その愛を、きっと絆と呼ぶのだろう

★注意★
このnoteはネタバレに配慮していません。
また、観劇から時間が経過しているので、思い違いしている箇所がある可能性があります。
個人を攻撃するための文章のつもりはありませんが、個人の思想、想像が混在しているため、読み取り方によってはご不快に思われることもあるかもしれません。
あらかじめご了承ください。










観終わった直後の感想は「えっ!?この役死なないの!?」でした。
我ながらひどい。

今作は戦国という時代設定のせいもあるのか、重要な役どころであってもこちらが驚くほど潔く退場していきます。
確かに戦国時代ですけども…?とは思うものの、なにせ開幕しょっぱなでまず死ぬ。唐突すぎてこちらが驚くタイミングで死ぬ。
えっこれこの二人の間のお決まりギャグみたいな、長い付き合いだからできるみたいなやつじゃなくて!?起き上がらないの!?死ぬのォ!?みたいな驚きでこちらが固まっている間にポンポンとストーリーが展開され、置いてきぼりにされる暇もありません。

まあ確かに隣接している国同士の資源格差が大きすぎる点を考えると人の命も軽々しくなるか…とオープニングの地図を思い浮かべます。
公式HPには掲載されてないんですが、存在しているとされている国々の大きさそこまで大差ないんですよね。

砂漠化してしまった須和国。
水が豊かな乃伎国。
武力を誇る尊武国。
今回出番がなかった袁空国。佐峨国。

砂漠化するほどの内乱ってことはだいぶ国力が削られてると思うし、横からちょっかいかけてちゃっかり領土を奪った国もあると思うので、もともとの須和国だいぶでかかったんじゃないかな?と思います。
だからこそ自分たちの国をあの頃に戻してやりたいとか、知識を得ていつかそれを取り戻そうと思っている国民なんかもいたんじゃないかな。
その状態でも領土で言えば同じくらいの広さを保っているので、もともとはこの国1強みたいな時代もあったのかもしれません。

正直、「砂」の国って立ち位置がかすむんじゃないかなという心配がありました。
砂って荒廃のイメージが強いし、対って言われてぱっと出てくる要素が思いつきづらくありませんか?

対比ってなくても成り立ちますが結構重要で、善と悪、白と黒みたいにイメージがしやすければしやすいほど登場人物に感情移入できるし、ストーリーの理解度が上がると思っています。
なので「水」「火」という、この2つだけでわかりやすく対立できる要素が存在する状況で「砂」って、水と火に食われちゃうんじゃないかなと。

ですが、そういった国の環境とメインとして据えられている登場人物の多さがうまくかみ合っていて、「今はこんな状況だけどここはいい国にしていくんだよ!!!!」という底力を見せつけられたような気持ちになりました。
「砂」でいいんですね、あの国は。



さて、見せつけられたといえば今回特に「対比」という点が際立って見えたのは何といっても宝塚歌劇団のお二人でした。

観劇しているときは純粋にもう光り輝いているというか、所作が美しくて、推しが同じタイミングで出ているけどつい瞳がそちらに吸い寄せられてしまうどうしようすみませんという気持ちだったのですが、こうして今現在もしみじみ素晴らしいと思うのはお二人の「寄せ方」です。

宝塚は大体の日本人なら「これは宝塚歌劇団の公演ですね」と認識できるかと思います。
声の出し方、歩き方、顎のあげ方、視線の送り方、腕と指先の使い方、笑顔の見せ方、とにかくあらゆる技術に「そう」感じる要素が含まれている。
観劇したことのない私にとっても宝塚とはそういう存在です。

ですが、今回まず驚いたのは「芝居の仕方」というものを脚本に、HiGH&LOWという作品に寄せているということ。
言い方が最ッ高に悪いんですが、学校でぎっちり心得まで教え込むようなコンテンツにテレビサイズの演技って通用しないと思うんですよ。
どうしたって同じ板の上に乗っていたらわかってしまう。

あ、この人のダンスは下手に見せてるんじゃなくてほんとに下手なんだな、とか。
あ、演技のメソッドが明らかに違ってて浮いてるわ、とか。
あ、これは聞き取りづらい風に発音してるんじゃなくてほんとに聞き取りづらいわ、とか。

所属している劇団の色が出るのはどうしたって仕方がなくて、でもそのせいで観劇の集中力が途切れてしまうこともしばしばです。
それなのに、お二人がお芝居を「HiGH&LOW」に寄せることで、その違和感が最小限にとどまっていると感じました。

その上で素晴らしいと感じたのは、「この役は確かにこの国の人間の国なんだな」と感じさせる演技を見せてくれたことです。


まず一番印象的だったのが、吏希丸が隠してきた心情を吐露する場面。
どこかシニカルで達観した態度だった彼は、そこまでで一度も出したことがない声で黄斬に訴えかけます。
まるでこちらごと砂嵐に巻き込まれたかのような荒々しい声。

こんな声、これは人間が意図して吐き出せる声なのか?
こころをぐちゃぐちゃに切り裂いて口から出したらあんな声になるんじゃないか?

