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Une Semaine à Zazie Films 週刊ザジ通信【6月21日㈬~6月27日㈫】

6月24日㈯、渋谷シアター・イメージフォーラムで、“ジョン・カサヴェテス レトロスペクティヴ リプリーズ”が無事初日を迎えました。おかげさまで初回の『ラヴ・ストリームス』は、ほぼ満席。続く『こわれゆく女』は正真正銘の満席となり、好調なスタートを切ることが出来ました。前回2012年に同劇場で開催した弊社配給の“ジョン・カサヴェテス レトロスペクティヴ”は、初動は中高年の男性シネフィル層中心だったのが、徐々に年齢層が下がって行き、最終的には「セーラー服姿の女子高生がカサヴェテスを観に来てた!」というところまで若くなりました(真偽は不明。それほど客層が若かった、という比喩?の可能性もあり。笑)。 

が、今回は初回から若い客層も多かった印象。先週の“アトロク”でライムスター宇多丸さんも「カサヴェテスは若いうちにこそ観ておくべき」とおっしゃっていたので、嬉しい限りです。SNSでも「めちゃめちゃカッコよかった!」とつぶやいてくださっている、初めてのカサヴェテス体験に刺激を受けた若い方もいらっしゃるようで、こうして世代を越えて引き継がれるべき映画が、ちゃんと引き継がれているのを目の当たりにして、会社の存在理由が証明されている気分です。あぁ、頑張ってきて良かった! 

トップ画像。劇場外壁に掲出した各作品オリジナルポスターのうち、『こわれゆく女』が
初日を待たずに盗まれてしまったので、替わりに今回の日本版ポスターを貼っています。

その一方で、「新味のないLINE UP…」とガッカリしているシネフィルも少なからずいらっしゃるのは承知しています。「なんで『グロリア』が入ってないの?」とか。この機会に、なぜ他のカサヴェテス作品も一緒に上映出来ないのか、内情を説明させて頂きましょう(言い訳、とも言います)。今回上映している、前回のレトロスペクティヴと同じ6作品のうち、『ラヴ・ストリームス』を除く5作品の権利は、カサヴェテスの盟友で、プロデューサー、撮影監督でもあるアル・ルーバンの会社FACES DISTRIBUTIONが所有していて、弊社はこちらと契約を結んでいます。去年亡くなったアル・ルーバンはとても良い人で、我々の熱意を理解してくれて、「ジョンの映画が日本でも観られる環境にあるように」と我々にとっての好条件で再度契約をさせてくれました。 

残る『ラヴ・ストリームス』は、80年代後半から90年代に隆盛を極めたCANNONという会社の制作(イスラエル人プロデューサー、メナハム・ゴーランが映画製作に進出して、ゴダールが『リア王』を作ったりしていました)で、そのCANNONは潰れてしまったので、現在CANNONの作品はアメリカのメジャー、MGMが保有しています。なので今回弊社はMGMの代理店から、劇場上映権のみを取得しています。しかしメジャーはタフで、契約金も高め、なおかつ契約期間が短かったりします。なので前回のレトロスペクティヴの後、『ラヴ・ストリームス』はいったん契約延長を断念したのですが、今回の“リプリーズ”開催にあたって『ラヴ・ストリームス』が欠けるのは切な過ぎるので、敢えて不利な条件(期間短め)を飲み、思い切って再契約した次第です。 

そうなんです。ご存じの方もいらっしゃると思いますが、今回上映される以外のカサヴェテス作品は全部メジャー・スタジオが製作し、現在も権利を保有しているのです。MGM作品は前述のように代理店があるので、まだ交渉し易いのですが、コロムビアやパラマウントの作品は難易度が上がります。そこを乗り越えて契約に至ることもありますが(『ハズバンズ』は、他社さんが権利を取得して日本公開待機中、と耳にしています)が、期間限定、回数限定などの条件を飲まない限り、メジャーの劇場上映権契約は困難さを伴う、という事実があるのでした。いつか採算を度外視してもへっちゃらなぐらい儲かったら(ザジにも『RRR』並みのヒット作が生まれたら!笑)、全国でのジョン・カサヴェテス監督全作品一挙上映を実現させたいです!

トークイベント、無理して行ってよかったです!

引き続き、公開初日6月24日のお話です。イメージフォーラムのYさんや、今回宣伝をお手伝い下さった新しい会社プンクテのMさんたちと好スタートをコーヒーでお祝いした後、私は一路鎌倉へ。先々週に引き続き、再度川喜多映画記念館を訪れました。チケットは買ったものの、初日立ち会いがあるから行けないかなぁ、と思っていた【BOWシリーズの全貌ー没後30年 川喜多和子の愛した映画】の関連イベント、『東京画』の上映と、上映後のトークを聞くためです。トークゲストは80年代フランス映画社に社員として在籍していた森遊机さん(映画史研究家、編集者)と齋藤敦子さん(映画評論家、字幕翻訳家)のお二人。予想していた以上にめちゃめちゃ面白かった!森さんが当時撮っていた写真や、所有していた写真をスライド投射する形で進行したのですが、社内の様子や、柴田社長、川喜多副社長のご自宅で催されていた新年会の様子など、その場にいたような気分になりました。さすがフランス映画社さん、お話に登場する方々はビッグネームばかり。…でしたが、一番印象に残った川喜多和子さんのエピソードは「コロッケパンは許せるけど、焼きそばパンは許せない」。分かる気がします(笑)。いつかまた第二弾の展示、トークショーをやって下さることを願います!

ローマ・フィウチミーノ空港、トリエステ行きの便の搭乗ゲート。

さてさて。実は今、飛行機内でこれを書いています。去年の今頃も当通信でネタにしていましたが、イタリア映画の新作ショウケース、“イタリアン・スクリーニング”に参加するため、今年の開催地トリエステに向かっております。来週の当通信で、その様子をレポートさせて頂く予定ですので、どうぞ楽しみにしていて下さい!チャオ!(すでにイタリア気分)

texte de Daisuke SHIMURA


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