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Une Semaine à Zazie Films 週刊ザジ通信【5月31日㈬~6月6日㈫】

気がつけば6月。年末のご挨拶用に配る社名入り卓上カレンダーの業者さんから、「2024年版は何部ご注文のご予定でしょうか?」というメールが入って来たりして、「来年の話をしたら鬼が笑う」どころか、鬼の気配すらまだ無い時期なのにぃ、などと思っていても、すぐに年末は来てしまうのだろうなぁ…。月日の流れの早さは加速するばかりです。6月24日に渋谷シアター・イメージフォーラムでスタートする“ジョン・カサヴェテス レトロスペクティブ リプリーズ”も、そのあと8月に同劇場で公開する『オオカミの家』も、アッという間に初日が来てしまうのでしょう。11月公開の新作だって、時間がかかるタイアップ等の準備を今のうちに始めておかなければ…。焦ってもロクなことは無いけど、やっぱ焦ってしまいます…。

…が、仕事的には5月27日に閉幕したカンヌ国際映画祭のフォローが続いています。「この映画が売れてなければオンライン試写したいので、リンクを送ってください」と権利元にリクエストを入れると、「日本の権利は既に売れました」と返事が来たり、「すでにオファーが入ってるので、もし興味があるならすぐに試写して、明日までにオファーを」と言ってきたり(そんな速攻で決めるのはムリなので、すぐ諦めちゃう。笑)、逆にカンヌで売れなかった作品の売り込みメールもいっぱい来ていて、映画祭は終わっても、まだまだマーケットは動いています。カンヌに高い経費を使ってしまった分、成果を上げなければ!と必死になっているのは、立場は違えどバイヤーもセラーも同じなのでしょう。

そんな状況なので、今週は具体的に書けることが全くありません。実は「来年公開出来たら…」と思ってオファーしている作品が2本あるのですが、今の時点では契約出来るかどうか、何とも…。片方の作品なんか、カンヌ前から交渉していたのですが、全く返事が無いので「もう諦めよう」と思っていた矢先に、契約条件の詳細について質問メールが来たりして、「えっ?まだ可能性あるの?」と面喰っているところ。ほぼ一か月間答えをもらえないうちに、すっかり熱が冷めてしまっているので(笑)、今さら買えてしまったらどうしよう…という感じです(万が一買えちゃったら、もちろん頑張りますが)。もう片方の作品は、前述の作品の会社よりもレスポンスは早いのですが、なかなかのタフ・ネゴシエーター。希望的には明日明後日で話がまとまって、この週末はちょっとホッとしたいです…。

買付け交渉の一方で、契約済みの作品や、まさに契約の詰めをしている作品で、トラブルも続発していて神経をすり減らしている今日この頃です。新作では起こりにくいのですが、うちのように旧作のDVD、ブルーレイ化の仕事もしていると、特に素材に関する問題が起こりがち。例えば「4K素材が4月末に出来上がります」と言ってたのに、いつまで経っても出来上がってこない…とか、オリジナル言語の素材ではなく「英語吹替え版しかない」とか、ジャケットデザインのために必要な画像が数点しか供給されていないのに、本編からキャプチャーした場面写真の使用は不可(理不尽!)とか、後から後から「聞いてないよ~」という話が出てきます。この辺りも具体的なことが書けなくて申し訳ありません!

“欧米は契約書社会”と言われているのに、割と平気で前言を翻したり、開き直られたりすることもあったりして、ストレス溜まりまくりですが、「お互い様」ということもあるので、あまり強くは出れない事情もあったりします。もう時効だから書いちゃいますが、私、旧作でリリースしたかった作品を、とある会社のライブラリー・リストから見つけて契約したのですが、実はその作品が同じ題名の違う作品だった…というのが後から発覚したことがあります。その時は、平謝りに謝って契約を解消してもらいました。これは完全に私のミス。

作品を間違える、というのは聞いたことないですが(笑)、金額を間違える、というのも、一番大事なところなので、あまり聞いたことがありません。が、一度だけ「3万ドルで契約が成立したのに、契約書案が出来上がってきたら30万ドルになっていた」というのを経験したことがあります。これは完全に相手方の間違い。1万3千ドル(Thirteen thousand)を、3万ドル(Thirty thousand)と聞き間違えるのはありそうですが、1万3千ドルでオファーする、ってあんまり無い気がします。私はthirty thousand とは言いましたが、Three hundred と言った覚えはありません。そんな金額で映画を買ったことないんですから、言うワケない!(笑)その時は幸い「言った、言わない」という状況にはならず、相手の方が非を認めて「社内調整するからちょっと待って」と言われ(プロデューサーに訂正、謝罪する必要があったのでしょう)、後日無事3万ドルで契約が成立しました。その担当者、まだ同じ職に就いてるから、この失敗で仕事を失うことにならなかったのが何よりです。

以上、今週は書けないことばかりだったのですが、結果的に赤裸々な買付けの舞台裏を書いてしまった…というほど、赤裸々でもないですね。来週はもうちょっと実のある通信にしたいです。

texte de Daisuke SHIMURA



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