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Une Semaine à Zazie Films 週刊ザジ通信【9月6日㈬~9月12日㈫】

第80回ヴェネチア国際映画祭が閉幕になりました。時の経つのは早いもので、コンペ部門に出品されていたザジの次回配給作品、ジャンニ・アメリオ監督の『蟻の王』の評判を気にしてチェックしていたのが、もう1年前の、前回のヴェネチアの話だとはちょっと信じ難い感じ。当時「来年11月公開だなんて1年以上も先!そんな先まで生きていられるだろうか?」と思ってましたが、ちゃんと生きてました(笑)。

『蟻の王』のエットレ(レオナルド・マルテーゼ)。惜しくも映画祭のマルチェロ・マストロヤンニ賞は逃しましたが、独立賞の新人賞を受賞。ナストロダルジェント賞 新人賞も受賞!

今年の金獅子賞(最高賞)はヨルゴス・ランティモス監督の哀れなるものたち』(来年1月公開)、銀獅子賞、審査員大賞は濱口竜介監督の『悪は存在しない』、監督賞は『IO CAPITANO』のマッテオ・ガローネに贈られました。コンペ23作品中、私が観ているのは7月頭のイタリアン・スクリーニングで一足先に観せてもらった作品と、先週権利元が東京で開催したバイヤー向け試写で上映された作品の、2本のイタリア映画のみ。私は2本とも気に入ったのですが、ヴェネチアに参加していたパリ在住の日本人映画ジャーナリストの方々のX(旧ツイッター)のポストでは、割と厳しめの意見も多かった印象。どこか配給する会社が出てくるのか、気になるところです。

その日本人映画ジャーナリストの方々の間でも評価が高かったベルトラン・ボネロ監督の『La Bete』、審査員特別賞を受賞したアグニェシュカ・ホランド監督の『Green Border(英題)の2作品は、現在開催されているトロント国際映画祭でも評判になっている、という情報が入ってきていますので、こちらは割と早く日本の配給先が決まるのではないかと予想しています。

ヴェネチアは元々権利を売り買いするマーケットが整備されているワケではないので(各部門にエントリーされた作品をセールスする会社の担当者が出向いて、海外セールスしていると思いますが)、買付け目的だけで参加する日本人は数少ないと思われます。一方のトロントは、バイヤー向けの試写も多く組まれ、効率良く新作が観られることもあり、毎年多くの日本人バイヤーが参加していて、今まさに現地で買付け合戦が繰り広げられていることでしょう。が、ここ数年のトロントは「元気がない」という話を聞くことも多くなりました。一時は「トロントで観客賞を獲った作品は、翌年のアカデミー賞の本命になる確率が高い」と言われていましたが、最近はそのお株もヴェネチア、そしてコロラドでほぼ同時期に行われているテルライド映画祭に奪われている…という風評も耳にしたりします。

しかしながら、この辺りはザジにはほとんど縁のない話なので(笑)、私の話はあまり信用せず、アカデミー賞予想の専門家 Ms.メラニーに聞いたほうが良いでしょう。

ヴェネチアはもちろん、トロントにも行かない私ですが、現在秋の出張計画を練っている最中です。来年公開予定の新作は、すべて国内の映画祭で調達済みなので(情報解禁前の“におわせ”?)”、主たる目的はクラシック作品の掘り起こし。カンヌで10月に行われるテレビ番組見本市 MIPCOMと、続けてリヨンで行われるリュミエール映画祭に参加するつもりです。

リュミエール映画祭は2009年から始まった、まだ歴史の浅い映画祭ですが、修復されたクラシック作品のお披露目や、回顧上映などが行われます。映画祭のディレクターは、カンヌと同じティエリー・フレモー氏で、カンヌは基本的に映画人向けの映画祭ですが、リュミエールは多くの映画ファンが楽しむ市民映画祭。その一方で「クラシック作品を扱うセールス会社が集って、マーケットが行われている」という話なので、実は6年前、やはりカンヌのMIPCOM出張を終えて、その足で一度参加したことがあります。

が、行ってみると“マーケット会場”にはデスクが2つ、3つあるだけ。とりあえず何件かミーティングしましたが、まったく仕事にはなりませんでした。やることが無いので、チケットを入手して『女は女である』の上映(ご存命だったアンナ・カリーナさんの登壇付き!)や、修復された『未知との遭遇』を観たりして、2泊3日の滞在はほぼ“休暇”な感じ。単身での参加だったので、美食の街と言われるリヨンなのにロクなものも食べず、「リュミエール映画祭、二度目はないな…」と思っておりました。

『女は女である』上映前のアンナ・カリーナ氏とティエリー・フレモー氏

それなのになぜ今年再度参加するつもりになっているのか、というと、某同業の方が去年参加して、「充実した出張でした!」とおっしゃっていたから。どうもこの6年の間にマーケットもずいぶん大きくなったようなのです。その方が今年も参加するというし(幸い、その会社とは買付け作品が競合することは、そんなにありません。全くない…というワケではありませんが…)、「じゃ、私も!」と手を挙げたのでした。

リュミエール映画祭では、毎年映画界に貢献した方に賞を贈っているのですが、今年はヴィム・ヴェンダース監督に贈られるようです。また、アレクサンダー・ペイン、ウェス・アンダーソン、宮崎駿、小津安二郎(敬称略)もフォーカスされる模様。仕事とは関係ないけど楽しそうです!

さあ、果たしてリヨンまで出かけて、有益な情報を得ることが出来るのでしょうか?現地からのレポートは一ヶ月半後。どうぞお楽しみに!(ちなみに、冒頭の画像は6年前のリュミエール映画祭時に撮ってもらった1枚。人物が入ってない写真がなかったので、私入りの写真でお許し下さい!)。

texte de daisuke SHIMURA









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