見出し画像

Une Semaine à Zazie Films 週刊ザジ通信【5月4日㈬~5月10日㈫】

ゴールデンウィークもアッという間に終わり、通常営業の日々です。先ほど当通信を更新するためにnoteを開いたら、「note開設から丸2年、おめでとうございます!」みたいな文言が出て来ました。ちょうど2年前の今頃、コロナ禍に直面して、「何か皆で出来ることはないだろうか?」と、独立系配給会社が集まって“Help!The 映画配給会社”というアクションを起こした際、「各社でnoteを開設して情報を発信しましょう」となったのが、このnoteを始めたきっかけです。会社の歴史を振り返ったり、新作のPRを兼ねて事務所の引っ越し日記を連載したり、去年2月からはこのザジ通信を連載しております。今後も細々と続けて行く所存ですので、「こんな企画をやってくれたら嬉しい」みたいなリクエストがありましたら、ぜひご提案下さい。

さて。ゴールデンウィークに話は戻りますが、休みの最中ヒューマントラストシネマ渋谷で開催中の“シャンタル・アケルマン映画祭”の中の1本、『ジャンヌ・ディエルマン ブリュッセル1080、コメルス河畔通り23番地』を観てきました。満席の回も出る大盛況とのことで、私の個人のツイッターのTLにも監督の名前や題名が何度も流れてきて、気になっていました。

画像1

アケルマン監督については、88年に日本で公開された『ゴールデン・エイティーズ』でその名前は知っていたし、『ジャンヌ~』についてもヨーロッパの女性映画監督に関する文献などで、その長い題名を目にしたことはありましたが未見のまま。「シャンタル・アケルマンの特集上映をやったら良いのでは?」とアドバイスを下さった方も過去にいらっしゃいましたが、私自身唯一観ていた『ゴールデン~』がピンと来なかったため、シリアスに検討したことはありませんでした(『カウチ・イン・ニューヨーク』は未見)。

で、『ジャンヌ~』。凄かった…。長年の自らの不見識を恥じることしきり。200分という長尺にも関わらず、終始スクリーンから目が離せませんでした。ジャンヌがジャガイモの皮を剥いたり、風呂掃除をしたり、カフェオレを作っては失敗し作っては失敗し、を繰り返したり、延々挽肉をこねたりするのを、満員の場内で皆で固唾をのんで凝視する、という不思議なシチュエーション(笑)。これはもう映画館ならでは。携帯の小さな画面や、家のテレビの画面では味わえない体験でした。

それにしても謎なのは、その盛況ぶりと客層。40代以上のコアなシネフィルと思しき一人客ももちろん多いのですが、20代の若い男女も多く、サブカルっぽい感じとかシネフィルっぽい感じ(どんな感じ?笑)ではない、ごくフツーの女性二人連れとかもいて(こないだ観た映画は『余命10年』みたいな)、映画館を後にする皆を追いかけて行って、「どこで知ったの?」「誰に薦められたの?」と質問したい欲求にかられまくりました。

途切れることなく特集上映が開催されている昨今ですが、何でもかんでもヒットするワケではありません。作品それ自体に普遍的な力があるのは大前提ですが、個々の作品のレア度の高さも必要。「時代に合っているのか?」という、どう判断するのか難しいポイントも重要です。弊社でも数多く特集上映を企画していますが、上手く行った特集、思ったほどお客様に来て頂けなかった特集、さまざま(この辺りは以前連載したザジ30年史“Histoire De Zazie Films”連載⑳でも触れていますので、お読み頂ければ幸いです)。

画像2

弊社の最近の特集で言えば、昨年末の“カール・テオドア・ドライヤーセレクション”は、当初年齢層の高いシネフィルの男性中心でしたが、日を追うごとに若い男女のお客様も増えてロングランとなりましたが、パソリーニ監督の『テオレマ』『王女メディア』は、堅調な興行だったものの、正直な話もっと若い方に観に来て欲しかったところです。コロナ禍の影響がまだまだ残る中、以前のような高年齢のお客様のご来場が期待出来ない状況で、若い客層にアピールするのは最重要課題。しかし、若い層に拡がる、拡がらない、その差異はいったいどこにあるのでしょうか?その答えが見つけられたら、怖いもの無しなのに…。

ということで、試行錯誤は続く…。実は12月、クリスマス時期に次の特集上映を企画しています。ようやく買付けも済み、これから準備に入ります。知名度の決して高い監督ではないので(思わせぶりで済みません!)ある意味チャレンジなのですが、若いお客様にも刺さるよう頑張ります。情報解禁はまだちょっと先ですが、発表をお楽しみにお待ち下さい。

自社作品は置いといて、とりあえずアケルマン監督の残りの作品も観に行かなきゃ!続くロメールも!

texte de Daisuke SHIMURA


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?