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Une Semaine à Zazie Films 週刊ザジ通信【12月15日㈬~12月21日㈫】

いよいよ年末も押し迫って来て、カレンダーを携えてせっせとご挨拶まわりをしている今日この頃です。カレンダーと言えば(って、ここのところ毎週こればっかりですが)先々週から開催しておりました“ザジフィルムズ卓上カレンダープレゼント企画”は無事終了。超豪華(マジで)ポストカードセットをおまけにつけたカレンダーが、数日中に当選者の方のお手元に届く予定です。どうぞお楽しみにお待ちください!周りの方に自慢して、応募しなかったことを後悔させちゃってください(笑)。

さて。昨日、12月21日は仕事を早めに切り上げて、横浜のシネマ・ジャック&ベティさんの30周年の祝賀会に参加してきました。横浜市中区若葉町の、元米軍の飛行場跡地に、ジャック&ベティの前身であるところの横浜名画座が開館したのが1952年。1991年の建て替えを機に、現在の2スクリーン体制となり、名称もジャック&ベティに改称され、それから丸30年が経ったのをお祝いする会。今年は2007年に梶原支配人が運営を引き継いでから丸15年という節目の年でもあるそうです。

全国各地に地元の映画ファンに愛されるミニシアターが存在するおかげで、うちのような配給会社が生き残れて来たワケですが、私自身が横浜出身ということもあり、ジャック&ベティさんには格別の思い入れがあります。今もうちの作品がかかると、身内や中学高校時代の友人が観に来てくれることも多いので映画を観てもらったあと合流するために、ちょくちょく伺っていますし、劇場のある若葉町からすぐの伊勢佐木町は、子供の頃から慣れ親しんだ繁華街です。

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※伊勢佐木町にある、“「伊勢佐木町ブルース」を唄う青江三奈”の絵看板。

ただ、昨日の祝賀会でもスタッフの方がご挨拶の中で触れていましたが、伊勢佐木町から裏通りに一歩足を踏み入れると、子供の頃はとても一人では歩けないエリア(いわゆる風俗街)だったので、ジャック&ベティの前身の邦画専門の横浜名画座や、真向かいにあった横浜日劇という洋画専門の名画座に足を踏み入れたのは数えられる程度ではあります。一番古い記憶はエッチなシーンを目当てに観に行った『ヤコペッティの大残酷』(併映は『ブラック・エース』と、もう1本は何だったか?)、『デアボリカ』も、ここで3本立ての1本として観た気がします。多くの客が上映中もタバコをスパスパ吸っていて、スクリーンが煙っている、という今では有り得ない光景が場内に広がっていました。

10代後半から20代、80年代に足繁く通っていたのは、当時のジャック&ベティの運営会社、中央興業が経営していた、伊勢佐木町の入り口近くにあった関内アカデミー劇場。こちらは当初は洋画のセカンドラン的な2本立て興行をやっていて、後に単館の新作をロードショーするようになりました。関内MGAと改名してからはザジの映画も何本かかけて頂きましたが、残念ながら中央興業の廃業とともに2005年1月に閉館。2004年に公開したザジフィルムズ史上最大のヒット作(!)『幸せになるためのイタリア語講座』は、生々しい数字で恐縮ですが、この関内MGAだけで1000万円以上の興収が上がりました。いい時代でした(´;ω;`)

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横浜の映画館の思い出話ついでに、もうひとつだけ。私が生まれ育った本牧は、1945年から1982年まで在日米軍が広大な敷地を接収し、米軍従事者の家族が住むエリアが存在していました(地元の人たちは“外人ハウス”と呼んでいました)。我が家はそのエリアに隣接する場所にあり、小学生の頃夕方庭で遊んでいると「ガイジンが石投げてくるから、早く家に入んな」と、夕飯のしたくをする母親が台所から声をかけてくるのが日常(米軍家族の子供たちが、よく日本人の子供たちにちょっかいを出してきました。今を思えばイジめる、というより、交流したかったのだと思います)。昭和40年代には本牧ではまだ戦後が終わっていなかった、という感じで、まさに“フェンスの向こうのアメリカ“を感じながら過ごした子供時代でした。そんな日々を送る中、映画を好きになり始めた中学生の頃、通学路の途中に米軍関係者向けの映画館があるのに気付きました。当然興味津々!それが上の画像の右の建物。「Bill Chickering」という文字が見えます(従軍記者の名前を冠した劇場だったようです)。

その月の番組表みたいなものが劇場の扉に貼られていたのですが、それがもう映画好きにはヨダレモノのラインナップで、日本で公開前、もしくは公開される予定のないアメリカの新作映画が日替わりでかかっていました。既に日本国内でも評判になって公開初日が待たれていた『ジョーズ』なども。通学途中、扉に張り付いてその番組表を見て悶絶していたものです。

そんな話を家で家族にしていた私に、ある日福音がもたらされました。母の友人の知り合いがその米軍施設内のボウリング場で仕事をしているので、「映画館に入れるよう、どうにかしてあげよう」ということになったのです。どう、どうにかしてくれたのか、今はもう覚えていないのですが、それから数度その映画館で映画を観ることが出来ました。字幕が無いのでさっぱり内容は分かりませんでしたが、日本で公開される前の作品を観れて、天にも昇る気分でした。観た中で印象深いのは『殺しのドレス』。シャワーシーンが無修正だったのを鮮明に覚えています(笑)。映画の上映前にはアメリカ国歌が流れ、皆起立してそれを聴くのが習わしでした。

そんな映画館での原体験が、ザジフィルムズの誕生に繋がっています。今回は思いがけず、去年連載していたHistoire De Zazie FilmsのエピソードZEROみたいになってしまいました。何名かでも興味を持って読んでくださった方がいらっしゃることを祈りつつ…。

ちなみにシネマ・ジャック&ベティでは今週土曜日、25日から『MONOS 猿と呼ばれた者たち』の上映が始まります。30日には姉たちが観に来るので終映タイミングでお邪魔して、映画の感想を聞きつつ遅いお昼を食べに登良屋へ行く予定です。

texte de daisuke SHIMURA


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