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型月円卓好きに贈る『アーサー王物語』のススメ(240):円卓の崩壊~モードレッド卿の叛逆~

前回までのあらすじ:ガーウェイン卿、ラーンスロット卿にボコボコにされる。

モードレッド卿の叛逆(第1~2章)

さて、便りの内容はタイトルでなんとなく察しがつくだろうが、モードレッド卿の様子を見ていこう。

モードレッド卿はアーサー王の代理としてイギリスの支配者になった。
彼は早速「アーサー王がラーンスロット卿に殺害された」という偽書簡を作り、領主たちに自分を王に選ばせた。
カンタベリーで戴冠式を行って祝宴を15日間行い、グィネヴィア王妃と結婚すると明言した。おいおい父の奥さんだぞ。
グィネヴィア王妃の心は重かったが、穏やかな口ぶりでモードレッド卿の意向に賛同した。
そして婚礼に必要な品物を買うのにロンドンに行きたいと言い出したのだ。
モードレッド卿はそれを信用し、許可を与えた。

だがグィネヴィア王妃は即刻ロンドン塔に立てこもる。モードレッド卿は塔を包囲して攻撃したがなかなかうまく行かない。
グィネヴィア王妃はモードレッド卿を決して信用せず、絶対に戻ろうとしなかった。

そこにカンタベリー司教がやってきて、こう言った。


カンタベリー司教「何をなさるおつもりなのですか? まずあなたは神のご意思に反しておりますし、また自分の身と騎士たちに恥をかかせるおつもりのようですな?
アーサー王はあなたさまの叔父ですし、母上の弟君ではないですか? そしてあなたはその母上と王との間に生まれたのでしょう?
ですから騎士さま、そのようなお考えはお捨てください。さもないと、正式な破門式でわたしはあなたを破門いたしますぞ」
モードレッド卿「どうとでも勝手にせよ。おまえがどうしようと、びくともしないぞ」
カンタベリー司教「騎士さまよ。いいですか、わたしは自分のやるべき仕事をするのに、ちっとも恐れたりはいたしません。
あなたさまはアーサー王が殺害されたと言い触らしていますが、それは本当ではありません。あなたはこの国で何か悪いことを企んでいるようですね?」
モードレッド卿「そのような口をきくな、この糞坊主め。これ以上わたしを怒らせたら、その首を刎るからな」


この発言にキレた司教はモードレッド卿を破門した。破門されたモードレッド卿はブチギレて司教を見つけ次第殺す事にしたので、司教は逃亡。
司教はこの後グラストンベリーに逃げて隠者として祈ったらしい。

<ツッコミ>
司教逃げ足早いな……。破門されちまったがモードレッド卿、大丈夫か?

仕方ないのでモードレッド卿はグィネヴィア王妃の懐柔に取り掛かったが、グィネヴィア王妃の反応は悪かった。
グィネヴィア王妃はモードレッド卿と結婚するくらいなら死ぬ!と言い切ってロンドン塔から絶対出てこない。

なんて事をしているうちにこの事を知ったアーサー王が戻ってきてしまった。
モードレッド卿がアーサー王の誹謗中傷を流しまくっていたので、アーサー王と長い付き合いの人すらアーサー王を悪く言うような状態だ。
つまり、イングランドに残っていたものは大半がモードレッド卿についたのであった。

<ツッコミ>
おいコラてめえ!!!!!
アーサー王へのご恩を忘れやがって!!!!
これだからカス人類は……(人類にキレだす)。

モードレッド卿は大軍と共にドーヴァーまでやってきた。アーサー王の上陸を阻止するためだ。
こうして戦いが始まった。モードレッド卿は撤退させられたが、両方死傷者は多い。
ガーウェイン卿も、船の中で瀕死の状態でぶっ倒れてるのが発見された。
それを抱きかかえたアーサー王は3回気絶した。