自分の半身をちぎり取るようなざらついた声。
今や砂の国である須和国の化身のようで、国を立て直すために必要な人間は自分ではないという嘲りにも聞こえました。

諦念、葛藤、躊躇、渇望、理想、掴んだと思っても指の隙間からどんどん流れ落ちていってしまうそれら。
ほんのわずかだけ残ったそれをどうにか握りしめて、たったそれっぽちしか手の中に残っていないのに、黄斬にすべてを任せようと決意するまでに何を犠牲にしたんだろうか。
砂粒の自分では礎は務まらないとでも言うようなその行動はひどく哀しくて、豊かな国に砂はいらないと思っているかのようで、息が詰まるような思いでした。


湧水は終始物静かで淀みなく、水どころか氷すら思わせるような潔癖な態度、沈着冷静で鋭利な判断でとても美しかったです。
怒りを露わにすることはあれども、清廉な佇まいの麗人。
これもまた決意を秘めた人間の佇まいなんだと思います。

しかしやはり終盤、友とも思っていたであろう人物の行動、思想、慕情をぶつけられ、そこで初めて湧水の感情の揺らぎが見えました。

それを見たとき、弦流が護りたかったのは湧水の心だったんじゃないかなと感じました。
湧水もきっとそれを唐突に理解してしまったんじゃないでしょうか。

だからこそ湧水は、向けられた感情を堰き止めること、否定することをしなかった。
そして、洪水のように感情を表に出したのは、これが初めてだったんじゃないかとも思います。

きっとこれから先の人生で、弦流ほど湧水の感情を動かす人間はもう現れないんじゃないだろうか。

水の流れはいつまでも止めていられない。
これから先の湧水は今までよりも感情的な人間になるのかもしれません。
そのきっかけとなった存在が弦流であることが、この時代の二人にとってのよすがであってほしい。そう思わずにいられませんでした。

お二方それぞれ、まさしく「砂」「水」を象徴しているとしみじみ感じいるばかりです。


それもあってか、申し訳ないことに個人的に尊武国が不完全燃焼であまり印象に残っていません。
理由は2つあって、1つは影森のポジションです。
公式HPの配置と画像の背景色から、私は当初影森を敵側と認識していました。
本番で思いきり衣装が異なっていたこともあり、登場しても3階席からだと「あれ…?役名がある役ほかにいたかな…?」と思ってしまった体たらく。
関係性がよくわからないまま登場し、なんか退場していった…というように見えてしまい、玄武の怒りに感情移入ができませんでした。

2つ目は、尊武国には吏希丸や湧水のような、「火」や「炎」を体現しているといえる登場人物がいなかったから。
おそらくそれは玄武が当てはまるんだとは思うんですが…。
私は宝塚ファンでもLDHファンでもないのでバイアスはかかっていないつもりなんですが、それを差し引いてもどうにも物足りないというか…。
個人の演技力の問題なのか、演出のつけかたなのか、宝塚のお二人だけでその部分が際立って見えてしまったのか、席が遠くてそれらを感じづらかったのか、とにかく何かしらの要因でこの国だけが一歩離れたところにいるような印象を持ちました。

須和国に信頼、乃伎国に愛情が見て取れていただけに、尊武国の核がわからないことも一因だったのかもしれません。

影森をうまく認識できていなかったせいで、「尊武国だけ誰も死んでなくない!?」と思ったのも大きかったのではないかと思います。
白銀…お前死なねえんか…。あと1回呼吸したら死ぬみたいな感じだったのに…。

そういう意味で言えば、尊武国の核は「家族愛」だったのかも?
家族を受け入れて見守る心。
見捨てない決意。
自分にできることを捧げたいと思う思いやり。
苛烈に一人だけが纏う爆炎ではなく、優しく温める炎。

それを公演中に理解しきるには、やはり私にとって影森の退場が早すぎたのだろうか…。
どうにも好戦的な荒々しさだけが押し出しされた印象を受けてしまって、十分にくみ取ることができなかった気がするなというのが残念に思うところです。



ちょっとずつ書き出してはいたものの、長かった公演ももう明日で終了というこんなタイミングになってしまいました。
自分の中でかみ砕くのにすっかり時間がかかってしまいましたが、あと2国登場していないこともあり、これから何かコンテンツとして展開があるのかな?と思わずにいられません。

5行に則していそうだしやっぱり後は風と土かな?ていうか須和国って砂だから土なのかな金が出るなら金なのかな?
人同士の愛を各国のモチーフにしているならさらにあと3国追加で登場するのかも?
フィリア、プラグマ、ストルゲーが割り当たっているとしたら袁空国と佐峨国はエロスとアガペーかな。
クローズ×WORST UNLIMITEDのリリースもあるし、もしかしたらコラボもあるのかも?

まだまだ余地が残っているコンテンツなので、どんどんと続報が出てくれることを楽しみにしています。




おまけ

【戒】
意味
①いましめる。さとす。つつしむ。
②用心する。
③いましめ。特に、宗教上のおきて。
※出典…漢字ペディア

さとす。

……………………………………サトシって…コト…!?



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