先日、私個人のFacebookに、7月29日の岩波ホール閉館を「“ひとつの時代が終わった”という言い回しを良く使うけど、その言葉がこれほどリアルに感じられたことはなかった」と書いたのですが、今週はもう1つ、“ひとつの時代の終わり”を感じさせる出来事がありました。それはレンタル掲示板サービス、tea cupの終了。CGIの知識が無くても気軽に掲示板、いわゆるBBSをホームページ内に設置できる無料のサービスで、ザジではそのtea cupを利用して、長らく自社ホームページ内で掲示板を運営していました。

サービスの開始は1997年だそう。ザジがBBSを設置したのはその数年後なので、20年以上細々と続けていたことになります。その当時はFacebookもツイッターも始まっておらず（Facebookは2004年2月、ツイッターは2006年7月、インスタは2010年10月だそうです）、ホームぺージの運営者と閲覧者の間の、ネット上でのコミュニケーションは、ホームページ内にBBSを設けて行っていることがよくありました。しかしこの10年、15年の間に上記のSNSの利用者が伸びて、BBSは衰退。うちでも、かつては活発なやり取りがなされていましたが、ここ5年ほどは数ヶ月に一度書き込みがあって、それを数ヶ月後私が気づいて（ダメじゃん！）ひっそりお返事を入れる…ぐらいの利用頻度になっていました。

20年以上続けたザジのBBSの歴史の中で、一番印象に残っているのはHistoire De Zazie Filmsの連載でもその顛末を書いた“ジャック・タチ首切り事件”。スタンダードサイズの上映作品にもかかわらず、ビスタのフォーマットで上映してしまったため、タチの頭がスクリーンからはみ出て映らなかった、という衝撃的な事件です。Histoire De Zazie ～に書いた時は、「BBS閉鎖も検討された」とボカして書きましたが、実は当時劇場さん側から荒れに荒れたBBSを閉鎖するよう要請されていたのでした。が、それを拒み1つ1つの書き込みに出来得る限り誠実にレスを入れそのトラブルを乗り越えた経験は、その後ネット運営をして行く上で、大きな指針となりました。

BBSにまつわる思い出、もう1つは2005年の『サヨナラCOLOR』配給時に設置した専用掲示板。初めての日本映画配給で、力入りまくりでした。公開の2ヶ月ほど前から運営をスタートさせ、竹中直人監督を始め、キャストや関わったミュージシャンのファンの方が集って賑わい、ファーストランが終了してもしばらく続けていました。BBSを閉鎖する際には、監督や主演の原田知世さんにもお願いして直接メッセージを書き込んでもらい、盛り上がりは最高潮に達しました。トップ画像はその掲示板をプリントアウトしたもの。死んだら棺桶に入れてもらおうと思って取ってあります（笑）。

今回、8月1日にサービスが終了してしまう前に、過去のBBS上でのやり取りはデータに残しておいたのですが（読み返すことがあるかどうか分かりませんが）、うっかり忘れてしまっていたのが2006年7月に公開された『トランスアメリカ』という映画の宣伝を請け負っていた際に運営していた“宣伝マンブログ”。BBSと同じtea cupのサービスを利用して作成していたので、8月1日をもって過去ログはネット上から消失してしまいました。

このブログ、公開の1ヶ月前ぐらいから始めて、3ヶ月ぐらい毎日更新。内容は、というと邦題やキャッチコピー決定の経緯、ポスターデザイン、予告編制作の裏話やら、作品の見どころをさまざまな角度から検証する読み物やら、『トランスアメリカ』にまつわる話題を、日々書き綴りました。公式サイトを閉鎖するタイミングで同時に読めなくなってはいたのですが、オンライン上にログは残っていたので、偶然何かのきっかけでヒットしたのを懐かしく読み返したりしていましたが、もう完全に読めなくなってしまいました。自分史の中で一番“やり遂げた感”のあったブログだったので、ちょっと残念です。

でも、“昔語り”は年を食った証拠ですよね…。なので最後に、最新のニュースをいくつか。いよいよ今週末5日から、宣伝作『プアン / 友だちと呼ばせて』が公開されます。バズ・プーンピリヤ監督も来日して、絶賛パブリシティ活動を展開中。6日㈯にはシネスイッチ銀座を皮切りに、渋谷シネクイント、池袋HUMAXシネマズで舞台挨拶も行われます。ぜひご来場ください！

また、先々週の当通信で予告しておりましたこの秋のザジ配給作について、こちらではまだご紹介していませんでした。シアター・イメージフォーラムでリバイバル公開するアニエス・ヴァルダ監督作品『冬の旅』です。ご期待ください！BBSは終了しましたが（元々、最新情報とは無縁の掲示板でしたが、結びに無理矢理持ってきてみました）、今後とも、Facebook、ツイッター、そして当noteで情報を発信していくので、どうぞよろしくお願いします！

texte de Daisuke SHIMURA