<ツッコミ>
そこまで気絶されるともはやギャグなんよ。


アーサー王「ああ、ガーウェイン卿、わが姉君の息子よ、そなたは今こうして横になっている。私がこの世で一番愛していたのに。もうこれで私の喜びは消えてしまった。
わが甥のガーウェイン卿よ、今だから告白するが、そなたとラーンスロット卿を私は一番の喜びとし、頼みにもしていたのだ。
それなのにもはやそなたたち二人から、喜びが得られなくなってしまった。だからこの世から私の喜びは、すべてなくなってしまったのだ」
ガーウェイン卿「ああ、叔父上、わたしにもう最期の時が来たことを、おわかりください。これはみんなわたしの性急さと身勝手さのせいなのです。
その身勝手さが死を招いたのです。今日受けた傷は、昔ラーンスロット卿から受けた古傷を打たれたからでした。
それでわたしは正午までには、この世を去るものと思います。わたしの思い上がりのために、主に恥辱と悲しみを与えてしまいました。
もし今あの高貴な騎士のラーンスロット卿が、昔のようにずっと王のおそばにいたなら、この不幸な戦いは決して起こらなかったでしょうに。
ラーンスロット卿は高貴な騎士道精神とその気高い一族とで、王を害そうとする敵を、みんな征服し支配したのです。
だから今、ラーンスロット卿を失って、あなたは残念にお思いでしょう。ですが、わたしはラーンスロット卿と、和解しようとしなかったのです。
それで叔父上よ、わたしはラーンスロット卿に手紙を書きたいのでどうぞ紙とペンとインクとをお貸しください」


手紙セットが運ばれてくると、ガーウェイン卿はアーサー王に支えられて手紙を書き始めた。
懺悔の式は事前に済ませていたらしい。


わが生涯のうちで耳にし目にした、あらゆる騎士のうちの華であるラーンスロット卿へ、オークニーのロット王の息子であり気高きアーサー王の姉上の息子たる、われガーウェイン卿より、ここに一筆ご挨拶申しあげる。
ベニックの町にて五月十日、われ御身により受けし古傷を打たれ、その傷により本日われ死を迎えんとす。されど円卓の騎士たるガーウェイン卿の死せるは、御身のゆえならず、みずから求めしものなり。
されば汝に願わん、ラーンスロット卿よ、この王国に戻りきたりてわが墓を訪れ、わが魂のために、わずかなりとも祈りを捧げられんことを。
この手紙を書きしまさにこの日、そはわれ致命傷を受けし日なり。この傷は先にラーンスロット卿よ、そなたの手によりて受けしものなり。さすればわが最期は、この世の最高の騎士によりて、与えられしものと言うべきか。
それにまたラーンスロット卿よ、われらの間にありし愛ゆえに、ためらうことなく急ぎ騎士たちを率いて、海を渡り馳せ参じられよ、御身を騎士に叙せられし、気高きアーサー王の援助のために。王はわが異父弟なるモードレッド卿の反逆により、大いなる苦境にあるがゆえなり。
彼は王位を簒奪し王妃グィネヴィアと結婚せんとす。われらが王妃は強引にロンドン塔にたてこもりしが、その王妃をも辱めんとせしなり。
五月十日にアーサー王とわが全軍はドーヴァーを渡り上陸し、反逆者モードレッド軍を敗退せしめたり。しかるにわれかつて御身より受けし傷跡を打たれし不運を受く。
この手紙の書かれしは、われの死せる二時間半前のことにて、われみずからの手によりてしたため、わが鮮血によりて署名せし書なり。されば汝に願う、世に有名なる騎士よ、わが墓を訪れんことを。


ガーウェイン卿とアーサー王は泣いて気絶した。
起きた後にガーウェイン卿は臨終の秘儀を受け、「ラーンスロット卿を迎えに行ってラーンスロット卿を重んじてほしい」と言い残して死亡した。5月10日の正午の事だった。
アーサー王はドーヴァー城の礼拝堂にガーウェイン卿を埋葬。そこで今日でもラーンスロット卿の傷跡が残るガーウェイン卿の頭蓋骨が見られるらしい。

<ツッコミ>
マジ???? 本当に見られるなら見に行きたいのだが???
そして手紙に込められた「愛」が激重すぎてガーウェイン卿とラーンスロット卿の関係の集大成って感じで実に良い。
ところでインク持ってきてもらったのに自分の血で書いたんですか???

ここでアーサー王に、モードレッド卿の軍勢がバラムの丘に陣を構えたという知らせが届いた。
翌朝、両軍が激しく戦って多くの死者を出し、最終的にはアーサー王優位となってモードレッド卿の軍勢はカンタベリーに敗走したのだった。

<ツッコミ>
バラムの丘、要は「カムランの丘」だろう。
ついにあの戦いが始まるのだ。

では、また次回。

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