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ツノがある東館(#毎週ショートショートnote)

妻と俺は縁側に腰かけ、横たわる死骸を眺めている。

「今年は拍子抜けだったわね」

「赤4匹に緑と青が2匹ずつか。少ないな」

「せめて紫が獲れればねえ…」

成鬼の買取価格は1体約100万の契約たが、紫の成鬼は特に人気が高く、倍の金額は下らない。十分に成熟した紫鬼はその味が段違いに良いとかで、グルメ垂涎の的なのだ。

「ま、仕方ないじゃん。来年に期待しようぜ」

「そうね。じゃ、運ぶとしますか」

令和6年、節分明けの朝。
俺たちは今年も鬼の獲物を車に積み込み、梅屋デパート東館の地下食品売り場へ向かった。


「鬼門さん、お待ちしておりましたぁ!」

主任がもみ手でやって来た。



興味がある方はこの時季に、梅屋デパート東館総菜売り場に足を運ぶことをお勧めする。
町の住民たちが地域を守るために始めた鬼の駆除、その希少な鬼肉がここで余すところなく調理され、素晴らしい総菜に生まれ変わり販売されている。

俺のイチオシは角煮。
カク煮じゃないぞ。
ツノ煮だ。

(406字)

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