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「心のキャパ」の話

情報網や移動手段が発達して、世界は狭くなった。が狭くなったところで、自分の心のキャパはそれに反比例して大きくなるわけではない。

テレビやネットで世界中のニュースが瞬時に手に入るし、どこの地域で災害があっただの、あの国で戦争が起こっているだの、そういうことを知ることができるようになった。

東日本大震災が起こったとき、僕は京都に住んでいた。大学は春休みで、友達と昼ご飯を食べた後、バイトまで時間があるので、家に帰っていた。そんな時に地震が起こった。確か、震度2くらいで少し揺れたんだと思う。テレビをつけると、遠くの東北で大きな地震が起こったらしい、ということだった。東北で起こった地震で京都が揺れているなんてことはあり得るのか?と、しばらくテレビを見ていると、そこからは津波で飲み込まれる街や東京の帰宅難民、原発事故、計画停電、、、そして、ACジャパンのCM。。。

行こうと思えば行けてしまう遠くの街での出来事を毎日追いかけて、1ヶ月くらいは憂鬱だったと思う。別にボランティアにかけつけるでもなく、Twitterやテレビをただただ見ていて、後は家から徒歩2分のバイト先と家との往復くらいで。。。

居てもたってもいられなくなり、少しだけ免罪符的に募金をした。その後、機会に恵まれて、5月に募金を呼びかける側のスタッフを1日やったり、9月に2泊4日とかの行程でボランティア体験くらいのことをしてみたりしたけど、結局自分は数ヶ月そこで汗水を垂らしたり、遠くから応援できるような具体的な行動をとったり、そういうことはしなかった。

今回の台風も同じようにTwitterやテレビやYahooニュースで水浸しになる街や寸断された道路なんかをみて、同じような気持ちになっている。自分が同じ状況だったら、本当にテンションが下がると思う。テンションが下がる、という表現をあえてしているのは、その状態に自分が置かれることがあまりに想像ができないからだ。岩手で津波で壊されたコンクリートの塊を見ても、そこで起こった本当の出来事を想像することができなかった。テレビ越しから抜けられない、想像力が欠如している。

被災したらしたで、頑張ろう、と思えるもんなんだろうか?(ちなみに、床上浸水って水が引いたあとは、片付けしたら、家財は一式ダメかもしれないけど、建物の躯体とかは、一応大丈夫なものなんですか?)先月の台風でも電気や水が止まった地域の様子をみて、恐ろしいものだと思った。

自分が被災したとして、避難所やそういった場所で生活したり、周りの人と助け合ったりして、前向きに頑張ろう、みたいなのができるとは思えないので、そういう人たちはすごいと思う。というか、それが生きる力なのだと思う。サバイバル力というか、なんというか。

自衛隊や消防隊、土木関係の人、電力会社や水道屋さんなんかのインフラの類の仕事をされている人、そういった人たちは社会の役に立っている感じがすごい。そういう職業の人を少し羨ましくも思うが、暴風が吹き荒れ、水浸しになりながら、復旧活動をされていると思うと本当に頭が上がらない。というか、自分には無理だと思う。

そうこう考えているとドンドン気が滅入ってくる。

そこで、冒頭の話だけども、基本的に、人間の心のキャパはこの数千年で大きくなったとは思わない。大切な人やモノやコトが占める心のキャパの割合は、時代によって変わると思うけど、心のキャパの大きさはほぼほぼ一定じゃないかと思っている。

昔の人は遠くで災害が起こっても知る由もなかったのだから、、、遺伝的に、「自分たちは遠くの人のことを心配できない」ようになっているのだと思う。心のキャパは自分の周りのものを考える分で定められている。

たまに、どうしてあなたはそこまで人のために行動できるの?という人たちがいる。スーパーボランティアのおじいちゃんとか、僕の高校の先輩で災害があるたびにボランティアに行く人がいる。この人たちはわりかし、ボランティアが趣味になっているところはあると思う。あと、お金持ちの芸能人が1000万円ポンって寄付するのとかもその部類だと思うけど、こういう人たちは心のキャパが広いと思う。

それと比べて、結局、僕みたいな人間が(どうしようもない)遠くの知らない人達のことを心配して、心が疲れてしまうのは、なんというか、誰のためにもならないし、それならいつもどおりの生活をしていれば良いんじゃないかと思い始めてくる。

それを冷たい、という人がいるかもしれない。けど、自分は自分の心を守るのに精一杯なほどに心にキャパがない。だから、今回も何か縁があれば、何かしようかな、くらい。

ちなみに、自分の(心的距離が)近い人やモノを大切にできているか、と聞かれると、またテンションが下がる。せめて、自分の(心的距離が)近い人やモノは大切にしたいと思う。

ざれーご 14


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