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自転する日記 2月10日 姉

姉が3泊して帰っていった。
母さんにと、またクノール「栗かぼちゃのポタージュ」を山ほど買ってきた。

相変わらず早口でよく喋る。
相変わらず食が細い。
相変わらず発泡酒の淡麗生だけを毎晩3リットル以上飲む。

相変わらず信じられないくらい薄着だった。
相変わらず保守的。
相変わらずわざと議論をしたがる。
時々馬鹿みたいに笑いあうが、
相変わらず私たちは話が合わない。

それでも最後の夜の深夜2時にグレコが来た時は少し泣いていた。
もう会えないままだろうと思っていたらしい。
彼の体を泣きながらずっと撫でているので、私は台所に立ってグラスを洗った。

姉は自分のことを冷たい人間だと明るく言い放ち、他人に変態だと思われて嬉しい、と無邪気に話す、度を超して純真なところがある。
普通の大人にはちょっと信じられないと思う。そういうのは妹でもさすがに引く。
しかし姉と話していると、最終的にはいつも自分がものわかりの良い大人をさらりと演じているような気がしてきて、そのことに気分が悪くなる。
今回もそうだった。

青いスポーツカーで去っていく姉を、母と見送った。
数日間、お湯が沸騰したように熱くにぎやかだった家がまた、静まりかえった。

姉がいなくなった1時間後、グレコがやって来た。
3日半の間の数時間しか一緒に過ごしていないのに、急に消えたことが信じられないように姉が座っていた場所を何度も見て、家の外まで捜しまわった。

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