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型月円卓好きに贈る『アーサー王物語』のススメ(201):死ぬほど長いトリストラム卿の冒険~モルガン・ル・フェの暗躍~

前回までのあらすじ:アレクサンダー卿がモルガン・ル・フェに連れていかれた。

モルガン・ル・フェの暗躍(第37~38章)

そこでモルガン・ル・フェはアレクサンダーを介抱してくれたが、相当痛かったらしい。
モルガン・ル・フェが翌朝やってきた時にアレクサンダー卿は苦痛を訴えた。
別の塗り薬をモルガン・ル・フェが塗ると痛みはなくなった。
そこに城の乙女がやってくる。


乙女「この騎士どのとわたくしが結婚できるように助けてください。このお方は自分の手でわたくしを勝ち取ったのですから」
モルガン・ル・フェ「わたしがどんな事をするか、見ていらっしゃい」


モルガン・ル・フェはアレクサンダー卿のところへ行き、この乙女の願いを退けるよう命令した。


モルガン・ル・フェ「もしこの乙女があなたと結婚したいと言ったらの話ですよ。この女はあなたにふさわしくないのです」
(やがて乙女がやってきて、アレクサンダー卿に結婚してほしいと頼む)
アレクサンダー卿「乙女よ。あなたの気持ちはありがたいと思います。だがわたしはこの国で結婚するつもりはないのです」
乙女「では騎士さま。わたくしと結婚するおつもりがないのならば、わたくしを勝ち取った騎士として、わたくしがこの国のある騎士と結婚することをお許しください。
その方は長いことわたくしの友人であり、わたくしを何年ものあいだ愛していてくれたのです」
アレクサンダー卿「心からそれに賛成いたします」


その結婚相手の騎士、ジュリン・ル・グロス卿はすぐに乙女と結婚した。
するとモルガン・ル・フェはアレクサンダー卿のもとへやってきて、馬担架に乗せ三日三晩眠り続ける薬を飲ませた。
こうしてアレクサンダー卿をラ・ベル・リガードという自分の城に連れて行ったのだ。
そして起きたアレクサンダー卿の前に姿を見せたモルガン・ル・フェは元気な身体になりたいか尋ねた。


アレクサンダー卿「ええ、誰が病気でいたいと思うものですか。元気になれるものならね」
モルガン・ル・フェ「それなら騎士道にかけて誓いなさい。十二か月と一日の間、この城の区域からは出ないと約束するのです。
そうすれば元気にしてあげましょう」
アレクサンダー卿「承知しました」


約束したアレクサンダー卿はモルガン・ル・フェのおかげで元気になったのだった。
だが元気になったアレクサンダー卿はその誓いを爆速で後悔し始めた。
マーク王に復讐できないからだ。

そこに乙女がやってくる。ペイズの領主の従姉妹で、モルガン・ル・フェの従姉妹でもある。
このラ・ベル・リガード城の正当な相続人は本来この乙女だったらしい。
この乙女が城に入ると、アレクサンダー卿が寝台の上で悲嘆に暮れていた。


乙女「騎士どの、もし陽気な気分になりたいのでしたら、よいお知らせができると思います」
アレクサンダー卿「さて、もしよい知らせが聞けるのなら嬉しいことです。いまわたしは自分がした誓いでかえって閉じ込められているのですから」
乙女「よく聞いてください。あなたはたしかに幽閉の身です。悪いことにわたくしの主人であり従姉妹でもあるモルガン・ル・フェ王妃は、気ままな楽しみのためにあなたをここに閉じ込めているのです」
アレクサンダー卿「何ということを。神よ、守りたまえ。あの女にそんな楽しみを与えるくらいなら、男の一物を切り落としたほうがましだ」
乙女「神よ、助けたまえ。もしもあなたがわたくしを愛してくださり、わたくしの言うとおりにしてくださるなら、あなたを自由の身にしてあげましょう」
アレクサンダー卿「どんなやり方があるのか教えてください。そうすれば、わたしの愛はあなたのものです」
乙女「騎士さま。ほんとうはこの城の正当な所有権はわたくしにあるのです。わたくしには力のある叔父がおります。そしてその叔父はモルガン・ル・フェ王妃を誰よりも憎んでいます。
わたくしがその叔父に使いを出し、この城で行われていた数々の悪習を理由にして、この城をわたくしのために破壊してほしいと頼んでみましょう。
そうすれば叔父はすぐにやって来て、この城のあちらこちらに火をつけるでしょう。そうなればわたくしは裏口であなたをお待ちし、そこで馬と武具をお渡しいたしましょう」
アレクサンダー卿「乙女よ、よく言ってくれた」
乙女「そうすれば、あなたは十二か月と一日の間この城の境界をお守りになれます。そうすれば誓約を破ることにはなりません」
アレクサンダー卿「そのとおりだ、乙女よ」


そしてアレクサンダー卿は乙女に口づけし、乙女とイチャイチャしたのだった。
そして乙女は叔父に使いをやって城の破壊を頼んだ。
ちなみに乙女がいなかったらこの城をもっと早く壊していたらしい。

乙女の手紙を読んだ叔父は、了解の返事を送ってきた。
決行の日、アレクサンダー卿は庭に逃げられる裏口に行き、そこで馬と武具を手に入れた。
ペイズの領主は400人の騎士を率いてやってきて、城のあちこちに火を放って城をめちゃくちゃに破壊した。

城がボーボー燃え上がっている間はアレクサンダー卿は庭で待機していた。
火が消えるとアレクサンダー卿はお触れを出した。
ラ・ベル・リガード城が建っていたこの区域を、十二か月と一日の間守ると宣言したのだ。

さてここで突如アンセラス公というラーンスロット卿の縁者が出てきた。
熱心な巡礼者で三年ごとにエルサレムに行っているらしい。
自分の一生を巡礼に使う事に決めたので、人々に巡礼者アンセラス公と呼ばれていた。
彼には美しい娘アリスがいて、美しき巡礼者アリスと呼ばれている。

アリスはお触れを聞いてアーサー王の宮廷に向かった。
たくさんの騎士の前で「あの土地を守る騎士を倒した者にわたくしとわたくしの土地を与える」と公言したのである。

円卓の騎士は大喜びした。アリスは美しく金持ちで収入も相当だったからだ。
つまり結婚できたら玉の輿である。そしてアリスはアレクサンダー卿と同じレベルでお触れを広めた。
更にアレクサンダー卿の土地に近くに天幕を張る。

アリスがそこに行くと、サグラモアー卿がやってきてアレクサンダー卿に勝負を申し込んだ。
アレクサンダー卿はサグラモアー卿を落馬させたのだが、それを見ていたアリスはアレクサンダー卿に興味を持った。
そして天幕から飛び出してアレクサンダー卿の手を取って言った。


アリス「素晴らしい騎士さま、あなたの騎士道にかけてお願いいたしますが、どうかお顔をお見せくださいませ」
アレクサンダー卿「お見せいたしましょうか」
(アレクサンダー卿、兜を取る)
アリス「おお、神さま、わたくしはあなたが好きです。あなたのほかに誰も愛さないでしょう」
アレクサンダー卿「ではあなたのお顔を見せてください」


<ツッコミ>
なんか……なんか急にフラグが立ったのだが……?

では、また次回。

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