と仲直りすることを、絶対に許さないでしょうね。
ですから戦う勇気をお持ちなら、ご自分の命と正義のために、どうぞ戦ってください」
ラーンスロット卿「何と悲しいことだろう。この城から出て、王の軍隊と戦うなどとは、まったく気が進まぬことだ」


<ツッコミ>
まあうん、そうだね。もう覚悟決めて戦えよラーンスロット卿。
少なくともラーンスロット卿についてきた連中(特にボース卿辺り)は「ラーンスロット卿の敵はかつての味方であろうと殺す」くらいの覚悟持ってる感じだよ。
君だけだよ戦いたくないってウジウジしてんの。

そんなウジウジラーンスロット卿はアーサー王とガーウェイン卿に叫んだ。


ラーンスロット卿「王よ、わたしはこのように戦いの場に出るよう要求され、強いられております。ですのでアーサー王よ、それにガーウェイン卿よ、どうぞ戦場に出ぬようにお願いいたします」
ガーウェイン卿「ではわれわれに、どうせよと言うのか。この戦いは、そなたと王との間のものではないのか?だがまた、弟ガレス卿の死のためというなら、そなたとわたしの戦いでもあるのだ」
ラーンスロット卿「それではわたしは、戦わざるをえませんね。ではよろしいかな、アーサー王とガーウェイン卿よ。わたしたちとあなた方とが戦えば、きっと後悔することになるでしょうね」


<ツッコミ>
なんで「戦いをやめようとしない味方側も敵側もどうかしてる」みたいな態度なんですか!?!?!?!?
もとはといえばあんたと王妃の不倫のせいなんですけど!?!?!?!?

まあこういうわけで戦う事になった。ガーウェイン卿はラーンスロット卿をぜってー殺してやろうと張り切り、多くの騎士をけしかけようと準備している。
一方のラーンスロット卿は、アーサー王とガーウェイン卿は殺すなと全員に言い聞かせていた。

<ツッコミ>
他の騎士もかつては味方だったんだけど、そっちは殺していいんですか???
あのさあ……ラーンスロット卿さあ……。

では、また次回。

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