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Une Semaine à Zazie Films 週刊ザジ通信【2月1日㈬~2月7日㈫】

4月28日㈮より新宿シネマカリテヒューマントラストシネマ渋谷を皮切りに全国順次公開される『セールス・ガールの考現学』の予告編が、ウェブ上で解禁になりました。「モンゴルのアダルトグッズ・ショップを舞台にした大学生の女の子の成長譚」という内容を読んだだけではどんな映画なのか、皆目見当もつかなかった皆様におかれましては、先ずは予告篇を観て頂き「なにコレ?面白そう!」と思って頂けたら幸いです。ちなみに、冒頭“THIS SPRING この春”と大仰に始めて、“新しいモンゴル映画 NEW FILM FROM MONGOLIA“と受け、“舞台は草原…ではなくて”と来て、“アダルトグッズ・ショップ“と繋げる、という私のアイデアを予告篇ディレクターが採用してくれて、そのあとはディレクターの発案で、「あとはよろしく」と鍵を引き渡すシーンを持ってきてテンポ良く落としてくれました。「なんのこっちゃ?」と思われた方、ぜひ↓の予告をご覧になってお確かめください。

プロデューサーでもあるジャンチブドルジ・センゲドルジ監督にも、アプルーバル(原権利者から許諾を受ける作業)のためにデータをお送りしましたが、邦題、日本版ビジュアル、予告編、とても気に入って下さり、快くGOサインを出して下さいました。公開に向けていよいよ本格始動。特別鑑賞券をお買い求め頂いた方には、オリジナル・ステッカーを差し上げています。映画に登場する、主人公のサロール曰く「犬らしさのない犬」と、本国ビジュアルの背景に配されていた、よく見ると顔が赤らんでしまう「カーマスートラ」なイラストの2枚セット。一体どこに貼れば…、という噂もありますが(笑)、携帯とかに貼ってもカワイイはず。たぶん…。

サイズは、6㎝×6㎝です。

「たぶん…」と弱気な物言いなのは、私自身がこのステッカーがホントにカワイイのか、実は良く分かっていないから。先々週の当通信の、本作を買付けるに至った話の中でも、「私は面白かったけど、若い子たちはどう思うのか確認しなくては、と思い、現場の若手宣伝スタッフに観てもらった」という流れについて書いたのですが、最近自分のセンスにすっかり自信を失くしている私です。

コロナ以前は、自分の年齢に近い客層をメインターゲットに想定している作品を配給宣伝することが多かったので、自分の選択眼を信じて買付けに臨んでいたのですが、コロナ以降は高年齢層のお客様がなかなか映画館に足を運んでくださりにくくなっている状況下、若い観客層をより意識して作品を選ばなくてはならなくなっているので、「私が面白いと思うものを、若い人も面白いと思ってくれるのだろうか?」と迷いが生じるばかりです。

自信を失っているのには理由があります。それは、ここのところ“老い”を感じさせる出来事が多いから。いきなりパーソナルな話で恐縮ですが、先日、帰宅時にいつもの通勤バスに乗った際のこと、日中の外回りで疲れていたせいもあり、乗り込んで「空席は無いかな?」と物欲しそうに車内を見渡したのがいけなかったのでしょう、後方の席に座っていた高校生と思しき男の子がスクッと立ち上がって、笑顔で「こっち、こっち」と手招きするではありませんか。席を譲ろうとしていると分かるまで数秒を要しました。反射的に「大丈夫、大丈夫」と手を振って断り、小さくガッツポーズをとり「まだまだ元気!」とジェスチャーまでしてしまった私です。実は席を譲られそうになったのはこれで4回目なのですが、衆人環視の中であからさまに譲られそうになったのは初めてだったので、動揺は隠せませんでした。元々40代から白髪が増え始め、今やほとんど“グレーヘア”状態なので、それが“おじいちゃん”と見なされる主たる原因だとは思うのですが…。

長年の趣味のマラソンのタイムが加齢とともに年々落ちて来ているのは、目に見える代表的な老化現象ですが、他にも体に不具合がいろいろと出始めています。去年の秋にはある日突然、視界に黒い糸くずのようなものが入ってくるようになり、「網膜剥離の前触れ?」と慌てて眼科に行ったのですが、「飛蚊症ですね。いわゆる老化現象です」とあっさり言われてしまいました。今年に入ってからは右耳が急にこもって聴こえづらくなり、「ストレスによる突発性難聴?」と急いで耳鼻科に駆け込んだら、「耳垢が溜まってるだけです」と言われてしまいました(笑)。「それは“老い”とは関係ないのでは?」とお思いかもしれませんが、今まで生きてきてそんなことは一度も無かったので、これも老化のサインなのでは…と受け止めています。

先日アカデミー賞8部門9ノミネートされた話題の映画『イニシェリン島の精霊』を観ました。ご存知かと思いますが、アイルランドの孤島で長年友人関係を育んでいた男二人の話で、ある日片方の男が、もう片方に絶縁を申し入れたところから始まるドラマです。若い頃なら、その絶縁を望んだ理由が頭でしか理解出来なかった可能性もありますが、今だからこそ身に沁みて理解出来た気がしています。そう考えると、年を取って映画に対する理解度が深まっている、ということなのだから、自分の選択眼にもっと自信をもっても良いのかも…と思えてきました。長々と老化について語っておいて、いきなり自己完結(笑)。ほぼ意味のない今週のザジ通信でした。

texte de Daisuke SHIMURA



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