地方都市の人口をいかに増やすか。交流人口に着目する

地方活性化を考えるときに最も基本的なことの一つに人口があります。そこに多くの人がいると商いが活性化し、街が賑やかになり、都市としての魅力がまして更に人が集まってくる、という理屈です。人口は細かく分類すると定住人口と交流人口にわかれ、前者はそのままですが、後者はビジネスや旅行などでその土地を訪れる人を指します。東京や大阪は定住・交流どちらもトップクラスであるために大都市なわけですね。今回はこの人口を増やす、という課題にフォーカスしてみたいと思います。

『田舎暮らしの本』という雑誌で暮らしやすい田舎ランキングという企画があり、鳥取はこの企画でランキング上位の常連となっています。2015年に岩美町が1位、昨年は鳥取市が1位にランクインしました。定住人口を増やす移住促進施策は全国でもかなり力を入れている県と言えそうです。ですがこのランキングだけでは肝心の移住者数がわかりません。そこで全国の地方移住者数と、逆に東京への転入数はどの位なのかを調べてみました。

年間2万人足らずの地方移住者数

2014年度の地方移住者数は1万1735人でした。そして2015年の東京への転入者数は約12万人とのこと。地方移住が数年前から話題になりはじめ、特に東日本大震災はひとつの契機になった人も多かったようですが、それでもまだ東京に住み始める人の10分の1程度です。単純に考えると各地方とも10出て1戻ってくるということで、昨今の地方移住トレンドも定住人口を増加させる迄には至っていないことになります。

参照:事業構想

移住を考えるときに一番気になることの圧倒的1位は仕事。東京の会社が地方にサテライトオフィスを作るといった動きも少しずつ出てきていますがまだ稀なケースであり、移住者の多くは今までの会社や仕事をやめて新しいキャリアを見つけないといけない状態です。

このような背景により定住人口の増加が長い時間を要する施策であるのに対して、交流人口を増やす施策には比較的短期で取り組むことが出来るものがあります。端的に言うと観光による入り込み客数増加です。国内旅行者数も増加傾向にあり、さらに訪日外国人の数も政府の観光立国戦略で急増しているため、観光は地方が成長できる有力な分野だと考えることができます。

観光者向けビジネスが交流人口増加を促進する

人は観光でどこにお金を多く使うのでしょうか。デービッド・アトキンソン氏の「新・観光立国論」の統計から引用すると観光客の支出項目構成比における上位3つは宿泊26.9%、買い物26.4%、食事18.4%です。よって、交流人口増加の恩恵を受けるビジネスとしては民泊やゲストハウスといった宿泊関連業と飲食関連業などがあるでしょう。

交流人口の増加に対応したビジネスとして民泊や飲食事業が数字を見る限り需要が高いね、ということがわかりましたが、もっと上流の課題として、いかに交流人口を増やすかという悩みがあります。そこへ観光に行く明確な目的です。これは県や市が一丸となって取り組んでいる課題でありスモールビジネスの立ち上げだけで解決できるものではないのですが、地方の観光協会やDMOが陥りやすい考えに、田舎ならではの自然や歴史的建造物など昔からある観光コンテンツは今まで充分にアピール出来ていなかったので、昨今流行りのソーシャルメディアなどwebを駆使したマーケティングでリブランディングしようという発想がありがちなのではと思います。これの何が問題かというと、たしかに東京・大阪には無い地方の魅力として、キレイな海や神社仏閣などの文化遺産が存在していますが、それは少し田舎に行けばどこにでもあるコンテンツだということです。地元の方はうちの海は特別キレイだ!と思っているかもしれませんが、キレイな海なら沖縄に勝てる程なのか、温泉がある!ならば別府や由布院に知名度で勝てるの?という疑問。わざわざそこを目指す強烈な動機づけになりうるコンテンツを作ってマーケティングしないとありきたりな田舎アピールでは近場やその分野の№1にかなわないのではと思います。

砂丘は全国区に知れ渡っていますので広大な自然という観光コンテンツとしてはアリですし、事実鳥取を訪れる観光客が最も多く訪れている観光スポットです。では移住でも知名度の上がっている岩美町の浦富海岸はどうでしょう。たしかにキレイなのですが沖縄の海へ行こうと考えている人に浦富の方がいいですよ!と説得できるだけの魅力があるかと言われると自信は無いです。三徳山の投入堂はとてもユニークな建築物ですが、是非この目で実物を見てみたい!と思う人の数はさほど多くないでしょう。自然の風景や建造物はネットでいくらでも写真が見れるため、パソコンや携帯では伝えられないスケールや迫力があるものでないとわざわざ訪れたいと思わせる理由にはならないですね。

ではナンバーワン、オンリーワンの観光スポットが無い地方が観光客増加を狙おうとしたとき、元々のポテンシャルで限界値が決まっているのでしょうか? 必ずしもそうではないと考えています。たしかに地理的・歴史的に恵まれた地方は存在しますが、景色や建築物は一度見たら充分というものも多いように思います。砂丘も一度みたら満足する人は実際多いでしょうね。何度も訪れてもらうにはどうすれば良いのでしょうか。これはもう「体験」に尽きると考えています。景色は一度みたら(多くの人は)満足しますが体験は何度でもしたくなるものです。ニセコでスキーを楽しんだ人はまたあの雪質で滑りたい、と思って再訪するわけですよね。食も体験でしょう。そこでしか食べられないものは再訪するきっかけに成り得ると思います。

恵まれた観光資源がない地方でも、ユニークな体験プログラムを作り出し的確なマーケティングが実施できれば興味を引きつけることは可能で、かつ何度もリピートしてもらえる顧客の獲得が出来るのではないでしょうか。そして交流人口が増加することで地方に仕事と雇用が生まれ、定住人口も増加していく。

鳥取のユニークな体験プログラムは何なのか、これからの課題がひとつ浮かび上がりました。

今日のまとめ:

・定住人口増加は長期施策。交流人口は国全体の観光客増加の影響を受けて短期的に増加する可能性が高い
・交流人口増加を見込んだビジネスとしては宿泊関連事業、飲食関連事業が有力
・観光コンテンツはリピートしてもらえる”体験” を軸に開発するべき

交流人口の増加が雇用を生みだし定住人口の増加に結びつく



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Shogo Katayama

鳥取県ポートランド町

地方のまちおこしについて考えたり実践していく過程を綴っていくマガジンです。地方創生、活性化について考えます。タイトルは日本で一番人口の少ない県でポートランドみたいに世界から注目されるような街をお手本に盛り上がる試みを実践していきたいなというスローガンみたいなものです
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